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2006年5月

2006年5月31日 (水)

Dehaene S, Changeux JP.Ongoing spontaneous activity controls access to consciousness: a neuronal model for inattentional blindness. 2005

観たい映画が無くて、何気なく手に取った「Prison Break(脱獄)」というアメリカのTVシリーズにはまり、一挙に3巻まとめて観てしまった。「24」はseason 2までしか観ていないけど、雰囲気としてはこっちの方が好きだ。


今日も勉強の続き。脳の自発活動spontaneous activityについて、再びDehaeneとChangeuxの論文。フランス。

外部からの感覚刺激を欠いた状態でも、脳の神経回路網ではongoingな自発活動がみられる。これらの自発活動は必ずしもランダムなノイズではなく、一定の時空間的なパタンをそなえていることが確認されている。先日紹介したGolbergらの論文では、自発活動は単一状態の周辺を揺らいでいるというよりも、複数のintrinsic state(multiple attarctor)を次々と遷移するダイナミックなプロセスであるということが述べられていたし、Tsodyksらは視覚野V1における自発活動の空間的パタンと方位選択制マップなどのfunctional architectureとの相同性similarityを見いだした。

これらは、いずれもsingle or multiple unit recordingやvoltage dye sesitive imagingなどの神経生理学的な実験であったが、Dehaeneらはsimulation studyによってsubliminalに進行する自発活動が意識的なperceptionにとってもcrucialである可能性を示唆した。

Dehaeneらは、(A)神経細胞レベルの発火モデル、(B)Aがfeedback loopで連結されたthalamocortical columnモデルおよびこれらを120個並列的に連結したモデル、(C)Bが競合的、階層的に連結したlong-distance networkネットワークモデル(fig.1Dehaeneらの他の論文でもよく使われているモデル)を考案し、これらで様々にパラメータをいじくりながらsimulationを行った。

結果として、外的刺激を欠く状況であっても、モデルAにおいてsubthresholdなmembrane potential oscillationが出現することを確認、モデルBではhigh frequency(gamma band) oscillationが出現することを確認した。さらに、Bのcolumnを並列につなげたシステムや、モデルCのsimulationでは、特徴的な二つのstate transitionが生じるうることを確認した。一つめはthalamocoritical systemのlocalなsynchronous oscillationの出現であり、これはsensory processingのfacilitatingに寄与していると考えられている。二つ目は、lon-distance excitory connectionで連結されたシステムにおいて突如出現するnonlinearなstate transitionであり、EEG-likeなwaxing and waning synchronous oscillation(gamma band)が複数のエリアからなるサブセットで数百msec持続することを確認した。

色々とパラメータをいじった結果、ascending neuromodulation system(上行性賦活系)からの入力によって、state transitionの閾値が低下したり上昇したりすることなども示されている。他にも、自発活動のパタンからstate transitionに決定的な影響を及ぼす因子を同定している。

このようなsynchronous oscillationはthalamocortical systemのintrinsic oscillatorを取り除いた設定の下でも出現するため、synchronous oscillationがthalamocortical systemのconnection loopsに内在的にそなわるtemporal filtering propertiesによって生じている可能性も示唆される。

上記のように、自発的にあるいは外部刺激によってシステムにstate transitonが生じ、複数のエリアから成るサブセットでglobalなhigh-frequency oscillationが出現した状態では、競合するsimultaneousな刺激はglobalなstate transitionを引き起こすことができず、結果的に下位のエリアにlocalなeffectしか引き起こすことができない。このようなシステムの「遷移状態」は数百msec持続し、この間は"winner take all"方式で単一の状態が選択されるため、他の刺激はstate transitionを引き起こすことができない。Dehaeneらはこれを"ignited state"(ignite:発火、燃え上がる)と呼んでいる。

