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2007年2月

2007年2月21日 (水)

autism関連

最近は、いくつかの理由でautismとSavant関連の論文をワーッと読んでいたけど、schizophreniaの研究と同様に、脳内の責任病巣を特定するというより、むしろネットワーク全体の障害として、皮質間あるいは皮質下のつながりに注目した研究が多いようだ。

autism関連の複数の認知モデルの中でも比較的新しくて注目されているUta FrithのCentral Coherent仮説も、最近はdisconnectivityとか、abnormal temporal bindingというようなニューラルレベルでの議論にシフトしてきている。

とは言っても、autismのconnectivityに関する報告は一定していない。現在のところでは、autismではlong-rangeのconnectivityが減少しているにも関わらず、localなconnectivityはむしろ亢進している可能性があると考えられているようだ。そして、おそらくはこれらのdisconnectivityが発達初期段階での能容積の異常な増大や、異常なpruningのプロセスによるものであると考えられている。画像研究に関しては、f-MRIがほとんどで、EEGやMEGでgamma oscillationやsynchronyを調べた報告はほとんど無い。

僕が読んでいる限り、schizophreniaのdisconnection症候群(Friston)などとの違いがいまいち解りにくいというのが感想。というより、ほとんど同じように思える。abnormal temporal bindingという仮説を、schizophreniaとautismという二つの病気が、互いに「オレのものだ」と主張しあっているような印象だ。

どちらもそれほど単純な話ではないと思うが、症候学的に共通する部分があるので、ニューラルレベルの病理でも共通するプロセスはあるのかもしれない。

今日の音楽:Blast Head/Head Music(CD)

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2007年2月 9日 (金)

attentional modulation of neural synchrony

最近読んだ論文。

Fries P, Reynolds JH, Rorie AE, Desimone R.
Modulation of oscillatory neuronal synchronization by selective visual attention.
Science. 2001 Feb 23;291(5508):1560-3.


僕たちが随意的に何かに視線を向けたとき、それに対応した神経活動パタンの変化が視覚野にみられるように、脳内の神経活動という物理現象も意識あるいは自由意志によって何らかの影響を受けているようにみえる。このような神経活動のtop-down modulationはどのようなメカニズムで実現するのだろうか?

注意は、このようなtop-down modulationの代表的存在だ。注意とは、雑多な刺激群の中からrelevantなものだけを選択し、これを増強することである。注意のネットワークレベルでのメカニズムを解明することは、top-down modulationの解明にも大きく貢献すると考えられる。ひいては、意識や自由意志の問題にも関わるものだ。

この実験は、neural synchronyのattentionによるtop-down modulationの証拠を提示したもの。
マカクザルのV4に電極を埋め込み、spikeとLFPを同時に記録した。受容野内(with attention)と受容野外(without attention)という2つの条件下の視覚刺激を与えた際の神経活動の時間的パタン(firig rate、VEP、synchrony)を解析した。受容野内外の刺激に対する神経活動を比較することで、attentionが神経活動に与える影響を調べることができる。

結果としては、attentionによってsynchronous oscillationsのlow-frequency成分が減少し、high-frequency成分(gamma range)が増加することが分かった。一方で、firing rateはattentionによって一定したパタンのmodulationはみられなかった。

また、neural synchronyのattentional modulationは約100ms以内に出現するのに対して、firing rateのattentional modulationは420ms後になってやっと認められた。

synchronous oscillationのenhancementは、脳幹を電気刺激してawarenessを上げた場合にもみられる。この場合は、おそらくコリン作動性ニューロンによる影響が大きいと考えられている。awarenessと同じように、脳幹が関与するattentionもまたsynchronous oscillationをenhanceするという事実は興味深い。

この実験は、注意のメカニズムがneural synchronyを介していると言っている訳ではない。むしろ重要なことは、注意によるtop-down modulation(あるいはdownward causation)が、firing rateなどの低いオーダーの神経活動においてではなく、それよりもワンオーダー上のneural synchornyのレベルで実現しているということだ。
ちなみに、意識はneural synchronyよりもさらに上のオーダーで実現していると僕は考えている。

今日の音楽:unknown track/Boards of Canada
ネットで色々と探していたら、boards of canadaのライブ音源を発見。早く来日しないかな。

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2007年2月 3日 (土)

独り言

最近は研究室の発表で、同期と意識、統合失調症についてレビューする必要があり、昔読んだ論文にも色々と目を通しているところ。

最近の個人的な興味は、特定の条件でいかなる時空間的パターンの同期が生じるかということよりも、脳内の特定のネットワークがどの程度まで同期しやすい傾向にあるのか(synchronizability可同期性?)ということ。
synchronizabilityも、グラフ理論やシミュレーション関連の分野ではかなり研究されているみたいだが、神経科学ではまだまだこれからの分野である。
とは言ってもsynchronizabilityについては神経科学の分野でいくつかの論文が出ていて、やはりsmall-world networkとの関連が重要で、特にネットワークのcharacteric path lengthがcriticalらしい。
また、大局的な同期は低い周波数帯域(α、δなど)で起こりやすく、局所的な同期は速い周波数帯域(γ帯域)で起こりやすい傾向があるようだ。

また、脳内の相転移phase transitionや、パーコレーションpercolationなども、synchronizabilityとも関連することとして気になるところだ。

相転移とは、たとえば水分子の集まりが液体から個体に突如変化するような、典型的な非線形現象である。
パーコレーションとは、ネットワーク上で任意のノード同士が互いに結合する確率を上げていったとき、ある閾値を超えると突如としてひとまとまりの無限遠の広がりをもつクラスターができることである。現実社会では、たとえば流行や感染症が社会全体に蔓延する現象や、地域全体に道路網が構成されるプロセスに相当する。

ちなみに、同期現象が伝播、浸透して、transientでグローバルな同期が実現するというのは、このパーコレーションや相転移に似ていなくはないだろうか?
実際にYusteらの研究で、脳はDOWN状態からUP状態へと相転移し、同期は常にUP状態で起きているらしい。
グローバルな同期現象が数百ミリセカンド持続することを考え合わせてみると、脳のネットワークの中でパーコレーションのような事態が起きている可能性は十分にあり得ると思う。
そして、相転移やパーコレーションのような現象が実際に起きているとして、それらが何の機能的重要性ももたないとは到底考えにくい。むしろ、このようなマクロな振る舞いによって、脳内で高次の心的現象が符号化(コーディング)されている可能性も考えられないだろうか。

情報の符号化の階層性という観点から言えば、意識や主観的体験は、ニューロンの発火率やおばあさん細胞のようなシングルニューロンレベルのコーディングではなくて、あるいは局所的なアッセンブリのレベルでもなく、もう一つ上のオーダーである相転移や同期、パーコレーションのようなネットワーク全体のダイナミクスのレベルでコードされているのではないかなと思う。
そして、Schizophreniaでみられる主観的体験の異常も、シングルニューロンレベルの異常からくるものでは決してなく、おそらくは意識と同じようにネットワークダイナミクスのレベルで起こっているのだろう。

とか考えていたら、最近neuro-percolationなんていう言葉もみつけた。

最近読んだ本小田垣 孝「つながりの科学ーパーコレーション」

今日のDVD:「蟲師」
1巻から3巻まで観た。

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