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2007年6月23日 (土)

absolute temporal coding

最近読んだ論文。久々に、neural synchrony関係。

Fries P, Nikolić D, Singer W.The gamma cycle.Trends Neurosci. 2007 Jun 5

neural oscillatory synchronizationとtemporal codingについてのspeculativeなreview。
よく分からない部分もあったが、取り急ぎ記憶用にメモ。

gamma-band synchronous oscillationは、neuronal networkのconnectivityやネットワークを構成するニューロンの細胞レベルでの電気生理学的なプロパティに基づいた、自律的もしくは創発的なイベントであると考えられている。実験室の環境では、薬理学的に孤立化させたinhibitory interneuron networkでは、synaptic inhibitionとgap junctionがintactである限り、gamma-band oscillationが自律的に発生することが知られている。ただし、自律的なのは、interneuron networkの電気的活動そのものではなくて、それが発生する特定のパタン、リズム(gamma帯域など)である。つまり、実際の生態的環境では、interneuronが生み出すgamma-band oscillationは、pyramidal cellの活動や、外界や身体からもたらされる皮質への興奮性入力と無関係ではない。特に、pyramidal cellのexcitatory driveは、gamma-band oscillationを「駆動」する主な動力源であるとみなされている。しかし、繰り返すようだが、ネットワーク内にrhythmicなoscillationを発生させるために、pyramidal cellからの入力が必ずしもrhythmicである必要はない。

gamma-band oscillationについては、このブログでもこれまで色々と書いてきたけど、正直言ってまだまだ分かっていないことが沢山ある。

gamma-band synchnonous oscillationは、これまでworking memoryの保持、attentional selection
、sensory bindingなどの様々な機能との関連が報告されている。しかし、実際のところ、どれが最も根本的な帰納なのか、あるいはその詳しい原理については不明のままだ。

また、皮質のneuronal networkの大部分(約80%)は、excitatory pyramidal cellから構成されている。しかし、pyramidal cellのexcitatory driveとinterneuronのinteractiveなinhibitionとの相互作用が、脳の情報生成過程にどのように関わっているのかについても、はっきりしたことは分かっていない。

さらに、ニューロンのスパイクは、振幅と位相という二つの成分をもつが、ニューロンもしくはネットワークで、これらの異なる成分がどのように処理されているのかについても、はっきりしたことは分かっていない。

多分、ここに挙げた未解明の諸問題は、脳における情報の符号化の問題の中でも中核的な問題だと思う。

最近の神経生理学的実験では、pyramidal cellの活動とinterneuronの活動との関係が少しずつ明らかになってきた。すなわち、interneuronは、pyramidal cellよりもほんの少しだけ(数ミリ秒程度)遅れて発火していることが確認されたのである。何でもないズレのようだが、意外にもこの数ミリ秒のズレがとても重要らしい。

Pascal Friesは、このズレを次のように解釈している。

外界や身体からもたらされる興奮性の入力は、皮質のinterneuron networkにrhythmic inhibitionを発生させ、local networkに抑制をかける。pyramidal cellは、このrhythmic inhibitionが弱まる
ある一定のtime windowの間だけ、興奮性入力に反応することができる。一方で、pyramidal cellは、interneuronを駆動させる主要な源でもあるので、pyramidal neuronが興奮性入力に反応して活動すると、しばらく遅れてinterneuron群も活動すると考えられる。最終的には、network全体にinhibitionがかかり、oscillationは収束する。

このようなプロセスを通して、pyramidal cellとinterneuronとが互いに連携することによって、gamma-band oscillationのcycleを生み出している。

Pascal Friesは、さらに突っ込んで、temporal codingに関する新しい仮説を提唱している。

上で書いたように、interneuron networkは、oscillatory activityを通して、pyramidal cellに対して、rhythmicalなinhibitionをかけ続けている。そうなると、pyramidal cellは、interneuronによるinhibitionの強度が小さくなったときにだけ、発火することができる。このような状況下でも、pyramidal cellへのexcitatory inputの強度が大きいと、oscillatory inhibitionの1サイクルの中で、pyramidal neuronが閾値を超えて発火する確率は高まる。これを時間的にみれば、excitatory inputの強度が大きければ大きい程、interneuronのoscillatory inhibitionの各サイクルの中で、pyramidal cellは「早く」発火する傾向を示すと推定される。
また、pyramidal cellへの興奮性入力が小さい場合には、oscillatory inhibitionにうちかつことができず、結果的にそのサイクルの中では一度も発火できないで終わってしまう。つまり、"winner take all"の法則が成り立つ。

このプロセスが示す重要な点は、「pyramidal cellの興奮性の神経活動の強さ(振幅成分)が、oscillationの各サイクルにおける時間的な情報(位相成分)に転換(converted)される」、ということである。

