timing of conscious access
ここのところ、ゆっくりと論文を読む暇が無かった。読みたいものは色々あるのだけれども。病棟が忙しい、と言っても、単に時間を作ろうとしていなかっただけかもしれない。そんな中、ロード・ダンセイニの「ヤン川の舟唄」をちびちびと読んだ。ボルヘスが編纂した「バベルの図書館」から出版された奇譚集。
最近読んだ論文を忘れないようにメモ。
Sergent C, Baillet S, Dehaene S.Timing of the brain events underlying access to consciousness during the attentional blink.Nat Neurosci. 2005 Oct;8(10):1391-400
ずっと放っておいた論文。短い時間間隔で連続する知覚刺激(T1、T2)を与えたとき、間隔がある一定以下の短さになったり、T1taskの難易度が増すと、T1は知覚されるが、T2は知覚されなくなる。この現象をattentional blinkと呼ぶ。binocular rivalryやinattentinal blindnessやchange blindnessなどと同じく、consciousness関連の研究で用いられることが多い比較的質の良い心理現象である。Dehaeneらは、これまでにattentional blinkを用いていくつかの実験を行っており、"competitional access model"あるいは"dynamical phase transition model"というconscious accessに関するネットワークモデルを提唱してきた。この論文は、attentional blinkを用いたERP study。conscious accessと、EEG patternの精細なtemporal sequenceとの間の相関関係を調べたconsciousness studyである。
この実験で用いられたのは、4桁の数字刺激。大体の結果としては、T2のearly processing stage(P1、N1など)では、T2が"seen"でも"unseen"でも、振幅や分布に大きな相違はみられなかった。つまり、意識的に知覚されなかったT2刺激に対しても、ERP成分の反応がみられた。これは、従来の知見通り。"seen T2"と"unseen T2"によって引き起こされたERPの間の急速な分岐がみられたのは約270ms以後で、"seen T2 ”では"unseen T2"よりも大きなleft-lateralized posterior negativity(N2、276ms)が惹起され、さらに"unseen T2"よりも大きなanterior negativity(N3,300ms)がこれに続いた。また、P3a(436ms)およびP3b(576ms)は、T2が知覚されたときにのみ引き起こされた。
さらに被験者にT2刺激に対するvisibilityを段階的に報告するようなタスクを与えたところ、P1やN1などのearly processing stageとconscious visibilityとの相関がみられなかった。しかし、N2とは線形的な相関がみられ、270ms以後のN3、P3a、P3bでは非線形的な強い相関がみられた。
これらを踏まえると、270ms以後のlate processing stageがconscious access(awarenessと言った方がいいかもしれない)と相関していると考えられた。
では、短い間隔で与えた連続刺激がblinkを生じるのはどうしてなのだろうか?
当然ながら、blinkの有無を左右する決定的なパラメータは、T1 taskの有無である。T1とT2によって引き起こされたERPの時間的関係を解析すると、T2によって引き起こされた early-ERP成分(P1、N1)は、T1によって引き起こされたP3aやP3bと重畳しているものの、その波形や振幅はblinkの有無には影響されない。したがって、これら(T1のP3とT2のP1、N1)は互いに競合しないprocessing stageと考えられた。
しかし、T2によって引き起こされたERPについては、T1によって引き起こされたP3bと重畳する270〜300msの区間(N2以降)において、"seen"と"unseen"との間で分岐がみられ、この区間でT1とT2によって引き起こされたERPの競合が起き始めると推測された。また、T2が知覚された場合(blinkが生じなかった場合)、直前のT1によって引き起こされたP3bは、より早くピークに達し、減衰も早められた。逆にblinkを生じたtrialでは、T1に続くP3bは比較的長くなる傾向がみられた。しかし、いずれの場合でもT1-evoked late processingは、何らかの形で持続がみられた。したがって、T1のタスクの持続、難易度やtask switching processなどによりT1-evoked P3bのstochasticなfluctuationが生じ、これがT1processingとT2 processingとの競合に影響を与え、blinkの有無を決定しているものと予想された。
以上のような結果から、conscious processingとnonconscious processingは分散したネットワークの中である程度までは並行して進んでいると考えられる。刺激に対する反応は急速にネットワーク内を伝播すると考えられるが、ネットワークのprocessing capacityには一定の限界があり、ある条件下では複数の刺激による反応が一定のprocessing level以上で競合してしまうと考えられる。たとえば、attentional blinkでは、T2刺激後270msの時点でT1-evoked P3bとT2-evoked N2との間に競合(N2-P3 competetion)が生じてしまうのである。"wiinner take all"式に、この競合の勝者となった刺激だけが意識的に知覚されるに至るわけで、結果的にblinkが起きたり起きなかったりするのである。
ちなみに、いくつかのMEG studyでは、N2に近い区間(270ms〜)で、β帯域の同期現象が広汎に生じることなどが確認されており、この実験で観察されたtemporal sequenceと比較すると面白い。
Dehaeneは、これまで比較的シンプルなシミュレーションを通してこのような競合が生じる可能性を示してきたが、今回はEEGを使ってさらに一歩進んだ感がある。時間解像度の高さはEEGやMEGの長所だが、consciousness関連でここまで精細にtemporal sequenceを解析した実験はなかなか無いように思われる。最近では、event related synchronizationなどもよく調べられているが、このようにconsciousnessとの相関をダイレクト調べた実験ができたら面白い。
今日の音楽:My Bloody Valentine"Loveless"
昔は狂ったように聴いた。
最近買ったDVD:ヴォイチェフ・ヤスニー監督"猫に裁かれる人たち"
60年代のチェコ映画。観るのが楽しみ。
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