spontaneous activity of the brain.2
つづき。脳の自発的活動について。最近よくsynfire chainという言葉を目にしていたが、synchronizationといってもネットワークにおける活動伝播の効率性から考えるという点が面白いと思っていた。
以下、まずsynfire chainについて手元の資料で少し調べてみた。
Abelsらはサルの前頭皮質からの多細胞同時記録を行い、3つのニューロンの発火が1msec以下の精度で、ある一定のパターンで繰り返し生じることを確認した。しかも、お互いの発火の間隔は数百msecと大きく、偶然でこのようなスパイクが生じるとは考えられないものであった。このように数百msecの間隔がありながら、精度良く時間相関したスパイクパターンを説明するためにAbelesらはsynfire chainという概念を導入した。
ニューロンシステムでは複数のニューロンから一つのニューロンに収束するconvergenceと、一つのニューロンから複数のニューロンに投射するdivergenceとが共存する。このような構造を有するネットワークにおいて活動が減衰せずに順繰りにニューロン群を伝播するためにはニューロン群の活動に何らかのパターンが存在するはずである。Abelesらは上記の結果を踏まえ、多数のニューロンが十分に高い精度で同期して次のニューロンに入力し複数のニューロン群を同時期に発火させる必要があると考え、このようなネットワーク特性および活動の伝播パターンをsynfire chainと名付けた。
Science2つ目の論文。前から読もうと思っていたけど、なかなか読む時間が無かった論文。
読んだら面白かった。
Ikegaya Y, Aaron G, Cossart R, Aronov D, Lampl I, Ferster D, Yuste R.Synfire chains and cortical songs: temporal modules of cortical activity.Science. 2004 Apr 23;304(5670):559-64.
1.まずマウスの一次視覚野から得たスライスの約20個の細胞でintracellular recordingを行い、EPSCを記録。その結果、1msec以下の精度で繰り返されるmotifが確認された。
2.次にネコの一次視覚野で(視覚刺激を与えずに)in vivoでintracelullar recordingを行った結果、msecの精度で繰り返すmotifを確認した。これらは最長で2sec持続し、間隔は数分にも及んだ。
3.さらに97個のマウスの一次視覚野および前頭皮質から得たスライスでCa-imagingを数百個の多細胞のCa電流を同時測定したところ、一定の空間、時間的パターンをもって活動電位(正確に言うとCa電流だが活動電位とidenticalであることが確認されている)が続くsequenceの存在が確認された。これらはintracellular recordingで確認したmotifと同じcircuitの活動によるものと確認された。
4.さらに大きな時間スケールで解析したところ、上記のsequenceが一定のオーダーで規則的に繰り返されることが確認された(例えばA1-B1-C1-D1‥というように)。かれらはこれをcortical songsと名付けた。それぞれのcontical songsは2〜8個のsequencesの配列から成り、一つのsequeceは複数のcortical songsに参加していた。これらのcortical songsは発火率とは相関せず、synchronicityとは相関していた。
5.dopamineを投与した前後でスパイク事象のincidenceに変化はみられなかったが、sequencesやcortical songはdepressされた。これらのエフェクトはD1agonistで抑制され、D1antagonistによって同様の結果が得られた。(ここでfunctional dysconnectionとしての Schizophreniaにも触れている)
以上の結果を踏まえると、一定のつらなりで活動するsynfire chainがあり、さらにこれらのchainがmoduleとなってsequentialに配列することによってhigher orderなtemporal structureであるcortical songsを成す
のである。著者はcortical songをいくつかのパートの時間的な配列によって特徴づけられるbird songになぞらえている。そして、これらはin vitroでもin vivoでも確認されたことから、cortical circuitにintrinsicな性質であるとしている。Abelsらはたかだか3つの細胞だったので、数十個から数百個の細胞を同時記録したこの論文はsynfire chain、さらに上位の活動パターンの存在に説得力をもたせることになる。
著者は僕も著書を読んだことのある日本人の脳科学者。僕の頭の良い人のイメージはこういう人。その本は慶應New York高の学生に脳科学の講義をするという内容であったが、前評判通り非常に面白い内容であった。
脳の自発的活動は決してランダムではなく、synfire chainという時空間的パターンがあり、これを要素としてさらに上位のパターン(原著ではhigher order grammarとある)が形成される。皮質のあらゆる細胞がこのようなパターンに参加しているのかもしれないし、脳はこのようなパターンを刺激の無い環境下で自発的に形成しているのだろう。さらに、cortical songよりも上位のパターンだってあるかもしれない。
こうなるとSchizophreniaではどうなっているのだろう?という疑問がでてくる。直感では、細胞やシナプスレベルでの異常はあるにせよ、機能的異常が顕在化するのはこのような上位の情報表現パターンだろうという気がする。
色々と勉強したくなったので、Abelesの名著、Corticonicsを購入。
今日の音楽:Jephté Guillaume"The Prayer"
ハイチアンのアーティスト。位置づけるなら、Body and SoulとかSpirtual Life Musicとの関係が深い、N.Yディープハウスの人になるのか。曲によってはコテコテでついていけないものもあるけど、このトラックは僕にとってまさに奇跡のような曲。言葉にするより絵にした方が早いatomosphericな音景。太平洋の島のビーチで、海に月が上った頃、全然知らない国の旅人と聴いてみたい。
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