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2007年3月

2007年3月27日 (火)

最近

Dsc_0025先々週に泊まった、萱の家という温泉はこんな感じ。着いたときは、雪が舞っていてまだ寒かったけど、夜は星空がきれいだったなあ。
帰ってきたら思いの外に忙しくて、しばらく頭はフリーズしていた。

とりあえず、研究会での発表は無事に(?)終えた。やりたいことを分かってもらえただろうか?

さっき読んだ論文。

Ward LM, Doesburg SM, Kitajo K, MacLean SE, Roggeveen AB.eural synchrony in stochastic resonance, attention, and consciousness. Can J Exp Psychol. 2006 Dec;60(4):319-26.

synchronous oscillationに関するレビュー。Wardは、カナダの心理学者で、Binocular rivalryなんかでconsciousness関連の実験もやっていてよく名前を目にする。
Stochastice resonanceというのは、外的刺激によって惹起される神経活動そのものよりも、これに一定のノイズを加えた方が、知覚にのぼるための閾値を超える確率が増すという仮説。このノイズは大き過ぎると逆に知覚処理のコントラストを下げてしまうので、適切な範囲になければならない。Wardの言うnoiseは、むしろfluctuationといった方がよいかもしれない。

今日の音楽:Jorge Drexler"12 segundos de oscuridad"(CD)
映画"motorcycle diaries"で主題歌を歌っていたチリ(だったか)のシンガーソングライターの新作。最近の気に入り。

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2007年3月14日 (水)

昨日は

昨日は、大学の研究会で、「Synchronous neural oscillation, Consciousness and Schizophrenia」というタイトルで、レビューした。最初の総論的な内容で時間をかけすぎて、後半は駆け足になってしまった。それでも何人かの先生が反応したり、質問してくれたりしたのでよかった。
サヴァン症候群のレビューもいったん書き終えたので、もう一度、統合失調症と意識についてじっくり調べたり考えてみようと思う。

これから読む本は、
G.Buzsaki "Rhythms of the brain"(Oxford Univ. Press, 2006)
まだ出だしの1章だが、これは面白そう。

何となく気分で、今週末は群馬県の山合いにある温泉に宿泊することに決めた。一人なので、そこでゆっくり読んでみよう。
本当は、同じ群馬県の法師温泉に行ってみたかったのだけども、満室だった。

今日の音楽:Manual with Jess Kahr/The North Shore(CD)
Manualの"Bajamar"の一つ前の作品。"Azure Vista"では、シンセサイザーの使い方がちょっと大げさな印象も無くはなかったけど(好きだけど)、Jess Kahrというアーティストと共演したこの作品から、突如としてメロディーは抽象化し、音の輪郭が曖昧になっている。一体、何が起きたのか?音が何層にも重なっていて、まぶしい夕陽のように捉えがたく、浮遊感が圧倒的に増しており、聴いていると色んなことが思い出されて、トロトロとしたいい気分に浸ってしまい、寝てしまう。うーん、Bajamarでやっていたことは、ここで既に表現されていた。

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2007年3月 6日 (火)

パーコレーションと意識

最近気になるのは、やはりネットワーク関連。
特に相転移とか、パーコレーションなどは非常に気になる現象だ。
数式はよく分からなかったが、small-world networkとneural synchronizationに関する増田直紀の論文も読んでみた。

最近の文献を読んでいる限り、意識に相関する神経活動としては、γ帯域のsynchronous oscillationよりも、低周波数帯域のα、β帯域あたりの方が可能性が高いのかもしれないと思う。
Singerの最初の報告がγ帯域だったから、その他の周波数帯域はあまり良い扱いを受けていない。

今年になって、FinlandのPalva(夫婦か?)がα frequency oscillationに関するreviewを書いていたが、これはなかなか面白い内容だった。どちらかというと軽視されがちな低周波数帯域のoscillationでも、色々と興味深いデータが集まっているようだ。特に、意識とか注意との関連でのデータが面白い。

