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2006年11月

2006年11月24日 (金)

Network Memory

最近うれしかったのは、なかなか行くことができず、いつの間にか休業していた武蔵小金井のカレー屋「プーさん」が復活したこと。これから、ちょくちょくと訪れることになりそう。

最近読んだ論文。

Joaquin M. Fuster.Network Memory:TINS Vol.20,No10;451-459,1997

以前紹介したBasarの論文でも引用されていた1997年の論文。
Fusterは、脳の局在化された構造による表象ではなく、ネットワークの特性として記憶を捉えようとしている。また、記憶は階層性hyerarchyをもっており、単純な運動や知覚のカテゴリーなども"phyletic memory"として捉え、neural oscillationsやsynchronizationなどのコーディングで一元化しようとする試みである。面白いし、極めて「まっとう」なことを言っていると思う。
ある記憶のretrievalに動員される皮質のニューロン群は、類似した刺激の知覚に動員されるニューロン群と一定程度までは重複している可能性が高い。この意味では、記憶のretrievalとconscious perceptionとの間でattentional blinkのようなネットワークの競合現象が起きるのかどうかが気になる。ただし、対応する神経活動のoriginとしては、前者はprefrontalが主導的で、後者はどちらかというとoccipitalやparietalなどのposteriorが主導的だと思われ、それぞれの伝播方向は逆向きに近いのかもしれない。それならばむしろ、retrievalがconscious perceptionをfacilitateするのかどうか。short-term memoryのretentionがconscious perceptionにバイアスをかける、という現象はいかにもありそうだけど。その辺り、single unit studyやEEG/MEGなどで、firing rateやoscillationとの関連を調べた研究はありそうだ、などとブツブツ考えていたら、次のような論文が。

Nacher V, Ojeda S, Cadarso-Suarez C, Roca-Pardinas J, Acuna C.Neural correlates of memory retrieval in the prefrontal cortex.Eur J Neurosci. 2006 Aug;24(3):925-36.

Naghavi HR, Nyberg L.Common fronto-parietal activity in attention, memory, and consciousness: shared demands on integration? Conscious Cogn. 2005 Jun;14(2):390-425. Epub 2004 Dec 8.

あと、僕自身としては、最後まで機能局在的な観点は残るという意味で今後も神経心理学的な手法は一定の有効性を持ち続けると思っているし、神経生理学的なsingle unit studyなども有用だと思う。しかし、脳の何処そこに記憶が刻まれているということではなく、異なる構造特性をもつサブネットワークからなる脳のネットワーク全体をoscillationがどのように伝播・反響していくかという時空間的パタンとして捉えられるのではないかと思う。意識や注意との関連が深いshort-term memoryについては、このような理論化もときどきみかけるようになった。この辺りはもっと計算論的に表現したいのだけど、もっと勉強が必要だ。

今日の音楽:Flaming Lips"Yoshimi Battles The Pink Robots"(CD)
10年前に心底好きだったアメリカのロックバンド。"Clounds taste metallic"というアルバムの数曲は、頭の中だけで全部再現できるようになるくらい何度も聴いた。ソフトサイケな音で、子供の声のようなボーカルと相まって、ちょっとはかない。ふわふわと漂うな印象は、他のバンドには絶対に出せない。ギターの音自体はとんでもない轟音だったりするのに、何故か幸せな気分になる。久しぶりに最近の作品を聴いてみたら、今でもやっぱり好きだった。彼らの音も自分の好みも変わらないんだな、と何だか安心した次第。

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2006年11月19日 (日)

oscillation and synchronization

Buzsakiのoscillationに関する良いレビュー(Buzsaki、Science 2003)を読んだので、oscillationとsynchronizationについて徒然に書きとめておこう。
ただし、オリジナルな考察でも何でもなく、以下全ては既に誰かが言っていることなのであしからず。

