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2007年9月

2007年9月29日 (土)

大学院

来年度から大学院に進学することが今日正式に決まった。
合格発表は見に行っていないのだが、まさか落ちてるなんてことはないだろう。

何を研究するか、あるいは何を研究できるのかは、現時点では不透明な部分が多い。
しかし、何を研究したいか、というのは胸のうちではほぼ決まっている。
だいたいこのブログで書いたり紹介したりしていることなんだが、あれこれと言う前にその前にやらなきゃいけないことが今の僕には多過ぎる。
少なくとも、EEGやMEGの技術的な面に関するトレーニングを受けないと、とてもじゃないけどお話にならない。
解析についても然り。

論文はもっと批判的に読み込もう。
このブログでも、これまでみたいにレビューだけじゃなくて、実験や具体的な方法論について積極的に取り上げていきたい。

ちなみに、このブログでは何人かの先生とのまさに奇跡的な出会いがあって、近くであれ遠いところであれ羅針盤のようにいつも僕の目指す方向性の強い指針になってくれた。
以前に比べてブログの更新のペースは大分落ちてしまったけど、今後も地道に続けていきたい。

ちなみに、明日からはウズベキスタンとトルクメニスタンへの旅に出かけてくる。
旅行人を読んで行き先をミャンマーにしなくてよかった。
10月8日に帰国する予定。

というわけで、しばらく留守にします。

今日の音楽:Ride/Dreams Burn Down (from CD"Wave")
高校時代によく聴いた。

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2007年9月24日 (月)

Dysfunctional long-range coordinatin of neural activity during Gestal perception in Schizophreenia

Dsc_0068先週末は、1泊2日で槍ヶ岳に登ってきた。上高地インの槍沢ルート。金曜日の夜に沢渡駐車場に着き、ここで深夜まで車内で仮眠をとった。朝5時に安房トンネルのゲートが開き、5時過ぎに上高地に到着。そこから延々と12時間歩き続けた。槍沢ロッジまでは快調にとばし、だいたい5時間くらい。2泊3日のスケジュールだとここで1泊する。僕らは、そのまま歩き続け、その日のうちに槍ヶ岳山荘を目指した。しかし、槍沢ロッジからは延々と上り坂が続き、正直かなりしんどかった。特に、槍ヶ岳山荘が見えてから、4時間くらいかかってしまったかもしれない。標高3000m超に位置する槍ヶ岳山荘でのこの時期の気温は5〜6度で、とても寒い。天気予報のためか、槍ヶ岳山荘は比較的空いていて、一人一畳分のスペースを確保することができた。

Dsc_0113山荘では、登山客が二段ベッドに並んで睡眠をとる。しかし、いびきがうるさくて、僕は2〜3時間しか眠れなかった。翌朝は5時前に起床して、出発の準備を済ませておいた。食堂で軽く朝食をとった後、身軽な装備で頂上を目指す。頂上付近は鎖場(くさりば)でとても危ない。写真のような岩場を鎖やはしごをつたいながら、慎重に登ってゆく。身体を確保するためのはしごや鎖がポイント毎に設置されているので事故はそう多くはないようだ。しかし、標高3000m超ともなると、しばしばかなりの強風と雨にあおられるので、さすがに怖い。山荘からだいたい30分くらいで頂上に到着した。ここで、同行者とがっちりと握手。しかし、頂上は狭く、2、30人もいると、満員になるくらい。風が強くて、とても立っていられない。

Dsc_0091日頃の行いがよかったのか、頂上ではブロッケン現象を初めて体験した。頂上に30分くらいいて、そのまま下山。下山を開始した直後に雨が降り始め、その日は結局ずっと降ったり止んだり。雨の中クタクタの足でひたすら歩き続け、上高地まで9時間くらいかかってしまった。
今まで海外(ネパール、パキスタン)でトレッキングをしたことはあったけど、山荘に宿泊するような形での登山は今回が初めてだった。頂上にたどり着ける可能性は低いと思っていたのだけど、最後の難所を除いて意外にも快調に登ることができ、少し自信を深めた。それに、疲れよりも、山歩きの気持ち良さの方が強かった。


来週末から、ウズベキスタン、トルクメニスタンを旅してくる。
うーん、ちょっと遊び過ぎかもしれない。

明日は大学で抄読会。

MaxPlanck instituteのUhlhaasとSingerらが行った実験で、Schizophreniaでneural synchronizationの破綻していることを報告した論文を紹介する予定。