意識が成立するためには、少なくとも脳内のlarge-scaleなintegrationが必要だと思うが、比較的localなγ帯域のneural synchronyはそのようなlarge-scale integrationには余り向いていない。むしろ、よりlocalな意識のcontentsをコードしているのかもしれない。これに対して、より広域にsynchronizeするα〜β帯域のoscillationのは、large-scale integrationに貢献しやすいと考えられる。

さらに、これらマルチチャンネルのoscillationが周波数をまたいで相互にphase-lockし同期しているとというエビデンスもあり、最終的にはoscillationのバンドを分けて考える必要は無くなってくる。つまり、αバンドの上に、βバンドやγバンドのoscillationがのっかっることが可能だ。こうなると、脳内で並列的に走っている無数のoscillationやらシングルスパイクやらが、常にマルチスケールに統合されていて、局所と全体が相互に影響を及ぼし合うようなreccurentでholisticなクラスターを構成しているという可能性が出てくる。
おそらくは、Edelmanの言うDynamic CoreやもっとシンプルなBaarsのGlocal work placeもそういうものだろうと思う。少なくとも、PFC、frotal、parietal regionを巻き込むような大規模なクラスターだ。

ただし、large-scale integrationと言っても、実際に同期現象が皮質をどのように伝播していくかは、シミュレーションを除いて実験的にはほとんど明らかにされていない。脳のsmall-world性やsynchronizabilityから想像すると、同期の伝播はネットワーク上のパーコレーションに近いプロセスなのかもしれない。全てのニューロンが同期するわけではないし、互いに競合するoscillationの中でwinner-take-all式に一つが生き残って伝播すると考えると、それは部分的パーコレーションのようなものだろう。ただ、ある種のパーコレーションが成立したとき、ニューラルネットワークレベルでは一種の部分的な相転移みたいな現象が生じているのかもしれない。このような相転移は、おそらく数十〜100ms持続するmetastableな状態で、見方を変えれば準アトラクターのようなものなのかもしれない。
ニューラルレベルで一種の相転移が起きているとき、心的現象レベルでも何かが起きているのかもしれない。

このように、シングルニューロンレベルからネットワークレベルまで一気に駆け上がってくると、ニューロンの振る舞いは、単スパイクやバーストから、同期、synfire chain、grouping、パーコレーションなどのように、より複雑になるという階層的な構造を示す。
実験的結果から、シングルニューロンレベルでの振る舞いが要素的なコーディングメソッドとして用いられているのは間違い無い。しかし、僕はネットワークレベルの同期、あるいはそれ以上のスケールの振る舞いも、何らかの心的現象をコードしていると思う。しかし、コードされた心的現象にも階層的構造があり、意識や主観的体験はその最上位層にあるのかもしれない。

こうやってspeculationを重ねれば、確かに色々とつながってくるのだけど、これじゃあちょっと危ないところもあるので、やはりエンピリカルなデータもしっかりと押さえていかなければならないと思う。

あと、最近知ったのだが、かのBuzsakiが昨年本を書いていた。
G.Buzsaki"Rhythms of the brain"(Oxford Univ. Press, 2006)
これは絶対に読まなきゃ。

今日の音楽:Rei Harakami feat 原田郁子/Colour of the dark暗やみの色
昨年、Rei Harakamiの音楽と大島さんのプラネタリウムMegastarを連動させた企画が科学未来館であり、これはそのとき会場で販売されていたCD。クラムボンの原田郁子もナレーションで参加。僕は、その会場に行く機会は無かったものの、このCDだけをもっている。そして、既に廃盤。これが、とても素晴らしい内容の音響電子音楽で、優しい音が楽しげにたわむれるような音景。Rei Harakamiはもともと視覚的な音楽をやっているだけに、じっと目をつむってこのCDを聴きながら、そのとき目の前に流れていたであろう光景を想像すると背筋がゾクゾクとしてくる。あー、きっとすごいイベントだったんだろーなー。
最近色々と良いCDやレコードを見つけたが、まだ届いていないので、また後日。

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2007年3月 1日 (木)

