最近読んだ本など
引き続いてネットワーク科学関連の著作、論文をちらほらと読んでいる。
世の中の勘の良い人は、もうとっくに読んでいるのだろう。
何が新しいのかと言われると答えに窮するが、複雑なネットワーク(たとえば、脳)の構造とふるまいを、同じレベルで、しかも直感的に表現できるということはすごい、と思う。
まず、A. Barabasiの「新ネットワーク思考」は、文句無しに面白い本だった。
Small-world networkの提唱者の一人、Duncan Wattsの本も読んだが、これは余りピンと来なかった。
現在は、Wattsの師匠であるストロガッツの「SYNC」という同期現象を扱った単行本を読んでいるところ。ちょっと冗長な文章だけど、脳に限らず自然界を遍く貫く「同期」という現象についてあらゆる角度から書かれている本だ。
前にも書いたが、最近は神経科学の分野でもsmall-world network、scale-free networkに関する論文をちらほらと見かける。現時点では、脳はscale-freeではなく、small-worldに近いことを示唆するデータが集まっているようだ。functional localizationと、synchronizabilityという一見相反するような特性をそなえたニューラルネットワークは、当然ながら完全にランダムでも秩序的でもない何らかの構造特性をそなえているはずだ。それが、small-worldのようなものである可能性はあると思う。その点では、やはりlong-range interneuronとの関連が気になる。
神経科学とネットワーク科学を結ぶ研究となれば、O.Spornsが先駆者で、現在も第一人者だろう。彼は、TononiやEdelmanとの共著も多い。
うーん、やっぱり、つながってきた。
ちなみに、日本では、増田直紀というかなり若い研究者による「複雑ネットワークの科学」という本がお勧め。
この人にもかなり期待。
僕はもうちょっと読み進んでから、レビューの予定。
最近読んだ論文。
Chie Nakatani, Junji Ito, Andrey R. Nikoaev, Pulin Gong, and Cees van Leeuwen
Phase synchronization analysis of EEG during attentional blink.
Journal of Cognitive Neuroscience 17:12,1969-17979,2005
(復習)RVSPの連続刺激において、2つのtarget刺激間の時間間隔を短くしていくと、約200-600msの区間では、、しばしば2番目のtargetが意識的に知覚される確率が低下し、意識から抜け落ちてしまうことがある。600msより長ければ、2番目の刺激もほとんどが意識的に知覚される。このような心理現象をattentional blinkという。しかし、これまでの研究で、意識的な知覚に失敗した2番目の刺激に対してもEEG上はearly-stage(300ms前後)のprocessingが出現することが分かっており、意識的なアクセスが可能か否かを決定づけるのはもう少し後に続くprocessingではないかと予想される。これらはDehaeneの論文で紹介した通りだ。
later-stageのinduced synchronizationがdiffuseに拡散する中で、二つのtargetによるprocessingが競合し、"winner take all"式に勝者のみが意識的なアクセスを可能とする、というモデルであった。
この実験は、attentinal blink課題において、EEGを使ってphase synchronizationを調べた実験。タイミングが異なるtaskに対応して、40Hz帯域のtransientなsynchronizationが出現しており、これはanticipationを反映した脳の内部状態のダイナミクスなのだという。
この論文を読んで初めて知ったのは、連続刺激において、刺激間の間隔が余りに短いと、二つのtargetの両方とも知覚されるという現象。これは、"Lag 1 sparing"と呼ばれている。したがって、2番目の刺激が意識的に知覚される確率は、200-600msでいったん低下して谷を作り、その前にも小さな山を作るような分布を示すことになる。
この"Lag 1 sparing"も、Dehaeneのモデルから、ある程度まで説明はつく。つまり、1番目と2番目のtargetが余りに近いと、互いに競合するような二つのwide-spreadなsynchronizationが生じず、まとまった刺激として処理されるかもしれない、ということだ。
最近読んだ本:ダン・シモンズ「イリアム」(早川書房)
前シリーズの「ハイペリオン」もかなりのハイテンションだったけど、ギリシア神話を題材にしたこのSFも、読んでいるうちに止まらなくなり、挙句の果てには他の仕事や勉強が全く手につかなくなってしまったため、しまいには寝る時間を削ってまでしてできるだけ早く読み切ってしまおうとした本。翻訳もすごく良い。
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