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2006年12月

2006年12月30日 (土)

今年ももう終わり。
元旦の朝まで病棟の当番。元旦午後に徳島に帰省する予定。

最近読んだ論文。

Smith ML, Gosselin F, Schyns PG.
Perceptual moments of conscious visual experience inferred from oscillatory brain activity.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2006 Apr 4;103(14):5626-31

ダリの絵に「ヴォルテールの見えない胸像がある奴隷市場」という作品がある。この絵は、ヴォルテールの顔か二人の修道女が浮かび上がる仕組みになっており、いわゆる曖昧図形である。
この実験では刺激の提示方法に巧妙な仕掛けを使っているが、大雑把に言うと、ダリのこのあいまい画を使って脳のcentroparietal regionのoscillationのfrequecy range(θ、α、β)と意識的な知覚パタンとの相関を調べた実験。結果的には、θ帯域のoscillationがヴォルテール、β帯域のoscillationが修道女に相関していたという本当か?というような結果。また、この相関部分はlate-processing stageである大体200m周辺で出現する。

異なる領域の異なる周波数帯域のoscillationsのcoodinationあるいはsynchronizationが、意識の成立過程の後期に関わっていることはあり得る話で、その意味ではsychronized oscillationsはNCCの一候補である(反論もある)。しかし、sychronized oscillationsは必ずしも意識的な知覚・運動だけにみられる活動パタンではなく、無意識的、不随意的な知覚・運動とも関わっている。このような経緯で、oscillationsとそのcoodinationが、何らかのcontentsを含んでいるのか、あるいは異なるmodalityの統合のための原理であって特定の感覚・運動パタンのcontents自体は含んでいないのか、結論は出ていない。この実験は、oscillationだけを調べており、そのcoodinationまでは調べていない。結果としては、前者の可能性を支持するもので、特定のoscillationの時空間的パタンが意識的な知覚パタンのcontentsと相関している可能性を示したものである。しかし、かなり大雑把な結果なので、今のところは弱い相関があるとしか言いようが無い。

僕らとしては、oscillationsやearly-stageでのlocalなsynchronzationは要素的な情報表現のパタンとして成立している可能性が高いが、よりlate-stageでのlong-rangeのsynchronizationは知覚パタンの要素的な内容ではなくて、より上位の関係論的な形式に関わっているのではないか、と思う。

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2006年12月25日 (月)

Preserved subliminal processing and impaired conscious access in schizophrenia.

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今日はちょっとした思いつきで高尾山へ行ってみた。12月下旬には富士山の頂上に夕陽が落ちる「ダイアモンド富士」を見ることができる、というのは高尾山に行って初めて知ったのだが、今日はあいにくの曇りのため夕陽は顔を出さず。でも、夜景がキレイ。
帰り道、暗い山道をとぼとぼと下山。高尾山は山頂に真言宗系のお寺があるので、山道には仏像やお地蔵さんが沢山並んでいる。うーん、夜の高尾山は面白い。
でも、この時間に登ってくるカップルもいるから、不思議だ。
クリスマスに来るようなところじゃないぞ、と思いつつ。

最近読んだ論文の一つ。

Del Cul A, Dehaene S, Leboyer M.
Preserved subliminal processing and impaired conscious access in schizophrenia.
Arch Gen Psychiatry. 2006 Dec;63(12):1313-23.

フランスのDehaeneのグループによるSchizophreniaの研究。やはりDehaeneが関わっているだけあって、意識(特にconscious access)の障害を調べた実験。

Schizophreniaでは、backward maskingによる刺激下で、健常群に比較して刺激パタンを同定するためにより長いintervalを要することがよく知られている。この事実について、Di Lollo V.らは、bottom-up processingとtop-down processingとの競合によって両者の統合過程が障害されるという仮説を提案している。また、DehaeneもGloval Workplace Theoryを援用しつつ、シミュレーションによってconscious accessのall or nothing的、かつbi-modalな特徴が、並列分散的なprocessingにおける競合過程によって生じると提唱してきた点で、Di Lolloらと共通した立場をとっているようだ。そして、このような統合過程(あるいは競合過程)は、階層的な処理段階における上位あるいはlate-stageのprocessingで実現すると考えられている。

conscous access、あるいはawarenessに関して、backward-maskingとも関連するもう一つの興味深い事実は、subliminal primingと呼ばれるもので、僕はこの辺りはよく知らないのだが、 何らかの形でmaskingされて意識に上らない刺激が、後に続くtargetのprocessingと知覚パタンに影響を及ぼすというものだ。Dehaeneによれば、subliminal primingは、知覚処理過程のearly-stageにおけるfeed-forwardなprocessingを反映しているらしい。

