K-H Lee, et al.Synchronous Gamma activity:a review and contribution to an integrative neuroscience model of schizophrenia.2003
ガンマ帯域同期性発振現象あるいは同期性ガンマ帯域活動Synchronous Gamma-band activityについて包括的にreviewし、Schizophreniaのdisconnection modelとの関連について考察した論文。現在手に入り得るreviewの中では最も内容の濃いものだろう。
synchronous gamma acitivityは多数の神経細胞が時間的に同期して群発発火と休止を30Hz以上の周期(gamma-band)繰り返すもので、用語上Gamma oscillationはGamma activityの強度を指し、Gamma synchronyは各ニューロンの活動の同期の度合いを指す。
Wolf Singerらは、ネコなどの哺乳動物において同一物体とみなせる視覚刺激を受容する複数の大脳皮質領野間ではニューロンが同期して活動しsynchronous gamma acitivityが発生すると報告した。Singerらの最初の報告以来、synchronous gamma activityが脳内の分散distirbutedされた活動を結合Bindingしているのだという結果が数多く報告されており、いわゆる脳のBinding problemを解く上での一つの鍵だと言われている。脳の情報処理過程に関するBinding Problemに対する一般的な解としてはdistributed coding(von der Malsburg)とgrandmother cell theoryが挙げられる。distributed coding説では同一の対象に関連した処理を担うニューロン群は時間的に同期して活動するとしており、同一のニューロンが異なる情報処理に関与することもあり得る。つまり特定のニューロン群の組み合わせcombinationが対象の表象に対応すると考えている。grand mother cell説では、単一神経細胞のそれぞれが、異なる要素的認識を表象するとし("おばあさん細胞"がおばあさんを表象する)、脳はおばあさん細胞のような単一神経細胞の膨大なレパートリーを有していると考える。distributed coding説では脳は限られた容量の中でも柔軟性を有することになるが、grand mother cell説においては脳はrigidでhard wiredなネットワークから成るものであり、そのようなネットワークでは情報の流れと容量が一義的に決定されている。もちろんsynchronous gamma activityが支持するのは前者であり、可塑的でしかも容量の限られた脳の性質を考えれば、distributed codingの方が現実的な解決策となる。そこでsynchronous gamma activityなどの神経の時間的な発火パターンこそが、空間的に分散された ニューロンの活動を統合integrateする役割を果たし、一つの心的シーンを構成していると考えられている。
実際にSingerらの報告以来数多くの報告が成され、synchronous gamma acitivityなどの同期した活動が視覚のみならず聴覚、体性感覚、記憶、学習、言語などの認知機能において並列する脳の活動をintegrateする働きをもつことが確認されている。さらに機能的に関連したニューロン群が同期して活動することによって、Hebbの法則に基づいてニューロンのselectionとformationに貢献することで神経回路を構成し、学習と記憶において重要な役割を果たすLTP(long term potentiation)とLTD(long term depression)に決定的な役割を果たすと考えられている。
synchronous gamma acitivityは時間的に2つのcomponent、つまり"Evoked" early Gamma activityと"induced" later Gamma acitivityから成る。前者は刺激にtime-lockedされており、attentionによってmodulateされつつ知覚に対するintegrationのindexに貢献する。後者は刺激に対してゆるくtime-lockedされ、知覚のintegrationとcontextの保持に貢献する。Singerらは前者はReceptor field(RF)における局所的な感覚情報のinput相を反映し、後者はlong range pyramidal cellから成るContextual field(CF)の活動相を反映すると考え、脳内の異なるRFにおける局所的な同期活動がさらにCFにおいて同期、統合されるとしている。Tallon-Badryらは、曖昧なGestalt図形(最初は何が書かれているか分からないが、じっと目を凝らすと突然絵の内容が分かる曖昧図形。一度分かると、二度と曖昧で無くなってしまう。ダルメシアンの絵が有名。)を用いた実験で、early phaseは刺激の種類によらず一定だが、Gestalt図形の把握後はlate phaseのみが大きくなることを報告し、上記のSingerらの考えを裏付けている。
このようなsynchronous gamma acitivityの発生機構としては、以下の2つの仮説が代表的である。
GABA-ergic interneuron network modelでは、抑制性のGABA-ergic interneuronがfeedback loopの中で反復して周期的に発振することによって、synchronous mutual inhibitionが生じ、synchronous gamma acitivityが発生するとする。これは数学的には神経の引き込み現象によって説明される。Thalamo-cortical arousal modelではThalamusとCortexにおける反響resonanceがGamma synchronyに貢献するとして、ThalamusとCortexの特定の細胞がintrinsic generator of oscillationsとして機能することが報告されている(Chattering cellsと呼ばれる)。これら2つの機構は矛盾するものではなく、むしろ現実的にはこの2つの機構が相補的に機能していると考える向きもある。
このような神経活動のbinding、認知機能のintegrationが障害される病としてSchizophrenia が真っ先に思い浮かぶ。Schizophreniaは病理学的に"loss of the inner unity"(Kraepellin)と表現されるなど、早期から情報処理のintegrationが障害されているという認識があった。近年はsensory inputとstored informationの異常なintegrationによって各症状が発現するという認知モデルが提示されており、neural synchronyなどの具体的なintegrationの方策が明らかになるにつれ、このような"binding error"としてのSchizophreniaモデルが真剣に検討されるようになっている。例えば神経心理学的な局在研究で有名だったAndreasenも現在"Cognitive dysmetria"という基本障害を仮定し、特にニューロンの活動の時間的パターンの異常によって各認知機能のスムースな協調性が失われるという考えを示している。
今日はここまで。続く
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