"inattentional blindness"とは、あるmental task(計算など)をせっせとこなしている最中は、irrelevantな刺激に対するconscious perceptionが生じないとい現象。心理学では古くから知られており、心理物理の実験が多数報告されている。しかし、知覚が意識には上らなくても、V1などの下位の知覚処理領域では刺激に対応する一定の活動パタンが出現することが知られている。このようなことから、biocular rivalryやchange blindnessと同じく、inattentional blindnessも意識の研究に適したパラダイムとされてきた。

Dehaeneらは,上記のモデルCの振る舞いがinattentional blindnessのsimulationモデルとして適しているのだと提唱している。さらに、DehaeneらはBaarsのglobal work spaceの考え方(僕はこの仮説が余り好きではないが)を引っ張ってきて、conscious access to perceptionが可能となるためには、このようなnon-linearなstate transitionが起きて、thalamocorical systemにglobalなhigh frequency oscillationが生じる必要があるのだと考えているようだ。また、long-distance synchronizationはtemporal codingを担っているのではなく、複数のエリアのreverberating interactionの「結果」であると考えている(Arbibも同じことを言っていた。「脳の情報表現」参照)

この論文はsimulation studyだけど、数学的な下りも含めてぎりぎり理解可能であった。

感想:僕たちはsimulation studyのモデルを現実の神経回路網と同一視すべきではないし、過剰な単純化はむしろ現実と大きく遊離している可能性だってある。これはsimulation studyをやる人たちがいつも言っていること。この意味では、simulation studyをVDS-imagingのような神経生理学的な実験と単純比較することはできないし、エビデンスとしては弱いかもしれない。しかし、実際の神経回路網で確認された回路網の特性をパラメーターとして取り込んだネットワークモデルが、simulationの結果、実際の脳と同じような振る舞いを示すという点が大事なのだろう。現在のimaging手段では、全ての神経活動をモニターすることは不可能であることから(恐ろしく巧妙な実験もあるけど)、むしろ脳の高次機能を考える上ではsimulation studyが極めて現実的な手段と考えられる。特に最近Schizophreniaは神経回路網のabnormal connectivityだとか言われているけど、僕たちはinvasiveな実験は絶対にできないから、このようなsimulation studyこそ威力を発揮するのではないかと考えられる。ちなみに、Dehaeneらはfirst person reportとsimulation studyをつなげるような実験もやっている(以前紹介したと思う)。

次、microstateなどについても調べてみよう。

Dehaene S, Changeux JP.Ongoing spontaneous activity controls access to consciousness: a neuronal model for inattentional blindness. PLoS Biol. 2005 May;3(5):e141. Epub 2005 Apr 12.

今日の本:アシュラ.K.ルグィン「ゲド戦記」
僕がSF好きだった頃、ルグィンは色々読んだけど、fantasy色の強いゲド戦記は回避していた。NKYM病院の先生にジョゼフ・キャンベルを教えてもらい、さらにとある信頼できる友人が、「ゲド戦記は光と闇の対決の話で、神話なんだよ」と言ってたことを思い出し、映画化される前に読むことにした。

今日の音楽:Bob Holroyd"A different space"(CD)
India〜Mid-Eastern系のambient、chill out。こういう作品を数多く出しているsix degreesから。どっぷり旅気分にさせてくれる。現地で毎朝聴いたアザーンやインドの宗教音楽はもっと凄まじいんだけど。中でも"Adrift in Kerala"というトラックは秀逸で、タイトルも何だか好き。

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2006年5月27日 (土)

もひとつ

脳の自発活動に関するこれまた勉強になる論文。

Grinvald A, Arieli A, Tsodyks M, Kenet T.Neuronal assemblies: single cortical neurons are obedient members of a huge orchestra.Biopolymers. 2003 Mar;68(3):422-36.