最近、Schizphreniaでは下位の知覚処理過程、あるいはbottom-upな処理過程はintactだが、上位あるいはtop-down processingがおかしいのだ、とよく言われている。これが本当なら、early-stageのsubliminal primingはintactで、late-stageのbackward maskingはabnormalだと予想される。
Schizophreniaでbackward maskingを用いた実験は無数にあるので、subliminal processingがintactかどうか調べればよいというわけだ。

前置きはこれくらいにしておいて、この実験ではSchizophrenia郡と健常群に対してmaskingされたアラビア数字(1,4,6,9)の刺激が与えられ、刺激提示後に5より大きいかどうかという比較課題が行われる。Di Lolloの実験のmaskingの手法を改良して、maskingが開始される間での時間(delay)を0〜150msと段階的に延ばしており、primingの効果を段階的に評価できるようにしている。methodに関する僕の理解はあいまい。

結果的には、

(1)targetのvisibilityは、bimodalなパタンを示し、意識的アクセスのall or nothing的な特徴が再確認された。また、意識的に知覚されるために必要なdelayの閾値は、Schizophrenia郡で有意に長かった。
(2)この閾値の延長は、主観的および客観的な評価の間でぴったりと一致していた。
(3)この閾値の延長は、PANSSのいくつかの症候プロフィールと相関していた。
(4) 予想された通り、subliminal primingの効果は、両群で有意な差はみられなかった。

したがって、 Schizphreniaではearly-stageのprocessingはintactだが、より上位におけるlate-stageの統合、競合過程で何らかの問題が生じており、結果としてconscious acessが障害されているのではないか、結論づけられる。

ちなみに、このような実験結果は臨床的な印象と考え合わせても納得できる気がする。 

前にも書いたが、意識がgradualだというのは全体的な状態や覚醒度、あるいは注意の度合のことであって、単純にある知覚対象が意識に上るかどうかは、all or nothing的だ。前者はconcious state、後者はconscious accessで、この辺りを分けて理解しておかないといけない。attentional blinkとか、binocular rivalryとか、change blindnessなど、意識関連の実験で一般的に使われているパラダイムは、後者のconscious accessについて調べているものが多い。

今日の音楽 :Flunk/Blue Monday(from CD"Luftkastellet")
大好きなNew Orderの有名曲のchill outカバー。原曲も好きだけど、気だるいヴォコーダーで間延びしたヴォーカルが原曲を忘れる位に心地よい。New Orderのカバー曲は外れが少ない。例えばFrenteがカバーsちあ"Bizzarre love triangle"など。原曲がいいから、どうカバーしても良く聴こえる。

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2006年12月18日 (月)

脳は空より広いか

4794215452一年ももうそろそろ終わり。
2人の精神科医の先生と僕とで邦訳に関わったGerald M.Edelman"Wider than the sky"の翻訳書「脳は空より広いか」が草思社から今月出版された。訳者はカナダ在住の冬樹純子さん。現在の位置づけとしては、EdelmanのNeural Darwinism、Dynamic core仮説の両方について書かれた日本語で唯一の入門書ということになるか。ボリュームは決して多くないのだけれども、密度は濃いので読み進めるうちにいくつかつまづき易いポイントがあるかと思う。むしろ、意識的に立ち止まって欲しい箇所がある。ダイナミックコアの活動パタン(C')と意識(C)の因果関係に関する下り、特に「伴立関係」意識に関する下りがそうだ。意識の科学について考えていく出発点として、「伴立関係」のような設定をしているのはおそらくEdelmanだけだろう、というのが僕らの考え。原著もそうだが、神経科学の知識が無くても読めるので、全く違う領域から意識について考えている人にも読んでもらいたい。むしろ、一般書だからこそ、他領域への接続性は高い。
また、本書でEdelmanの意識の理論に興味をもった人は、Giulio Tononiとの共著" The Universe of Consciousness"(原著)に進むのもよいだろう。

「脳は空より広いか」(草思社,2006)


