John R. Searle"Mind-a brief introduction"(Oxford Unv.Press 2004)
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Jhon R.Searle(California大学Barkeley校哲学科教授,1932〜)による心の哲学(Philosphy of Mind)の概論。著者は語用論(Pragmatics)や志向性(Intentionality)における議論で有名で、近年はAI批判を通して「中国人の部屋Chinese Room」という思考実験を考えだしたように、心の哲学や意識に関する著作を発表し続けている。この著書はタイトルから分かるように脳科学、認知科学、心理学、量子力学、言語学、社会学などのおよそ考えつくあらゆる学問領域を巻き込んで現在も進行している心の哲学における複雑な議論のまさに入り口となる内容である。
この本は専門知識の無い一般読者に対する啓蒙を目的としていることもあり、およそ大胆な仮説や結論と呼べるものは記されていない。Serleの著作を読んだことの無い僕はこの点に少しがっかりしたが、むしろ専門用語を用いずに日常言語に近い表現によって心の哲学における諸議論のポイントを効率良くおさえることができる点で彼の目的は達せられていると言える。
この本の主題はDescartesに始まるMind-Body Promlemであり、彼はその後に続くDualismもMaterialismもFunctionalismもEpiphenomenalismもSkepticismも拒絶する。彼の議論は明快で、こころの哲学における誤謬の多くは誤った語の使用にその発端を有するとして、Qualiaなどの誤解の多い用語の使用は避けている。そして記述のレベルとして量子論Quantum theoryでも心理学Psychologyや社会学Sociologyでもなく、神経生物学Neurobiologyに設定する。その道のりは哲学的議論の中で僕たちの生きる世界から遊離していった僕たちの心と意識を取り戻す試みのようでもある。次々と問いを立ててはそれに答え、僕らは最後に一つの見解に辿り着く。僕たちの心もこの自然的世界の一つの構成要素で、生物学的進化によって獲得した能力であり、従って物質世界に属するものなのだ。最後に彼はこの極めて常識的な見解について述べ、新たな問いによって締めくくる。
We do not live in several different, or even two different worlds, a mental world and a physical world of common sense. Rather, there is just one world; it is the world we all live in, and we need to account for how we exist as a part of it.
僕は、どこかの哲学者が「議論の善し悪しは最初に立てられた問いによって既に決まっている」と書いていたのを思い出した。この本を読了した今、決して僕たちの疑問が解けた訳ではないのだけれども、少なくとも問うべき問いは得られたのかもしれない。
欲を言えば、創発Emergenceや自己組織化Self-Organizationなどが心の哲学と科学の両分野でどのように位置づけられるのか知りたかったけれども、これは彼が問うべき問いではないのかもしれない。
平易な英語で書かれていたため読みやすかったけれども、IntentionalityやFree Willの下りにおける僕の理解は不十分かもしれない。現在邦訳の準備が勧められているというから、出版されたら読んでみたい。
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