個々のニューロンあるいはneuronal assembliesは、それぞれ固有のpreferred frequency rangeをもっている。つまり、band-pass filteringの機能を特性としてそなえているということで、これがinforamtionのfilteringに一役かっているのではないか(Buzsaki)。また、oscillationのphase-relationshipもfilteringに寄与しているだろう。たとえば、pyramidal cellのmembrane potentalは閾値以下でfluctuateしているので、刺激が到達した時点でのmembrane potentialの値によって発火する確率は変化する。また、海馬ではθ帯域のoscillationのピークに一致させて連続刺激を与えると、LTPがもたらされるが、out-of-phaseの連続刺激では逆にsynaptic strengthが弱められてしまうという(Huerta、1995)。ニューロンのpreferred frequency rangeは、membrane conductanceや、voltage-gated currentsなどの様々なパラメータによって調節されていると考えられる。また、ネットワークレベルでは、広範囲のinhibitory interneuronによってチューニングされている可能性が高い。
ちなみに、最近少しだけ読んだ"Synchronization"という成書によると、transientでreflexibleなsynchronizationが起こるためには個々のoscillatorの連結couplingの強度が強過ぎても弱過ぎても駄目で、「適度」な強さの連結が必要であるという。このように互いに「適度」な強さで連結したシステムでは、frequencyがそれぞれ異なっていても複数のサイクルを経て引き込みが生じることにより、結果的にsynchronizationが生じるのである。振動子間の連結が強過ぎると、synchronizationは生じるものの、完全にphase-lockedされてしまい、そこから逸脱することが無く、柔軟性を欠く。弱過ぎると、synchronization自体が起こらない。この意味で、synchronizationは、attractorというよりは"quasi-attractor"であって、ニューロンのネットワークは"metastable"な状態を保っているのだと考えられる。この辺りの微妙な事情を、BresslerやKelsoは"relative coordination"(相対的な共調性)と表現し、Basarらとともに数理モデルを考案している。
しかし、ネットワークレベルのoscillationが生じるためには必ずしも個々のニューロンがoscillatorである必要はない可能性もある。たとえば、個々はnon-oscillatingである類似のタイプのpyramidal cellを複数個つなげてみると、oscillationが不可避的に生じるという報告(Reys AD 2003)がある。このような点から考えると、マクロなoscillationやsynchronizationもネットワーク特性として、ある意味では決定論的に生じているのかもしれない。これらは上記のパラメータによって調節されているのだろうが、この辺りの詳細はまだまだ明らかにされていない。いずれにせよ、synchronizationは、分散したニューロンのダイナミックなclusteringをもたらし、機能的にはcoincidence detectionやfeature bindingに関与しているのだろう。

今日の音楽:Manual"Bajamar"(CD)
また、いい音みつけた。

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2006年11月14日 (火)

Modulation of long-range neural synchrony reflects temporal limitations of visual attention in humans.

大分寒くなってきた。
年末年始の予定がほぼ決まる。
年末は元旦まで仕事、年始は徳島に帰省する予定。猫に会うのが楽しみ。
また、1月の3連休には高野山と熊野詣でに行くことも決定。

Gross J, Schmitz F, Schnitzler I, Kessler K, Shapiro K, Hommel B,Schnitzler A.
Modulation of long-range neural synchrony reflects temporal limitations of visual attention in humans.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2004 Aug 31;101(35):13050-5. Epub 2004 Aug 24

前回紹介した論文とも関連する内容なので、メモ。

この論文は、attentional blink(AB)を引き起こす連続刺激下でneural synchronyのspatio-temporal patternをMEGで測定することにより、attentionとlong-range β-band neural synchronyとの関連を示した実験。

この実験では、7Hzの頻度で5つのdistractorと2つのtarget(文字刺激)が与えられ、2つのtargetを知覚したかどうか被験者に報告させた(RSVP)。

結果的には、
(1)targetが知覚された場合のみ、13〜18HZ(β帯域)のtarget-related activityが約400ms後に出現した。

(2)no-AB condition(ABを生じず、二つのtargetがともに知覚された場合)で得られたデータから、28パターンのconnectionにおいて、synchronization index(SI:異なるregionのpahse couplingを定量化する指標。値は0〜1の間をとり、0のときはno phase locking、1のときはperfect pahse locking)を解析したところ、以下の二つの異なるconnectionのタイプに分けれれた。

type A;stimulus-related connection:146ms毎の類似した波形のピークがみられるパターン。この時間間隔は7Hzの頻度でstimulusを与えたことに対応している。それぞれの波形はstimulusあるいはtargetの種類によらず、ほぼ同じパターンを示しており、targetとstimulusが類似したprocessingを受けていることをs示唆している。
type B;target-related connection:292msのずれをもつ2つのピークがみられるパターンで、この時間間隔は2つのtargetの間隔に相当する。stimulusによるSIのmodulationはみられず、targetによるSIのmodulationのみみられた。これは、2つのtargetのprocessingを反映しているものと考えられる。