統合失調症では大規模なneural synchronizationが障害されていることについて述べ、近年の統合失調症の認知モデル(Fristonのdisconnection hypothesisとかAndreasenのCCTCCとか)との関連について述べる。最終的には、少しspeculativeに、Kraepelinの"loss of inner unity"とか、Bleulerの""loosening of association"などの精神病理学的モデルとつなげてみようと思う。

以下、そのメモ。

Uhlhaas PJ, Linden DE, Singer W, Haenschel C, Lindner M, Maurer K, Rodriguez E.
Dysfunctional long-range coordination of neural activity during Gestalt perception in schizophrenia.
J Neurosci. 2006 Aug 2;26(31):8168-75

Participants:フランクフルト大学の入院病棟または外来で募集された19人の統合失調症患者と19人の健常被験者

Task:Gestalt face perception

Visual stimuli:Mooney face(Rodiriguezらが使っていたやつ)
face conditionではupright Mooney faceを、no-face conditionでは、inverted versionを提示する。

Experimental procedure:1ブロックあたり88枚のMooney face(44枚はupright、44枚はinverted version)をランダムに提示し、顔を知覚したかどうか被験者にボタンを押して報告させる。計4ブロックを施行する。

Electrophysiological recording:63個の頭皮上の電極から脳波活動を記録した。spectral powerとphase valueを、15-80Hz(β〜γ帯域)、-800から1000msの区間で解析した。neural synchronyについては、phase dataからPhase locking value(PLV、Lachaux)を算出した。

結果:まずbehavioralには、統合失調症患者で顔認知の成績が低下し、反応時間も遅延しているのは従来の知見通りだ。

次にEEG dataであるが、spectral powerについては両群、条件間で有意な差はみられなかった。

両群で顕著な差が出現したのは、phase synchronizationだ。control群では、β帯域(10-30hz)で2つのピーク(1つ目は刺激提示後200ms、2つ目は400-600ms後)が出現しており、いずれもno-face conditionよりface conditionで増強した。
しかし、Schizophrenia群ではβ帯域の2つのピークは、control群よりも遅延していた。1つ目は350-400ms後に出現し、2つ目は600ms後に出現した。また、PLV値もcontrol群より低下していた。γ帯域(30-80Hz)では、control群ではみられなかったdesynchronization(脱同期)が200-280ms後に出現していた。

さらに、neural synchronizatitonのtopographyを解析したところ、control群ではface conditionで刺激提示後200msよりfrontal、temporal、parieto-occipitalに及ぶ広域のsynchronizationが出現しているのに対し、Schizophrenia群ではこのような広域の同期現象はみとめられなかった。

これらSchizophrenia群のPLV値は、PANSS上の症候学的プロフィールともよく相関していた。face conditionでPANSSのfactor positiveとの相関(P=0.04)がみられ、特に幻覚(p=0.01)と妄想(p=0.02)において強い相関が確認された。一方で、spectral powerとPANSSの各スコアとの間に有意な相関はみられなかった。また、PLV値とmedication dosageやonseとの間にも、有意な相関はみられなかった。

以上より、Schizophrenia患者では、Gestalt face perception課題下にEEGで記録されるβ帯域のneural synchronyが遷延かつ減弱しているだけでなく、synchronizationのmaintenanceも障害されていると結論づけられる。

Uhlhaasは、これらの結果を踏まえ、Schizphreniaの中核的な病理は、脳内の神経活動の広域の統合過程が障害されていることだ推測している。


ちなみに、先行研究としては、Harvard大学のSpencerらのグループがあげられる。彼らも同じくvisual Gestalt stimuliとEEGを用いてSchizophrenia患者のneural synchronizationを調べている。しかし、Spencerらの実験では主にγ帯域のsynchronizationが減弱し、これよりも低い周波数帯域のsynchronizationは比較的保たれていたという結果が得られており、Uhlhaasらの結果とは相反するものだ。Spencerらがresponseにlockさせて加算平均しているの対し、Uhlhaasらは従来通りstimuliにlockさせて加算平均していることが、両者の違いの一因かもしれない。

今日の音楽:Odd Nosdam"Burner"(CD)
Odd Nosdamは、Boards of canadaの"Dayvan cowboy"のremixをしていた音響エレクトロニカのアーティスト。

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2007年9月13日 (木)

