とりあえず
思い返すと、僕は精神科医になる前から分裂病的なるものに囲まれていたと思う。Aphex Twinの "Selected Ambient Works"とか、Boards of Canadaとか、ねこぢるとか、Nicolas De Staelの絵とか。この2〜3年勉強した精神病理学は面白かった。特に分裂病者における体験の記述は精緻を尽くしており、下手な文学は軽く超えていたと思う。しかし、精神病理学は学問としては今や死に瀕している。臨床的には確かに有用なJaspersやShneiderまでの記述から先に進むことはなく、長年の相棒だった哲学からも離れ、脳科学からは完全に取り残されている。脳科学における同期障害仮説とか、かなり本質的なことを言ってるんじゃないか?意識の哲学におけるクオリアなど、まさに分裂病のことを言っているんじゃないか?しかし、僕らは分裂病の患者さんを前にして、そして彼らを理解しようとして、既存のいかなる理論をもってしても超えるべくもない溝があることをどこかで感じている。この意味で、意識のHard Problemはそのまま現在の精神医学における諸問題と結びついてしまう。精神科医として治療的ニヒリズムに陥ることなく、この溝をどうやって乗り越えるのか。
などと考えていると、結局精神病理学を主軸とする古い精神医学から一度外に出なければならないということになった。
とりあえず、今は臨床にいそしむ身なので勉強するには文献や書物を読み漁るしかない。と言っても分裂病の患者さんと接している時間が一番勉強になるのだが。
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