さらに、type Aとtype Bはそれぞれ異なる空間的分布パターンを示していた。type A(stimulus-related network)ではoccipital corexとleft hemisphreとで強い結合がみられ、type B(target-related network)ではright posterior parietalと、cingulum、left temporal、left frotal regionとの間で強い結合がみられた。

(3)AB conditionとno-AB conditionで、target-related networkのtemporal dynamicsをトライアル毎に加算平均して解析したところ、総じてno-AB conditionではAB conditionよりも強いSI値を記録した。また、targetの前後に特徴的なdesynchronizationがみられ、その程度はdual-target(no-AB)>dual-target(AB)>only distractorの順に顕著であった。ABでもno-ABでも、first targetの前に強いdesynchronizationが出現し、distractor processingのsupressionを反映しているものと予想された。no-AB conditionでは second targetの意識的な知覚に対応して強いsynchronizationが再出現したのに対して、AB-conditionのsecond targetに対してはno-AB conditionに比べて弱いdesynchronizationが記録された。
このような結果から、synchronizationおよびdesynchronizationのパターンは、ABとno-ABという異なるattentional states(second targetに対するattention)とbehavioral outputs(second targetを知覚したかどうか)を反映しているものと予想された。

以上のような結果から、β帯域のsynchronizationおよびdesynchronizationの異なる時空間的パターンが、AB課題におけるsecond taregetの知覚、非知覚という二つのbehavioral outputを決定しているものと考えられる。target processingのenhancementとsupressionに寄与するという意味で、β帯域のneural synchronyは、我々がattention(この実験ではattentional blink課題下のvisual attention)と呼ぶ認知機能に重要な役割りを担っていることが示唆された。

ちなみに、Whittingtonらが行ったシミュレーションでも、γ帯域のneural synchronyはどちらかというとlocal processingに適しており、widely distributed networkのinteractionにはβ帯域のneural synchronyの方が効率的であることが示されているようだ。複数の周波数帯域のsynchronous oscillationが脳の異なる領域のcommunicatioの方略であるかもしれない、ということは最近よく言及されていること。pathologicなoscillationが、意識や認知、運動のabnormal stateに関連しているという論文は無数にある。僕の興味のあるところでは、HarvardのSpencerらの研究でSchizophreniaの症状プロフィールとの相関が確認されていたり、Parkinson病でもtremorとか、dystoniaなどの不随意運動とoscillation周波数とのダイレクトな相関が確認されている。

最近の映画「猫に裁かれる人たち」
そのタイトル通り、人間が猫に裁かれるという内容。チェコのとある村にサーカス団とともに不思議な能力をもった猫が現れ、この猫に睨まれると、赤(真の恋人)、灰色(泥棒)、紫(差別主義者)、黄色(浮気者)と色分けされてしまうというエキセントリックな映画だった。ちなみに、子供たちだけはこの「色分け」を免れるのだけれども、猫が色分けされた大人たちに殺されかけてしまうことから、大人たちに反乱を起こす。
猫映画では、1970年代の「スペースキャット」という映画もあり、これも観てみたい。

今日の音楽:竹村延和/Child's View(LP)
大学時代によく聴いた。Childiscになってから余り追わなくなったけど、竹村のストイックなスタンスには憧れるところがあったなあ。

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2006年11月 7日 (火)

timing of conscious access

ここのところ、ゆっくりと論文を読む暇が無かった。読みたいものは色々あるのだけれども。病棟が忙しい、と言っても、単に時間を作ろうとしていなかっただけかもしれない。そんな中、ロード・ダンセイニの「ヤン川の舟唄」をちびちびと読んだ。ボルヘスが編纂した「バベルの図書館」から出版された奇譚集。

最近読んだ論文を忘れないようにメモ。
Sergent C, Baillet S, Dehaene S.Timing of the brain events underlying access to consciousness during the attentional blink.Nat Neurosci. 2005 Oct;8(10):1391-400

ずっと放っておいた論文。短い時間間隔で連続する知覚刺激(T1、T2)を与えたとき、間隔がある一定以下の短さになったり、T1taskの難易度が増すと、T1は知覚されるが、T2は知覚されなくなる。この現象をattentional blinkと呼ぶ。binocular rivalryやinattentinal blindnessやchange blindnessなどと同じく、consciousness関連の研究で用いられることが多い比較的質の良い心理現象である。Dehaeneらは、これまでにattentional blinkを用いていくつかの実験を行っており、"competitional access model"あるいは"dynamical phase transition model"というconscious accessに関するネットワークモデルを提唱してきた。この論文は、attentional blinkを用いたERP study。conscious accessと、EEG patternの精細なtemporal sequenceとの間の相関関係を調べたconsciousness studyである。