最近

Dsc_0254
先日は、高校の友人と駒ヶ岳千畳敷へ。都心から3時間で標高2000m超の雪山に行けるから驚きだ。
うーん、来年は登ってみたい。

このところ、autismとサヴァン症候群関連の論文を手当たり次第に読み漁っていたので、ちょっと疲れた。
この分野もなかなか面白い。以下、メモ。

前回も書いたが、autism関連では、Uta FrithによるWeak Central Coherency仮説というのが有名だ。
これは、autismではlocalな認知処理過程が優位で、globalかつintegrativeな認知は苦手であるという一種の行動学的モデル。autismに関する心理学的知見から帰納されたものなので、症候の説明に適して大いに注目されたが、エンピリカルな土台に乏しいのが欠点だ。また、autismでは必ずしも統合的な情報処理が障害されているわけではなく、全体-局所という切り替えが不得意なだけかもしれない。僕自身は、WCC仮説はモデルの土台からしてmisleadingな可能性があると思っている。

最近は、機能画像の知見などが蓄積されてきたため、Just MAによってunderconnectivity仮説といったニューラルモデルが提出されている。underconnectivity仮説を大雑把に説明すると、autismでは広域のfunctional connectivityが低下し、代わりにlocalなcortico-cortical connectivityやcortico-thalamic connectivityが亢進しているというもの。前者は統合的な認知機能に関与し、後者はドメインスペシフィックな認知過程に関与しているという意味で、FrithらのWCC仮説に置き換わるモデルだろう。このあたりが、autismの能容積の拡大やpruningの異常など、発達や解剖学的なデータとからんでくると面白いと思う。

また、サヴァン症候群とautismとの関連は余りに深く、autismの10%以上にサヴァン能力が発現すると言われている。サヴァンの能力は、桁外れな記憶力、計算、音楽、視空間認知など、多彩である。Downによって100年前に初めて報告された際には、「ローマ帝国衰亡史」を一句違わず全て暗記している患者が報告されている。また、レインマンのモデルになったキム・ピークは、9000冊の本を記憶しているという。サヴァン症候群の包括的なニューラルモデルはまだ提出されていないが、上記のautismのモデルを応用して説明されることが多い。実際にサヴァン能力のほとんどは、autism患者が強迫的な興味をもつ分野と一致しており、localかつドメインスペシフィックな能力であることが多い。

サヴァン能力に圧倒的な機械的記憶(rote memory)が土台となっていることは間違い無いと思われるが、それだけでは彼らの能力は説明できない。また、彼らがそのような膨大かつ正確な記憶にconsciousにアクセスしているかどうかは、全く不明である。

Baron-Cohenの仮説にせよ、最近のautismのモデルは、最初からサヴァンを射程に入れているものが多い。それによればサヴァンは自閉症に関連した一つの認知スタイルとして理解されるべきとされている。

ちなみに、10年ほど前にMillerらによって、「後天的サヴァン」とも言うべき5つの症例が報告され、話題を読んでいる(Miller, 1998)。すなわち、前頭側頭型痴呆(FTD)の発病初期に、人格変化や脱抑制などとともに、芸術的才能の開花がみられたというものだ。狭義のサヴァン症候群と同じく、右半球と関連が深い能力が開花しており、SPECTでは左半球の血流低下がみられたという。
さらに、驚くべきことは、TMSによる磁気刺激でで左側頭葉前部の活動を一時的に抑制したところ、健常人を人工的に「サヴァン状態savant condition」にすることができたという報告(Snyder A, 2006)。

こういうことは、従来の二重乖離の原則では説明ができない。

サヴァン症候群では、認知機能の機能低下と亢進が併存する。これは、相互に抑制的なネットワークにおいて、皮質領域間の競合バランスが崩れることによって、逆説的な機能亢進paradoxical functional facilitationが生じることによると考えられている(Kapur N, 1996)。

今日の音楽:Omfo"Trans Balkan Express"(from CD"Luftkastellet 3")
Bicovina Clubを聴いてから、バルカン半島の音楽に興味をもっている。

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