そういえば、最近読んだネットワーク関連の本で、small-world networkに関するものがあった。"small-world"はもともとはグラフ理論などの数理系や社会学系の研究をしていたWattsとStrogatzによって提唱されたネットワークの構造に関する概念。アメリカという億単位の人口を有する巨大なネットワークでも、あらゆる人がそれぞれの知り合い(最低でもファーストネームで呼び合うくらいの仲)をたった平均6人経由するだけでつながっているというミルグラムの実験、「6次の隔たり」というキャッチフレーズが有名だ。その後はインターネットや経済学、生化学などで応用されてきたという経緯があるようだけど、最近は神経科学系の文献でもちらほらと見かけるようになった。
small worldとは、大雑把に言えば、クラスター性(いわば内輪繋がりの濃密さ)が高いにも関わらず、ネットワークの頂点(要素)間の最短距離が予想以上に小さいネットワーク。small worldの一例とも言えるインターネット(厳密に言えばsmall worldではないようだが)で言えば、ほとんどのウェブサイトは少数のリンクを張っているに過ぎないのに、あるウェブサイトから任意のウェブサイトへたどり着くためのステップはたった17回で済むということ。あるいは、これを書いている僕と偶然この記事を読んでいる人は、だいたい6人の知り合いを経てつながっているということ。僕らは家族、友人や同僚というクラスター性の高い局在的な内輪の世界に済んでいるのに、あらゆる人が結局たった数人の知り合いでつながっているというのは、僕らの直感に反しているようにも思えるけど、意外に「狭い世界」というのは日常的にしばしば遭遇する事実だ。
このような現実世界の高いクラスター性と短い関係的距離の両方を同時に実現するsmall worldのネットワーク構造の特徴として、「弱い靭帯」と比喩されるショートカットがある。上記の例で言えば、僕らは内輪的なクラスターを超えた関係性を少数ながらもっているということだ。脳で言えば、areaを超えたlong-rangeのinterneuronみたいなものだ。
もし1000億個のニューロンからなる脳がsmall worldみたいな構造をとっていたとしたら、関係論的には意外にも「脳は狭い」ということになる。無数の機能的モダリティに分かれ、高いクラスター性をもつ脳では、たとえほとんどのニューロンが隣接するニューロンとしかシナプス結合していなくても、ごく少数のlong-rangeなinteractionが存在すれば、ロバストで全一的なふるまいが実現する可能性が出てくる。そういえば、Buzsakiもレビューでそんなことを書いていた。
small-world networkについては、いずれレビューする予定。

今日の音楽:Small World"I Believe"
連想。デンマーク発のコンピレーション"Luftkastellet 4"に収録されたR&Bのトラック。スモールワールドネットワークとは全く関係ないのだけれども。

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2006年12月 5日 (火)

メモ

今日は大学の神経心理研究会の忘年会。何だか萎縮してしまった。

最近読んだ論文をメモ。neural oscillation関連。

Tallon-Baudry C, Bertrand O, Henaff MA, Isnard J, Fischer C.Attention modulates gamma-band oscillations differently in the human lateral occipital cortex and fusiform gyrus.Cereb Cortex. 2005 May;15(5):654-62. Epub 2004 Sep 15.

ヒト(てんかん患者)のintracranial recodingで、主にventral visual pathwayのlateral occipital(LO)、fusiform gyrus(FG)に電極を挿入し、視覚刺激を用いた課題下におけるgamma-bandのoscillationを測定した実験。注意によって、gamma oscillatory responseがmodulateされることを示している。しかし、これまでに予想されているよりも複雑なパタンであり、また同じventral visual pathwayを構成するLOとFGとでは、modulationのdirectionが異なっていた。Tallon-Baudryは、oscillationによるstimulus encodingは、現在考えているような複数の領域にまたがるdistributedなassembly codingというよりも、localでfunctionaly segregatedなのではないか、という推測を立てている。neural oscillatory communicationによる異なるprocessingのintegrationも大事だが、こういうlocalizationの話も把握しておかないと駄目だろう。面白いのは、この実験のintracranial recordingではscalp EEGなどで計測されている30-50Hzというlower-gamma responseだけでなく、より速い100Hzくらいまでのfast-gamma oscillationも記録されているということ。scalp EEGでは頭皮を介するためにfast gammaが拾えないのか、それともより広範囲のinteractionを反映しており、lower-gammaだけが測定されるのか。


Canolty RT, Edwards E, Dalal SS, Soltani M, Nagarajan SS, Kirsch HE, Berger MS, Barbaro NM, Knight RT.High gamma power is phase-locked to theta oscillations in human neocortex.Science. 2006 Sep 15;313(5793):1626-8.