ネコの17、18野のスライスでvoltage sensitive dyeで自発活動のspatio-temporal patternとorientation mapとの相関関係を解析した実験のreview。1月14日に紹介した同じIsraelのグループによる論文を参照。

今日の音楽:Bruno Nicolai"Eugenie"
イタリアのサントラ"Marquis de Sade's"から。

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2006年5月26日 (金)

memo

何を勉強しているんだか分からなくなってきた。
精神病理学の本はほとんど読んでいない。
新しいアプローチがあるはずなのだが、焦点を絞れぬまま、行ったりきたり。

Schizophreniaと脳の自発活動(まともに扱ったものはほとんどみつからない。調べようがないからだろう。)について色々探しているうちに脱線してみつけた勉強用の論文をメモ。

Anderson JS, Lampl I, Gillespie DC, Ferster D.The contribution of noise to contrast invariance of orientation tuning in cat visual cortex.Science. 2000 Dec 8;290(5498):1968-72.
noise,information processing

Volgushev M, Eysel UT.Neuroscience. Noise makes sense in neuronal computing.Science. 2000 Dec 8;290(5498):1908-9.
noise,information processing

Rudrauf D, Lutz A, Cosmelli D, Lachaux JP, Le Van Quyen M.From autopoiesis to neurophenomenology: Francisco Varela's exploration of the biophysics of being. Biol Res. 2003;36(1):27-65.
Neurophenomenology

Winterer G, Ziller M, Dorn H, Frick K, Mulert C, Wuebben Y, Herrmann WM, Coppola R.Schizophrenia: reduced signal-to-noise ratio and impaired phase-locking during information processing. Clin Neurophysiol. 2000 May;111(5):837-49.
noise,Schizophrenia

Sperling W, Martus P, Kober H, Bleich S, Kornhuber J.Spontaneous, slow and fast magnetoencephalographic activity in patients with schizophrenia.Schizophr Res. 2002 Dec 1;58(2-3):189-99.

Lee KH, Williams LM, Haig A, Gordon E."Gamma (40 Hz) phase synchronicity" and symptom dimensions in schizophrenia.Cognit Neuropsychiatry. 2003 Feb;8(1):57-71.
Gamma synchrony and Schizophrenia

Horn D, Ruppin E.Compensatory mechanisms in an attractor neural network model of schizophrenia.Neural Comput. 1995 Jan;7(1):182-205.
attractor dynamics of neural network and Schizophrenia

Cossart R, Ikegaya Y, Yuste R.Calcium imaging of cortical networks dynamics.Cell Calcium. 2005 May;37(5):451-7.
Voltage sensitive dye imaging

Cossart R, Aronov D, Yuste R.Attractor dynamics of network UP states in the neocortex. Nature. 2003 May 15;423(6937):283-8.
Attractor dynamics,UP states

Massimini M, Ferrarelli F, Huber R, Esser SK, Singh H, Tononi G.Breakdown of cortical effective connectivity during sleep.Science. 2005 Sep 30;309(5744):2228-32.
Tononi,function of sleep

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2006年5月23日 (火)

Goldberg JA, Rokni U, Sompolinsky H.Patterns of ongoing activity and the functional architecture of the primary visual cortex.Neuron. 2004

ドリアンが熟して、パカッと割れた。僕は、ドリアンを初めて食べるまでその悪臭に耐え難さを感じていたのに、一度口にしてからはまるで芳香のように感じられるから、不思議だ。こうなると、後戻りできない。

最近目を通した論文。

Goldberg JA, Rokni U, Sompolinsky H.Patterns of ongoing activity and the functional architecture of the primary visual cortex.Neuron. 2004 May 13;42(3):489-500.

刺激を与えた際に誘発されるevoked activity(刺激誘発活動)ではなく、ongoingなspontaneous activity(自発活動)のspatio-temporalな構造の解析に関する論文。Israelのヘブライ大学の研究者。
Synfire chainのAblesもそうだけど、Israelはこのような神経活動の数学的なモデル化に強いという印象を受ける。

evoked activityは刺激誘発時の神経活動の計測を何度も反復し、これを平均化することによって、reproducibleなパタンを得ることができる。一方、spontaneous activityは、in-vivoでの解析は困難であり、現在はin-vitroでvoltage-sensitive dyeを用いて、一回の計測(single image)から得られたデータを解析する。しかし、これらevoked activityとspontaneous activityのダイナミクスには一定の相関が確認されている。

それでは、spontaneous activityはどのようなspatio-temporal patternであるのか?