実際に、このようなtemporal codingを示唆する知見がある。
ラットの海馬では、"theta-phase precession"(シータ帯域の位相の前進現象)というのが知られている。海馬のpyramidal cellは、ほとんどがplace cellとしての特性をそなえているらしく、個々のpyramidal cellは、固有の"place fields"をもつ。ラットが特定の場所に移動し始めると、特定のニューロンはθ帯域のoscillationにphase-lockされる。特定の場所に近づけば近づく程、ニューロンの発火はリズミカルになり、さらにθ帯域のoscillationのサイクルの中で、段々と早く発火するようになる。
つまり、あるニューロンにおいて、入力される刺激の強度と、oscillationのサイクルにおけるニューロンの発火イベントの位相との間に、一定の関係がみとめられるのである。

まとめると、外界や身体からもたらされる興奮性の入力と、これに反応するpyramidal cellの発火がたどる運命は、自身が埋め込まれたネットワークで発生するgamma oscillationとの時間的な関係によって決定づけられる。このような観点からすれば、inhibitory interneuronが発生するgamma osicillationは、pyramidal cellの神経活動にとっての"reference frame"として機能しているのかもしれない。

また、このような原理の導入は、脳内の神経活動の経済性という観点から考えても、リーズナブルであろう。

以下、個人的に考えたこと。

もしも、本当にneuronal networkが、このような原理によって振幅成分を位相成分に変換するという、"absolute"なtemporal codingをやってのけているのであれば、脳内で刻々と生成する情報現象の根本的な構成要素は、ニューロンの発火活動の時間的な成分(phase)ということになる。また、脳内のニューロンの発火活動が、ひとまとまりの情報として成立するためには、ある一定のtime windowが必要ということにもなる。

今日の音楽:Blast Head " Outdoor"(CD)
日本人のクリエーター2人組による新作。これは、またすごい内容。タイトルはアウトドア。でも、実際に音を聴いていると、全然開放的じゃなくて、むしろ内に内に深く潜っていくという、タイトルとは逆説的に内向的な印象を受けた。アウトドアで言えば、キャンプや、登山、海というよりも、もっと精神性の高いバックパッキングのような匂いがする。ちなみに、バックパッキングとは、生活に最低限必要な一式を全て詰め込んだバックパックを担いで、地図を頼りに徒歩だけで山野をめぐり、夜は山の中の適当なところで野営するという、ヒッピー全盛期の1960年代のアメリカで提唱された山歩きのスタイル。僕も、いつかやってみたいのだけど、なかなか時間が無いし、その勇気も無い。でも、夜中に山の中でこれを聴いたら、すごいだろうなあ。

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» オシレーション特集 [脳とネットワーク/The Swingy Brain]
TRENDS in Neuroscienceの7月号では、脳内リズム、オシレーションの特集が組まれている。 昨年フランスで開催されたこちらのコンファレンスに基づいているようだ。 まだ個々の総説は読んでいない。 けど、編集を担当したと思われるBen-Ariのこちらを参考にして、各...... [続きを読む]

受信: 2007年7月19日 (木) 08時10分

コメント

Buzsakiの"Rhythms of the Brain"では脳全般に見られるγリズムの重要性として「覚醒している脳のニューロン集団は15-30ミリ秒の時間的パッケージの中に自己組織化される(1秒を15-30ミリ秒で割ればγリズムに一致する)」「spike-timing依存性の可塑性によってシナプス結合はγリズムの時間的間隔においてもっともよく強化あるいは弱化される」(p260)とありましたね。一方、海馬はθリズムを利用して皮質に働きかけている(p331)とも。それぞれのリズムに特徴的なメッセージがこめられているようです。我々がヒトの脳に働きかけて行く時に(例えば治療的に)、このリズムを利用した介入というのは重要になるのではないでしょうか?

投稿 ykenko1 | 2007年6月24日 (日) 06時25分

追加ですが、例えば音楽でもこのリズムを利用して、ハイにする音楽とかリラックスさせる音楽とかも考えられそうです。(すでに利用されている?)

投稿 ykenko1 | 2007年6月24日 (日) 06時41分

ykenko1さん
色々と寄り道していたので、Buzsakiの"Rhythm of the brain"は、やっとp200くらいまで読み進めたところです。そういえば、Edelmanのrememberd presentという概念も、「conscious stateが、ある一定の時間幅をもって成立する」というものでしたね。そうなると、脳内で情報は「パケット式」に生成しているかもしれませんね。最近のネット回線でも使われているパケット式の情報伝達は、速度、経済性などの観点で特に優れているようです。進化の早い段階で、脳がこのような情報伝達方式を採用しているとなれば、驚きですね。
また、ykenko1さんのご指摘の通り、どうやら脳は特定の周波数帯域を異なる目的で使い分けているようですが、どうして、γ帯域なり、θ帯域が使われているのか?という問題にも、興味があります。Buzsakiの推論は説得力がありますね。

ちなみに、Pascal Friesは、低い周波数帯域のoscilaltionは安定性が高くて、外界からのperturbationに対して反応性が低いのに対し、高い周波数帯域では、外界からのperturbationに対して感度が高くなり、知覚、運動などの精細かつ迅速な処理が必要な認知機能に適していると述べています。さらに、oscillationが必要とするエネルギーの経済性を考えると、gamma-band辺りが最適なのではないかと、Pascal Friesは推測していました。

投稿 わるねこ | 2007年6月24日 (日) 15時54分

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