11月12日に購入した書。毎日2〜3章ずつ読み進めた。
以下、内容を忘れないために簡単な要約をメモ書き。
1.Jean-Pierre Changeux"Creation,Art,and the Brain"
引用が多く、ほとんど理解できず。恐らく創造行為と脳との関係について、進化論的な視点もふまえて包括的に述べたもの。芸術家と科学者の行為を対照させ、世界と脳との関係についても述べているが、詳細は分からない。
2.Camilo J. Cela-Conde"Did Evolution Fix Moral Values?"
ヒトの倫理的能力Moral abilityや美的感覚aesthetic abilityは、共感sympathyなどの脊椎動物がもつ認知能力に基づくものであり、言い換えればbrain actvityのfunctional statesの一つである。つまり、これらは生物学的基盤をもつもので、言わば進化の産物でもある。しかし、系統発生の末端にある一部の種(ヒト、チンパンジー)だけが有する能力である。現時点で著者に言えるのはここまで。
3.Frans B.M. de Waal"Homo homini lupus?Morality,the Social Instincts,and our Fellow Primates"
未読
4.Hanna Damasio"Disorders of Social Conduct Following Damage to Prefrontal Cortices"
著者はMorala abilityを社会的に正常な行為を行う能力と定義する。VMPFC(Ventromedial prefrontal cortices)にdamageを受けた患者は通常の知能検査で異常を検知し得ない正常な知能をもつが、社会行為の逸脱を認める。そのような患者はIowa Gambling Taskなどのdecision makingに関する心理検査で明らかな異常を示し、また情動の異常な平板化abnormal flattening of emotionを認める。Moral abilityの形成のためには、VMPFCなどのprefrontal cortexを含む神経回路と、適切な情動反応によって修飾された学習が必要となる。
5.Antonio Damasio"The Neurobiological Grounding of Human Values"
Somatic Marker仮説を用いて、Hanna Damasioと同様にSocial EmotionなどからHuman Valueが形成されるプロセスについて述べた論考。 speculative。
6.Joshua Greene"Emotion and Cognition in Moral Judgement"
f-MRIを用いてMoral Judgmentが必要な課題を負荷した際の脳活動を調べたという話。
7.Richard J. Davidson"Neural Substrates of Affective Style"
"Affective Style"とういう概念を用いて、主観的なwell-beingと脳の諸領域との関係について述べる。特に前頭葉の神経活動のasymmetryが主体のaffective style(positive affectとnegative affect)に関連するという嘘のような話。左>右の方が、 well-beingが高いという。本当か?
8.Daniel Kahneman,Cass R. Sunstein"Cognitive Psychology of Moral Intuitions"
未読
9.Giaccomo Rizzolatti,Laila Craighero"Mirror Neuron:a Neurobiological Approach to Empathy"
Mirror Neuronの話。Mirror Neuronはある特定の行為を行った場合と他者による同じ行為を認識したときにのみ活動するニューロンで、サルのventral premotor cortex(area F5)で偶然発見された。single neuron recordingに基づいたヒトのmirror neuronの証拠はまだ無いが、EEGやMEGによって多くの間接的な証拠が得られている。ヒトにおけるmirror neuron systemはinferior parietal lobule(PF)、the lower part of the inferior frontal gyrus(ventral premotor cortex)、posterior part of the inferior frontal gyrus(IFG)などにおいて確認されており、古典的にはmotor systemに関連するものと考えられてきた。Mirror Neuronは単に他者の行為のimitationのみならず、他者の行為の理解understandingにも必要なシステムであると著者は考える。また、Mirror neuron systemは行為だけでなく情動の理解にも関与している可能性がある。例えばヒトのinsulaは自己だけでなく他者が嫌悪感を感じたときに活動する細胞群を含んでいる。著者はMIrror neuron systemにより他者の行為や情動を一人称的first person perspectiveに体験することが可能となり、social interactionの生物学的基盤に成り得るのだと控えめに主張している。
10.Wolf Singer"How Does the brain know When it is Right?"
神経システムがどのようなプロセスで意識的なjudgementや decisionを行うのか?という疑問に対する論考。Wolf Singerは上記の認知プロセスにおいて、neuron firingの局在性やrateだけではなく、coherencyが決定的に重要だと主張する。すなわち高度にcoherentなsynchronization of oscillatory activityが脳内の空間的に分散された諸領域を機能的に結びつける役割を果たし、そのようなプロセス自体が主観的な意識体験や高次の認知的活動に重要であるとする。
面白かったのは 2と9。主催したのがJ.P.Changeuxだけに、脳科学の側から哲学的な話題を取り扱おうという数としてはまだまだ少ない試み。予測したようにとてもspeculativeな内容なので実験データは少なく、ほとんどが考察によって占められている。人選のセンスが冴え渡っている。
J.P.Changeux,A.R.Damasio,W.Singer"Neurobiology of Human Values"(Springer)
そういえば、明日はFishmansのLong Season Revueだ。当直明けの切羽詰まった状態で佐藤伸治を幻視するかもしれない。
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