ここでは、spontaneous activityのnetwork modelとして、以下の二つを提唱。

Single state hypothesis: spontaneous activityは単一のbackground stateを中心として、Gaussian distribution(ガウス分布)をとりながら、ミリセカンドのオーダーで揺らいでいる(fluctuate)。

Multiple state hypothesis: spontaneous activityは、non-Gaussian distributionをとり、ミリセカンドよりも緩やかなオーダーで複数のintrinsic state(attactor state)を遷移(switch)する。さらに、それぞれのattractor stateは、evoked activityと類似しており、spontaneous activity自体はnoiseではなく、何らかの情報処理に関与している可能性が示唆される。

どちらのモデルが実際のspontaneous activityに近いのかという問いに対して、この論文では結論は出ていないのだけれども、spontaneous activityが多数のintrinsic state(内部状態)を次々と遷移しているのではないかという見解があるらしい(Ringach 2003 未読)。

こういう論文を感覚的に読むことは意味の無い行為なんだろうけど、悲しいかな、今の僕には数学的な部分はほとんど理解できず。

それでも、こういった論文を読むと、脳の神経活動にはnoiseなど存在しないという直感は現実味を帯びてくる。

ちなみに、SchizophreniaではP50などの事象関連電位は無数に報告されているが、このようなspontaneous activityを解析した研究は、ほとんど報告されていない。上記の実験方法の問題(invasive、in-vivoな実験が主なものとなるため)もあるからだろう。でも、evoked activityだけでは、Schizophreniaの氷山の一角しか見ていないような気がする。何かうまい方法は無いだろうか?

今日の音楽:Astor Piazzolla"box set CD"(10CDs)
いくつかの偶然が重なり、Piazzollaを思い出した。次にBorgesを思い出した。PiazzollaとBorgesのいたBuenos Airesには、僕もいつか行ってみたいのだけど、当分先のこととなるだろう。国立図書館の館長も務め、後に盲目となったBorgesは、まさしく"bibliophilia"であった。

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2006年5月18日 (木)

追記

前回触れたHoffmanの論文は↓

Hoffman RE, McGlashan TH.Neural network models of schizophrenia.Neuroscientist. 2001 Oct;7(5):441-54.

現在、読み込んでいるところ。なかなか面白そうな内容。

最近とばし読みした本。
西垣通「基礎情報学」(NTT出版、2004)
アフォーダンスやオートポイエーシスに関する言及あり。ここでの情報の定義は、"a pattern by which a living thing generates patterns"とある。ここでも、情報の作用力に重点がおかれている。

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2006年5月16日 (火)

The brainweb: phase synchronization and large-scale integration.

昨日はタイフェスティバル。仕事の隙をみて、少しだけ参加。ドリアンを3つ購入して退散。

最近読んだ論文。

Varela F, Lachaux JP, Rodriguez E, Martinerie J.The brainweb: phase synchronization and large-scale integration. Nat Rev Neurosci. 2001 Apr;2(4):229-39.

Francisco VarelaによるReview。脳には複数のfrequency-bands(α〜β〜γ)にわたるphase synchronyが存在し、cell assembliesのようなlocalなsynchronyではなくて、脳の分散された領域を統合するlarge-scaleなsynchronyが意識のコヒーレントな成り立ちを可能とするのではないか、という話。
Varelaは、脳は安定したなアトラクターをもつシステムではなく、on-goingな活動によって可変性をもつシナプス効率が動的に変化し続け、アトラクターがself-limittingに設定されるmetastableなシステムなんだろうと指摘している。

