ウズベキスタン、トルクメニスタンの10日間の旅。
中央アジアには格別の興味があったわけでもなく、この何年かイラン、アラビア半島、北アフリカ、パキスタン、ウイグル自治区、イベリア半島などの新旧イスラム文化圏を回っていたので、半ば残った宿題をこなすようなつもりで来てしまった。そのスタンスが旅の最後まで抜けきれず、道中にハプニングも無く、何だか淡々と旅が終わってしまった感がある。
残念ながらウズベキスタンもトルクメニスタンも旧ソ連侵攻の影響で、モスクや旧市街を除いてイスラム的な雰囲気は余り残っていないが、みどころは沢山ある国だったので、それなりには楽しめた。
夜、光と音楽のショーをやっているとのことで、宿の従業員に勧められ、夜9時頃にレギスタン広場まで散歩に出かける。サマルカンドは、夜中一人で歩いていてもほとんど危険は感じない街だ。ショーはみせものめいたものではあったが、なかなか良い雰囲気を出していて、訪れた人はみんな満足そうだった。
個人的には、サマルカンド、ヒヴァよりも、ブハラが一番気に入った。食事が美味しかったこともあるが、サマルカンドのように外国人に無関心でもなく、ヒヴァのように客引きが多少しつこいわけでもなく、何となく「ちょうどいい感じ」の雰囲気だったのだ。それに、ここからトルクメニスタンに抜けていく、という漠然として期待感があったことも影響しているのだろう。
ウズベクからトルクメニスタンへの国境では、事務所で意味も無く延々と5時間近くにわたって待たされ、さすがにイライラとした。何度か抗議したが、要するに係のトルクメニスタン人の気分が乗らないらしい。仕方なく、国境を警備しているトルクメニスタン軍人と話すが、彼が良いやつだったおかげで何だか救われた。どこの国の若者も同じで、興味があるのは女の子のことだ。
僕の場合、こういう一見無味乾燥の移動が、旅の中で最も印象的な時間であったりする。延々と続くカラコル砂漠の風景をみながら、頭の中で色んなことを考える。時折、眠くなり、しばらくして起きてみると、ちょっと風景が変わっている。で、また色んなことを考える。こういう時間を過ごしているうちに、やっと旅の感覚が出てくる。ウズベクではせわしなく観光名所を歩き続けたために、頭の中は空っぽで、写真だけ撮り続けていたのかもしれない。
メルヴは仏教西漸の地である。時代とともに破壊と再建を重ねたメルブの城壁都市の中、キリスト教やイスラム寺院が街の中心地に建てられていたのに対して、仏教寺院は街はずれに造られていた。それは、仏教僧が瞑想に適した静かな環境を望んだからであるらしい。どの時代も、宗教の特性というのは変わらないらしい。ここを訪れる人は余りいないようだが、僕にとっては往事の僧侶たちの生活が想像されて、とても感慨深い場所になった。
中央アジア最大のバザール。ウズベクのチョルソーバザールなどと違って、統制がとれていなくて、それがかえってバザールの混沌とした雰囲気を強めていて、印象に残った。女性は皆民族衣装を着ており、ありとあらゆる物が売られているバザールは色の洪水であった。色々と買い食いをしたり、アクセサリーや布を買ったりした。中には、メルブから持ち出された発掘品の類いまで売られている。今までに訪れた中では、一番楽しいバザールだった。
アシガバットの近郊にはロープウェーがあり、そこからはアシガバットの全景を眺めることができる。この山の向こうは、イランがある。マシュハドーアシガバットという陸路のルートもあり、いつかそこを通ってみたい。
ヒヴァの旧市街は歩いて1時間くらいで一周できる、小さな城壁都市だ。それでも、街全体が世界遺産に登録されているだけあり、タイムスリップしたような風情がある。特に、土産物屋が店じまいして、ほとんど人通りがなくなる夕暮れ時から夜は、何とも言えない不思議な雰囲気だ。ここでは、古いマドラサを改築したホテルに空きがあったので、宿泊することにした。ヒヴァでは、何をするでもなく、とてものんびりと過ごしたと思う。