当直

今日も内科当直。
何度か呼び出されて、眠れなそう。
明日は外来だし、辛いなあと、愚痴っぽくなってしまった。
でも今週末は、槍ヶ岳に登るので、まあ頑張ろう。

そんな中、ネットをちらちらと眺めていたら、なんと漫画「Hunter x Hunter」再開のニュースが。
本当なら、これほどうれしいことはないないのだが・・。

今読んでいる本
夢枕獏「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」(徳間書店)
不意をつかれた。結構、おもしろい。
「虚しく行きて、満ちて帰らん」という空海の言葉が頭に響く。

入戸野宏著「心理学のための事象関連電位ガイドブック」(北大路出版)
分かりやすくて、参考になる。
もう一つ、Steven J Luck"Event-related potential teqhnique"(MIT press)も購入。

とりあえず、今後電気生理をやろうとするなら、こういうテクニカルなことは押さえとかなきゃいけないと思って読んでいる。

と、これを書いているところで、また呼ばれた。

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2007年9月10日 (月)

brain oscillations and declaretive memory

最近は、1日1論文。

Osipova D, Takashima A, Oostenveld R, Fernández G, Maris E, Jensen O.Theta and gamma oscillations predict encoding and retrieval of declarative memory.J Neurosci. 2006 Jul 12;26(28):7523-31.

This study addressed the spatiotemporal pattern of oscillatory activities of the brain underlying the encoding and retrieval declarative memory.

The experimental paradigm consists of two different session. In the encoding session, 13 healthy participants were shown 120 photographs of either a building or a landscape. In retrieval session, participants are shown different set of 240 photographs which includes photographs shown in the former encoding session and newly shown photographs, and subsequently asked to judge whether the shown photograph had been shown previously in the encoding session or not. During the task(-0.5s to 1.0s after stimulus onset), their oscillatory brain activities were measured by a wholehead magnetoencephalography(151ch). All data analysis was performed using the FieldTrip toolbox on Matlab.
In result, successful encoding and retrieval of shown photographs were associated with gamma-band oscillations in bilateral occipital areas corresponding to BA 18/19 and theta-band oscillations in right temporal areas.This result indicates that spatio-temporal pattern of oscillatory activities predict performance of the declaretive memory task.
Interestingly,both gamma-band and theta-band oscillatory activities are suggested to play a role in encoding and maintenance of working memory.

This study also provides useful information about the experimental design of memory study using MEG.

最近観たDVD:「パフューム」 トム・ティクヴァ監督
悪臭に満ちたパリで生まれた天才調香師のものがたり。主人公の鬼才ぶりと狂気が何だかおそろしくて、構成も最後まで緊張感を保っており、けっこう面白かった。サヴァン的な匂いも感じた作品。

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2007年9月 1日 (土)

consciousness is an order parameter

このところの夜はすっかり涼しくて、うるさい蝉じゃあなく、耳に心地よい鈴虫の音色が聴こえるようにもなり、もうすっかり秋だなー、としみじみ。苦手な夏が終わったことをうれしく思う。

2週間後には、病院の同僚と槍ヶ岳を登ってくる予定。うーん、楽しみ。

最近読んだ論文をメモ。

Walter J. Freeman: Consciousness, Intentionality and Causality. Journal of consciousness studies 6: 143-172, 1999

causality、conscousness、intentionalityなどについてspeculativeに述べられた論文。ボリュームが多くて、内容はところどころ難解な部分もあり、読むのに苦労したが、consciousnessや心脳問題について考えるためには、一度は読んでおいた方がよい重要な論文だ。引用頻度もけっこう高い。数式が無いので、興味さえあれば、誰でも読める。
要約すると、↓のような感じ。

Freemanによれば、脳のような、無数の要素から成り、多数のfeedback loopで結ばれたnon-linearな振る舞いを示す複雑なシステムとそこで起きる現象は、従来のlinear causationでは説明することは不可能であるという。

従来の(あるいは現在でも)心理学、認知科学における実験では、stimulus(input)→response(output)あるいは、perceptiton→motor responseというlinearな説明がなされることが多い。稀に、このようなsimplisticな説明が功を奏すこともあるが、あらゆる心的活動の基盤となる脳の神経活動はnon-linearであり、基本的に一回性のnon-reproducibleであって、絶え間ない神経活動のプロセスは常にdiscontinuousなステップ(state transition)の連鎖である。このような複雑なふるまいを示す脳の神経活動とこれに伴う心的活動を、単純にlinear causationに落とし込むことは不可能であると考えられる。