ちなみに、phase synchronyの数学的な定義は全く理解できなかった。


ニューラルネットとかアトラクターという話で、ふと思い出したことを一つ。以下、僕の無責任かつ素人な考察もあり、注意。

僕たちの体験する意識の状態=神経システムの発火パタンは可能性としては膨大なレパートリーをもつ。しかし、神経システムには、発火パタンの安定性が局所的に高まる「窪み(アトラクター)」があって、極端な不安定な状態は確率論的にとりにくいと考えられる。実際にニューラルネットの活動パタンは、このようなアトラクターに収束する傾向をもつ。神経システムは数msのtime scaleでアトラクターを次々と遷移しているmetastableなシステムと捉えられる。このようなニューラルネットの特性から生み出されるアトラクターは、おそらく有限個のパラメータで規定されており、経験を通じて後生的に変化するパラメーターも存在するだろうし、また多くのパラメーターは遺伝子などによって生物学的に固定されているだろう。つまり、意識のとりうる状態は完全に恣意的ではなく、ある程度の生物学的な文節化の傾向が存在するとも言える。

このようなニューラルネットの観点からSchizophreniaの症状を考えてみた場合、妄想とか異常体験を、上記の一定の「傾向」から逸脱した異常なアトラクターの生成として捉えることもできる。このような異常なアトラクターは、例えばシナプス効率の変化や神経細胞の遊走や接着やpruningなど、有限個のパラメーターのいくつかが異常値をとることによって生成される。結果として、このようなシステムでは、内的あるいは外的な入力に対して安定した挙動を示すことができず、異常な発火パタンに収束する傾向があると考えられる。

いささかspeculativeではあるものの、神経活動との相関からイメージしやすいSchizophreniaの捉え方を、確かHoffmanというニューラルネットの人が唱えていたはず。論文のタイトルは忘れてしまったが、探してみよう。

最近買った本:Synchronization : A Universal Concept in Nonlinear Sciences (Cambridge Nonlinear Science Series,2003)
読めるか、どうか。

今日の音楽:Pan American"Quiet City"
Tim Heckerを経由して知った、noise〜ambient〜electronicaの作品。とりとめなく揺らいでいて、音の輪郭を定めにくい。梅雨どきに窓を全開にして、じんわりと湿った空気の中で聴くといいだろう。

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2006年5月 7日 (日)

Neuro-Psychopathology

今日は知り合いの親戚のインド料理野に行った。カラコルムハイウェイか、南米のボリビアか、迷ってしまう。また、Machu-Pichuが見たいし。

独り言。
VarelaのNeurophenomenology(神経現象学)をNeuro-Psychopathology(神経精神病理学)に変換すると、以下の独り言(ぼやき)が自ずと口から出てくる。

意識(主観的体験)の科学は被験者の「一人称的」レポートを常に必要とする。また、精神病理学は、「一人称的」視点から得られる患者自身の言葉を、「二人称的」視点に立つ精神科医が記述、現象学的に解釈し、病因の探求を行う学問である。意識の科学の様々な知見は、Schizophreniaの主観的体験の変容を理解しようとする精神科医に新たな観点を与えるが、一方で精神病理学を通して主観的体験の変容に関する「一人称的」記述と「二人称的」観察を精緻化させていくことは、統合失調症患者における主観的体験の変容の科学的解明に対して相互参照の枠組みになると思われる。脳科学によって得られた知見と、精神病理学で蓄積した知見とが、相互に参照し合い、相互に拘束させるという過程を発展させることによって、双方の領域でさらなる進展が期待されるものと期待したい。少なくとも、現在の停滞した精神病理学においては、大きな実りが得られるものだと思う。精神病理学の相棒である哲学だって、今や脳科学とガッチリと手を組んでいるではないか。

今日の音楽:"Amazon"(CD)
Amazonでフィールドレコーディングされた環境音のCD。これは、下手なオーガニックなトラックよりもはるかにrelaxin'で、また下手な音響音楽よりもずっとchillin'なのである。僕は、いつも両方同時に流しているので、僕の部屋は何やら分からないatmosphereになるのだ。。

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2006年5月 4日 (木)

GW

GWは3日〜6日朝まで勤務。
去年は新島に行ってひたすら海辺で音楽を聴いてたのだが、今年はほとんど病院で過ごすことになりそうだ。

そんな中、最近読んだ論文をメモ。
John ER.From synchronous neuronal discharges to subjective awareness?Prog Brain Res. 2005;150:143-71.