この実験で用いられたのは、4桁の数字刺激。大体の結果としては、T2のearly processing stage(P1、N1など)では、T2が"seen"でも"unseen"でも、振幅や分布に大きな相違はみられなかった。つまり、意識的に知覚されなかったT2刺激に対しても、ERP成分の反応がみられた。これは、従来の知見通り。"seen T2"と"unseen T2"によって引き起こされたERPの間の急速な分岐がみられたのは約270ms以後で、"seen T2 ”では"unseen T2"よりも大きなleft-lateralized posterior negativity(N2、276ms)が惹起され、さらに"unseen T2"よりも大きなanterior negativity(N3,300ms)がこれに続いた。また、P3a(436ms)およびP3b(576ms)は、T2が知覚されたときにのみ引き起こされた。

さらに被験者にT2刺激に対するvisibilityを段階的に報告するようなタスクを与えたところ、P1やN1などのearly processing stageとconscious visibilityとの相関がみられなかった。しかし、N2とは線形的な相関がみられ、270ms以後のN3、P3a、P3bでは非線形的な強い相関がみられた。

これらを踏まえると、270ms以後のlate processing stageがconscious access(awarenessと言った方がいいかもしれない)と相関していると考えられた。

では、短い間隔で与えた連続刺激がblinkを生じるのはどうしてなのだろうか?
当然ながら、blinkの有無を左右する決定的なパラメータは、T1 taskの有無である。T1とT2によって引き起こされたERPの時間的関係を解析すると、T2によって引き起こされた early-ERP成分(P1、N1)は、T1によって引き起こされたP3aやP3bと重畳しているものの、その波形や振幅はblinkの有無には影響されない。したがって、これら(T1のP3とT2のP1、N1)は互いに競合しないprocessing stageと考えられた。
しかし、T2によって引き起こされたERPについては、T1によって引き起こされたP3bと重畳する270〜300msの区間(N2以降)において、"seen"と"unseen"との間で分岐がみられ、この区間でT1とT2によって引き起こされたERPの競合が起き始めると推測された。また、T2が知覚された場合(blinkが生じなかった場合)、直前のT1によって引き起こされたP3bは、より早くピークに達し、減衰も早められた。逆にblinkを生じたtrialでは、T1に続くP3bは比較的長くなる傾向がみられた。しかし、いずれの場合でもT1-evoked late processingは、何らかの形で持続がみられた。したがって、T1のタスクの持続、難易度やtask switching processなどによりT1-evoked P3bのstochasticなfluctuationが生じ、これがT1processingとT2 processingとの競合に影響を与え、blinkの有無を決定しているものと予想された。

以上のような結果から、conscious processingとnonconscious processingは分散したネットワークの中である程度までは並行して進んでいると考えられる。刺激に対する反応は急速にネットワーク内を伝播すると考えられるが、ネットワークのprocessing capacityには一定の限界があり、ある条件下では複数の刺激による反応が一定のprocessing level以上で競合してしまうと考えられる。たとえば、attentional blinkでは、T2刺激後270msの時点でT1-evoked P3bとT2-evoked N2との間に競合(N2-P3 competetion)が生じてしまうのである。"wiinner take all"式に、この競合の勝者となった刺激だけが意識的に知覚されるに至るわけで、結果的にblinkが起きたり起きなかったりするのである。

ちなみに、いくつかのMEG studyでは、N2に近い区間(270ms〜)で、β帯域の同期現象が広汎に生じることなどが確認されており、この実験で観察されたtemporal sequenceと比較すると面白い。
Dehaeneは、これまで比較的シンプルなシミュレーションを通してこのような競合が生じる可能性を示してきたが、今回はEEGを使ってさらに一歩進んだ感がある。時間解像度の高さはEEGやMEGの長所だが、consciousness関連でここまで精細にtemporal sequenceを解析した実験はなかなか無いように思われる。最近では、event related synchronizationなどもよく調べられているが、このようにconsciousnessとの相関をダイレクト調べた実験ができたら面白い。

今日の音楽:My Bloody Valentine"Loveless"
昔は狂ったように聴いた。

最近買ったDVD:ヴォイチェフ・ヤスニー監督"猫に裁かれる人たち"
60年代のチェコ映画。観るのが楽しみ。

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