single or multi-unit cell recording、EEGやMEGなどの手法で脳の活動を観察すると、一見ランダムにみえるmicro-levelのニューロンのふるまいから、コヒーレントなmacro-levelのパタンが生み出されるのを目にすることができる。よく言われるように、脳は、self-organizing、antonomousなシステムで、外界や身体からの入力を欠いた状況でも時々刻々とコヒーレントな活動パタンを生み出している。外界からの刺激は、システムに対するperturbationとして作用し、神経活動の軌跡にバイアスをかけるものと捉えられる。相互に連結された視床ー皮質系では、各要素の活動パタンがあいまって全体としてのパタンを構成する。一方で、全体としてのコヒーレントなパタンは各要素をenslaveして、そのふるまいにバイアスをかけるという部分ー全体関係がみられる。このような円環的な関係は、"circular causation"と呼ばれ、Freemanによれば、consciousnessは脳という複雑なシステムにとっての"order parameter"である。

Freemanの言う「Consciousnessはorder parameterである」という事態は、どういうことか?
僕の理解では、次のような感じ。

あるタイムスケールでの脳の活動パタンC'がCという意識の状態を伴うとする(Edelman風に)。
僕らの日常的な感覚では、C1→C2→C3→・・・という連続する意識状態が何らかのcausalityをもって連なっていると感じられる。しかし、その基盤となるC'1、C'2、C'3はtrasparentで、直接把握することはできない。

心的活動と脳の神経活動をlinearなcausationで説明する際には、C'→Cという方向のcausationは認めるが、その逆のcausation(C⇒C')は物理的に不可能であるとされる。CはC'の指標であり、実際にはC'1→C'2→C'3→・・・というシークエンスだけが存在し、僕らが体験するC1→C2→C3→・・・というシークエンスは実際には成り立たない。Edelmanは、こちらの立場をとっている(Edelmanはダイナミックコア仮説で複雑系の考え方を取り入れているが、少なくともbrain-consciousness間のcausalityについてだけみれば、linearな立場をとっているようにみえる。しかし、より正確に言えば、C-C'関係をentailmentという「論理的に必然な関係」として捉えており、"causation"という考え方自体をとっていないのだが)。

しかし、circular causationの考え方では、C⇒C'という方向のcausationをも容認する。しかし、注意すべきは、これはCがorder parameterとしてC'のフローにバイアスをかけるという形をとったcausationであって、C'→CとC⇒C'は必ずしも対称ではないということだ。Circular causationでは、CとC'の関係は、C'1→C1⇒C'2→C2⇒C'3→C3⇒・・・というシークエンスで捉えられる。

VarelaとThompsonも、"Radical embodiment"で、同じような立場をとっていたと思う。

この、circular cusation自体は、とりたてて新しい概念ではない。記述のスタイルは違えど、Merleau-Pontyも50年前に"Action-perception cycle”として同じような結論に達している。しかし、一方で科学のコミュニティにlinear causalityを捨て去ることに強い抵抗があるのも事実で、特に医学の分野ではこのような傾向が強い。

この論文の後半には、精神医学に対する言及もある。近年の精神医学では、統合失調症のドーパミン仮説、ストレス脆弱性モデル、気分障害のモノアミン欠乏説など、様々な精神疾患の生物学的モデルが提唱されてきたが、ほとんど全てlinear causationを元にしていると言ってよい。Freemanは、このような状況に対して、「もうちょっと複雑に考えみては」と言う。

ちなみに、よく、bio-psycho-socialというつまらない表現を目にするが(僕はこの言葉が嫌いだ)、これだって、基本的には各レベルのイベントの総和が精神疾患の発症に寄与するというlinearなモデルであって、各レベルの相互作用は無視されていることが多い。
もちろん、個々の発症因子を特定していく作業は絶対に必要だ。しかし、これらの因子どうしの相互作用や異常を抱えた脳ー身体ー環境の相互作用を考えることも、精神疾患の発症とその後のプロセスについて考えるためには大事だろう。

今日の音楽:Peter Bjorn and Jhon"Yong Folks"(mp3)
コーヒーのCMで流れていたのを一度聴いて以来、耳から離れなくなってしまった曲。調べてみたら、北欧のバンドの曲だった。聴き方によっては、ネオアコ、ギターポップ的だと言えないこともない。今は、そういう表現はしないだろうけど。個人的には、ドンピシャ。後ろ向きで、力が抜けていて、全く地に足がついていない。12inchはあるのだろうか。10年前に聴いていたら、興奮しただろうなあ。

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