主観的体験(特に意識)と相関する神経活動のパタン(特にneural synchronous activity)についての概説。生理学や解剖学、機能画像のデータなどと合わせて紹介されている。色んなことがゴタゴタと書かれていて、内容が濃いのか、それともまとまらないだけなのか分かりにくいreview。

その中でも興味深いのは、"microstate"または"perceptual frame"という概念。いくつかの実験結果から単一の知覚シーンが神経活動のパタン上では75〜100msという特定の時間の厚みの中で不連続に構成されており、これはthalamo-cortical systemにおけるsequentialでepisodicなsynchronous oscillatIonに対応すると考えられている。著者も引用しているが、この辺りはEdelmanの"Remembered present"に非常に近い。このような同期した神経活動のパタンがsensory bindingに関与していることはSingerらによって既に示されている。同期した神経活動のパタンの形成には何らかの同期検出(coincidence detection)の機序が必要となるが、これには皮質のlayer Iのpyramidal cellなどが関与していることが示唆されており、コンピュータを用いたシュミレーションの報告も多い。さらに、著者はcoincidence detectionが脳内のspontaneous activityや異なる知覚刺激から同一の刺激を検出するフィルターの機能を果たしていると考えているようだ。thalamo-cortical systemの神経活動のパタンは80msのオーダーで次々と別のmicrostateを遷移していくと考えられるわけだが、chronic Schizophrenic patientでEEGを測定したところ、このmicrostateが短縮していたというような報告(Streletz,2003)もあって、興味深い。また、Schizophreniaでは、しばしば知覚刺激が断片化しているというような訴えや知覚の過剰に氾濫しているという訴えがみられ、極端になるとあたかも思考プロセスが混線停止したかのような精神運動制止を示すのだが、このようなsendory gating deficitの病理と考え合わせてみても興味深い内容。

今日の音楽:DJ Marky &XRS"Butterfly/The Wizard EP"(i tunes music storeでダウンロード)
秀逸なブラジリアンDrumn'Bass。過激。

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2006年5月 2日 (火)

Dynamics of thalamo-cortical network oscillations

僕が住む官舎は以前沼地だったため、蚊が大量に発生する。今年は早くも蚊が発生し、蚊取り線香が欠かせなくなった。何とはなく懐かしい匂いで、嫌いじゃない。


最近読んだ論文。thalamo-cortical oscillationの総説。僕は実際に実験をやっているわけではないので、こういうreviewばかり読んでしまう。実験をやっている人が読むともっと面白いんだろう。

Ribary U.Dynamics of thalamo-cortical network oscillations and human perception. Prog Brain Res. 2005;150:127-42.

この論文では、thalamo-cortical systemにおけるgamma band oscillationの生成機構と、いくつかの認知プロセス(特にsensory binding)との相関について解説。single cell levelではgamma band oscillationは皮質のinhibitory neuronと視床のspecificおよびnon-specific neuronがもつ、intrinsicなpropertyと考えられている。thalamo-cotical systemでgamma band oscillationの生成させる回路として以下の二つ"反響回路resonant loops"を提唱。

(1)Specific thalamo-cortical circuit:まず視床のspecific nucleiからlayer IVのGABAergic inhibitory interneuronへの投射。このinterneuronは40Hz帯域のintrinsicなmembrane oscillationをもっており、pyramidal neuronに40Hzのoscilltionを惹起させる。さらに、このpyramidal cellは視床のspescific nucleiとreticularis nucleiの樹状突起に再帰的にシナプス結合する。このような経路で、視床と皮質の間でresonantなoscillationが生じる。

(2)Non-Specific thalamo-cortical circuit:まず、視床のnon-specific intralaminar nucleiから皮質のlayer Iへ投射。さらに、layerIからlayer VおよびVIのpyramidal cellを介して直接あるいは間接的にnon-specific intralaminar nucleiに再帰的にシナプス結合し、40Hz帯域のoscillationを発生させる。