昨日メモした論文とも関連する内容だが、こちらは未読で一応メモ。θ(4-8Hz)とfast-gamma(80-150Hz)とのtransientなcross frequency couplingがあり、taskによってmodulateされるとのこと。Pubmedのrelated articleの機能はときに意外な論文が出してきて、結構役立っている。

雑念。EEGやMEG、あるいはcell recordingなどのスパイク記録の解析のためには、cross-correlationとかunitary eventなどのmethodをしっかり把握しておかなければいけないらしいのだが、この辺りを全く無視して論文を読むのはちょっと厳しいのでは、と感じるようになってきた。この辺りは独学では厳しく、うーん・・誰かに道標だけでも与えてもらいたいのが正直なところ。統計解析や確率の知識もほぼゼロだし。Lachauxらのphase synchronyの解析モデルも前提からしてよく分かんない。また、MATLABなどの計算ソフトをある程度まで使いこなせる必要があるらしいのだが、とりあえずゆっくりと勉強してみよう。

今日の音楽:Fishmans"Long Season"(CD)
僕の数少ない音楽体験と言えば、Fishmansの"Long Season"を何年か前の最後のライブで聴いた(体験した)ときくらいなもの。既に記憶は美化されているかもしれないが、噂に違わず余りに心地よくて寝て(意識障害)しまった。

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2006年12月 3日 (日)

最近読んだ論文。neural synchrony関連。

Langheim FJ, Leuthold AC, Georgopoulos AP.Synchronous dynamic brain networks revealed by magnetoencephalography. Proc Natl Acad Sci U S A. 2006 Jan 10;103(2):455-9. Epub 2005 Dec 30.

MEGで脳のnetworkのsynchrous couplingを調べた研究。248個のgradiometerから一対のgradiometerを選択し、これら全ての組み合わせでpartial cross-correlation(PCC)をとり、synchronous couplingの強度を計算したというシンプルな研究。248x247/2通り、つまり30628通りの組み合わせのgradiometer対でPCCを計算しているので、力技といった印象だ。しかし、結果的には脳のダイナミックなconnectivityが見事に視覚化されており、とても興味深い。PNAS論文でfree accessなので、暇なときにざっと眺めてみるとよく分かると思う。positiveなcorrelationは近傍のgradiometer間で顕著であり、これとは逆にnegativeなcorrelation(これは、必ずしもinhibitory connectionとイコールではないことに注意)は、よりlong-rangeに渡って分布する傾向。

Palva JM, Palva S, Kaila K.Phase synchrony among neuronal oscillations in the human cortex. J Neurosci. 2005 Apr 13;25(15):3962-72.

oscillationのsynchronizationは、同一の周波数帯域(例えばα-α synchronization)だけではなく、周波数帯域をまたいだsynchronizationも理論的には可能である。例えば、α帯域の(10Hz)oscillationとγ帯域(30Hz)のoscillationは、1:3のサイクルで同期することが可能であるといったように。limit-cycle型のoscillatorでは、いくつかのパラメーターがとる値次第でoscillationの周波数比は決定される。これは、n:m synchronizationあるいは、cross-frequency sychronizationと呼ばれる。これまで、ヒトの脳のoscillationでもn:m synchronizationが存在すると予想されてはいたものの(例えばSingerらによって)、ダイレクトなエビデンスは存在しなかった。この論文は、これまたMEGを用いてヒトの脳でもn:m synchronizationが存在することと、その機能的な重要性を初めて示した研究であり、重要だと思われる。実験では、当然ながら同一の周波数帯域のsynchronizationもみられたが、1:2(α-β)および1:3(α-γ)のcross-frequency synchronizationも確認された。特に右半球に顕著であったα-γ synchronizationではarithmetric taskによるtask effect(taskによるenhancement、taskの難易度が上がるとenhancementも強まる)もみられ、attentionやworking memoryに関与していると推測されるが、神経心理学的な知見との一致も興味深い。

もう一つメモ。
最近は、僕のルーツの少なくとも半分を占めている徳島県木屋平村(こやだいらむら)の資料を取り寄せ、色々と調べている。木屋平村は四国山地の奥深くのコアに位置し、修験道も盛んな剣山(つるぎさん)がある村で、近くには日本三大秘境の一つに数えられた祖谷のかずら橋などもある。山の中に住居が埋もれるように点在しており、集落を形成しているところもいくつかある。動物が多く、僕のおじいちゃんの家の屋根裏には「ももんが」が住んでいて、地元の人は「もも」と呼んでいた。 近年は挙家離村が相次ぎ、廃墟が多い過疎村となってしまった。村の盟主であり阿波忌部氏直径の流れをくむ三木家(この家から三木首相が出た)が1000年以上も前から代々の天皇に献上している「あら衣」や、平家の落人伝説などが有名で、これらを村の誇りとしていんだと思う。そういえば僕のおじいちゃんの家の近くにも、平家の馬場や首塚などがあった。残念ながら、僕のルーツにまつわるであろう資料は明治時代の火災で全て消失してしまったという記載があり、想像をふくらませるしかない。

今日の音楽:Medeline Bell"That's what friends are for"(LP)
昔、買ったオリジナル盤。タイトル曲がよい。

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