Karl J.Friston.The disconnection hypothesis.Schizophrenia Research 30(1998) 115-125
先日も触れたSchziphreniaのsense of agencyの障害におけるForward Modelで有名なChris Frithのいる、イギリスのWellcome Department of Cognitive Neurologyに在籍するKarl J.FristonのDysconnection hypothesisを紹介。Reviewで、 思弁的な内容。Schizophreniaの病態理論の流れの中では、Thalamic fileter hypothesisとDynamic core hypothesisの中間に位置するものだと思う。日本語訳を怠ったため非常に読みにくくなった。
Dysconnection Syndromeというと、僕は神経心理学の領域でWernickeやGeschwindらによって展開された高次脳機能障害に関する説明用語としての"disconnection"を考えていたのだけれども、これは大きな誤解である。
Geschwindらの考えたdisconnectionとは、各機能系を連絡する神経回路の解剖学的な離断に基づいた症状成立機序を指す。その代表例として挙げられるのが脳梁の離断である。Geschwindのdisconnectionを満たすためには、ほぼ次のような条件を満たす必要がある。
1.症状発現の基礎に二つのほぼ正常な機能系を分離しうること
2.これらの系は相互に独立したinputとoutputを有すること
3.これらの系は互いに並列的な関係にあること
4.これらの機能系を連絡する神経回路の「解剖学的」な離断によって症状が出現する
Fristonと Geschwindらが用いる"dysconnection"は、上記の1〜3は概ね共通するが、4に大きな違いがある。Fristonの言うconnectionとは神経回路の構造という解剖学的なものではなく、有効な神経活動の伝達のパターンという機能的な意味(connectivity)で用いられており、Schizophreniaの病理は解剖学的anatomicalなdysconnectionではなく機能的functionalなdysconnectionであるとする。つまりSchizophreniaの症状は脳内に分散する各モジュールの障害によって発現するというよりは、これらを統合するプロセスの異常であるとする。これは神経回路自体の構造的な異常を否定するものではないし、有効な神経活動の伝達が正常なシナプス、細胞構造や骨格によって担われるのであるから、このレベルにおいて構造的な異常が存在する可能性は大きい。しかし、シナプスは絶えず神経活動を伝達する流動的な状態にあり、そのようなtime-dependentなconnectivityの異常こそがSchizophreniaを理解するのにcriticalなレベルなのだという。Fristonはtime-dependentなconnectivityの代表的な異常として、シナプス可塑性synaptic plasticityを挙げ、Schizophreniaの病理はdisconnectionでもあると同時に"dysplasticity(造語:dys+plasticity)"でもあるとする。さらにシナプス可塑性の異常はshort or long term potentiation(depression)自体にあるのではなく、これらのplasticityのcontrolやmodulationにあるとする。
このシナプス可塑性のmodulationは
1.Epigenetic modulation:遺伝子発現や細胞遊走や脳の形態表現のspatiotemporalなダイナミクスによるもの
2.Activity-dependent modulation:これには、(a)遺伝的に方向付けられたconnectivityのパターンが神経システムに内在的な神経活動と相互作用することによって生じるも変化、(b)経験やuse-dependentな シナプスの伝達効率の変化、の二つがある。
特に2が大事で、このようなmodulationに関わるのがドーパミンなどのascending neuromodulatory transmitter systemである。
適応的なconnectionの成立と維持におけるascending neuromodulatory transmitter systemの重要性は以下のように説明される。すなわちascending neuromodulatory transmitter systemが存在することで、このシステムの活動を引き起こすような外的なイベントがsynaptic connectionのパターンを強化consolidateすることができ、適応的なconnectionの選択に導く。この選択はイベントがadaptiveであるかvaluableであることが必要なのだが、何がadaptiveでありvaluableであるかを決定するのがascending modulatory systemである。また、このシステムへのinputは遺伝的に決定されており、その意味でevolutionary selection(何が適応的なresponseなのか)とneuronal selection(このようなresponseがある個体でどのように獲得されるのか)という二つのレベルが架橋される(ここら辺はよく分からなかった)。neuronal selectionとevolutionary selectionとから形成される適応的な行動は創発的な現象と捉えられる。さらにascending modulatorysystemへのinput自体も上記のmodulation-dependent selectionに
の影響を免れない。すなわち、このようなrecursiveなconsolidationを通して、あるsalient stimuliが適応的なresponseと結びついたときにのみ、valueを有することになるのである。
ここでFrisotnは神経活動のダイナミクスの時間的なシークエンスにおける、connectivityのrecursiveなconsolidationのchainingがまさにschizophreniaで障害されていることなのだと語り、EdelmanのTNGSにも触れている。
詳細は省くが(本当はこういうところが大事なのだけれど)、Fristonは分子生物学、生理学、神経薬理学、機能画像、コネクショニストモデルなどの計算論的神経科学のいくつかの所見を挙げ、帰納的にSchizphreniaをdisconnection syndromeに位置づけられ得るのだとする。またこの仮説を演繹することにより、Schizophreniaの認知障害と一致するような予測が得られると述べる。その上でdisconnection syndromeがSchizphreniaを考える際に相当なexplanetory powerを有するのだと語る(どれも決定的な証拠ではないのだけれども)。
今日の音楽:Boozoo Bajou"Night over Manaus"
ブラジルの奥地、アマゾン川の入り口にある街、Manausの風景を見事に音にしたトラック。
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コメント
はじめまして。
医療職コミュニティページ「BIGDRIVES」を運営しております、bigmakersと申します。
情報収集中に貴サイトに出会いました。
つきましては相互リンクのご検討をお願いしたいと思っております。勝手ではございますが、貴サイトへのリンクはすでに完了しました。よろしければ当サイトへのリンクもお願いいたします。
http://www.bigmakers.net/main
[BIGDRIVES]
投稿 bigmakers | 2005年12月17日 (土) 23時44分
BIGDRIVEさん、どうも!リンクはご自由にどうぞ。僕の方からもいずれリンクをはらせて頂きますね。
投稿 わるねこ | 2005年12月18日 (日) 10時37分
K.J.Friston は着目に値するひとだと感じていました。2001年にNIHの図書館でこの論文のコピーをもらった記憶がある。ちゃんとは読まなかったが、印象は強かった。自分はDisconnectionをガンマ帯域同期発振で解析するつもりでいたが、Fristonの論文で、画像解析でもこれができる可能性を感じた記憶がある。
精神分裂病の Disconnection 仮説、1970年代前半に、東大精神科教授臺弘(うてなひろし)先生が唱えた。かれは「機能的切断 Functional Disconnection」という言葉を使っていたかもしれない。当時は話題となった。発表雑誌は「精神医学」だったような気がする。当時は離断脳実験のスペリーがノーベル賞をとったころでもありました。
こんな昔話をできる相手が欲しです。
投稿 R.T | 2005年12月19日 (月) 22時24分
K.J.FristonのDisconnectionという考えは神経生理学、病理学、薬理学などが結びつくような内容だったので、興味をもちました。最近の色々な仮説を読んでいても、time-dependentな機能の異常を強調する流れがあると思いますが、このような考えも臺弘先生が既に考えていたんですね。早速、文献を探してみます。ちなみに僕はこういう昔話には大変興味があります。お会いしたときに色々と聞かせて頂ければと思います。
投稿 わるねこ | 2005年12月20日 (火) 11時34分