ちなみに、time resolutionに優れた聴覚刺激とgamma oscillationとの相関をMEGを使って調べた研究では、刺激間隔が12〜15ms以下になると、二つの刺激は単音として知覚され、最初の刺激だけがgamma responseを誘発する。また、12〜15ms以上の間隔を空けると複音として知覚され、それぞれの刺激に対応した異なるgamma responseが誘発される。つまり、gamma oscillationが聴覚刺激のsensory bindingあるいは知覚刺激のcoincidence detectionに関与していると考えられる。このようなgamma responseの生成に必要な数ms〜10数msのprecise timingは他の体性感覚や視覚でも確認されており、モダリティを超えた神経活動パタンのpropertyだと考えられる。さらに、ここではsensory bindingによる知覚シーンの形成が12〜15msというtime windowで不連続、あるいは階段状に進行することも示唆されている。

というような、内容。

この論文を読むと、意識が連続的(continuous)なのか、あるいは不連続(uncontinuous)なのかという議論があるけど、この結果は少なくとも神経活動の上では、意識がuncontinuousという見解を支持しているわけだ。
thalamo-cortical systemのResonant loopsは、Edelmanの言うRe-entrant loopsに相当するのだろう。このようなreccurentあるいはreentrantな回路が、比較的大規模の機能単位を構成する。それは、固定された解剖学的単位というよりも、それは常に揺らぐダイナミックな機能的構成単位である。thalamo-cortical systemの回路群は刺激の無い状況下でも内在的かつ自発的な活動が持続している(定常状態)ことが知られており、このような自発的な活動によって境界を自己決定しているかもしれない。
このresonant loopsのconnectivityは、脳損傷などのマクロな構造上のダメージや、昏睡状態における代謝能の低下でマクロに障害される(Laureys et al)。また、シナプスでの信号伝達機構の異常などによって、spatialなconnectivityがほぼintactであっても、いくつかの精神疾患で示唆されているようにtemporalなconnectivityが優位に障害されることもあり得る。ただし、temporal connectivityがシナプスレベルで内在的に障害されている場合には正常なsynchronous oscillationが生じず、結果的に回路形成のプロセスにも何らかの異常をきたす可能性が大きいと思われる。そういえば、cortical oscillationが経験による正常な神経回路の組織化に寄与しているという報告もあり(確かあったと思う)、この辺りはSchizophreniaの病理にも密接に関わっている可能性がある。


Symond MP, Harris AW, Gordon E, Williams LM."Gamma synchrony" in first-episode schizophrenia: a disorder of temporal connectivity?Am J Psychiatry. 2005 Mar;162(3):459-65.

RibaryのReviewでは脳損傷や、AD、LDなどの認知機能障害との関連も述べられているが、Schizophreniaなどの精神疾患との関連については触れられていなかった。この報告では、初発エピソードのSchizophrenic patientsで、Gamma synchronous oscillationのlatencyの延長が報告されており、Schizophreniaをdisorder of abnormal temporal connectivityと位置づけている。Schizophreniaにおけるsensory bindingの時間閾値の延長も示唆され、興味深い。


Clementz BA, Blumenfeld LD, Cobb S.The gamma band response may account for poor P50 suppression in schizophrenia. Neuroreport. 1997 Dec 22;8(18):3889-93.

Gamma responseの異常で、SchizophreniaのP50 supressionも説明され得るという話。

今日の音楽:V.A"The Big Chill Classics"(CD)
UKの老舗的なChill Out系のイベントのコンピレーション。いくつかの新鮮な発見があった。僕が思うに、Chill Outとは特定のスタイルではなく、あらゆる音楽にしばしば見いだされる「心地よさ」のabstractなproperty。その意味で、このコンピレーションでは"Chill度"が高いトラックがセレクトされていて、僕たちは安心して身を委ねることができる。

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