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2008年1月 9日 (水)

Brain dynamics underlying the nonlinear threshold for access to consciousness.

ちょっと前に読んだ論文。久しぶりに意識関連の論文をピックアップ。最初に読んだときはよく分からなかったが、最近になってもう一回読んでみると理解できたので、取り上げてみた。

Del Cul A, Baillet S, Dehaene S.
Brain dynamics underlying the nonlinear threshold for access to consciousness.
PLoS Biol. 2007 Oct;5(10)

これは、backward maskingを使って、conscious perceptionが生じる決定的なtime periodを調べたERP study。behavioralなデータとして、objective、subjectiveの両方のデータを採用している。

以前、同じくDehaeneのグループのClaire Sergentの"Timing of the brain events underlying access to consciousness during the attentional blink."(Nature Neuroscience, 2005)を紹介した。あれも、attentional blinkを用いることによってconscious perceptionと相関するEEG activityの詳細なtemporal structureを調べた実験だった。結果としては、consciousとnon-conscious間では刺激提示後の約270ms後にelectrical activityの"divergence"が生じるというもので、確か、T1-evokedのN2とT2-evokedのP3が競合して、blinkが生じるという解釈だったと思う。Sergentの実験は、僕的にはかなり衝撃的だった。ただし、問題がないわけではないらしい。

最近までvisual perception関連のERP論文を読みあさっていたのだけれど、意識に関して言えば、これまでに行われた意識関連のERP studyの多くは、objectiveなbehavioral dataをconscious、non-consciousに二分しており、これらと相関するERP componentを探し出すという戦略(ERP-correlates of consciousness)をとっている。しかし、刺激や課題が異なると、このERP-correlates of consciousnessも実験間で異なってくるため、必ずしも実験結果が一致しないという限界があった(おそらく、実験課題におけるattentionの関与の度合いの違いが大きいのだと思う)。例えば、P1やN1といったearly processingを反映するERP componentsがconscious perceptionと相関するという報告もあれば、P3、Central Positivity(CP)などのlate  processingを反映したERP componentsだけが相関するという報告もある。また、Visual Awareness Negativity(VAN)みたいに、結局どっちつかずのERP deflectionもある。

それと、Dehaeneが言うように、behavioralにみると、conscious perceptionの成立は基本的にnon-linear、bimodalまたはall-or-noneな現象であるため(反論もあるが)、先のSergentの実験で採用されたconscious、non-consciousという大雑把な二分法では、このようなnon-consciousからconsciousへのシャープなtransitionを捉えにくいという限界もある。

で、基本的にはこの実験でもSergentの実験と似たような結果が得られているのだけれど、重要な点が2つあって 、

一つ目は、backward maskingのtarget-mask stimulus onset asynchrony (SOA)を16-100msの区間でかなり細かくずらしていくことで、non-consciousからconsciou perceptionへの急激なtransitionを捉えるのに十分な実験条件を整えていること(Segentのattentional blinkを使った実験では、T1-T2 lagが258ms、688msの二点設定していない)。この実験では、SOAが33-66msの区間でのみ、objective,subjectiveなスケールがシグモイドカーブを描くことが示されている。ただし、maskingのonsetがtrial毎に変化するため、ERPをtarget stimuliのonsetに合わせて加算平均しようとするとS/N比が落ちてしまう。これを回避するために、ちょっと巧妙なsubtractionをやっている。

二つ目は、ERP-correlates of consciousnessを特定するために、単にobjectiveまたはsubjectiveなスケールや刺激条件とのANOVAを調べるだけではなく、conscious perceptionの本質的にnon-linearなふるまいを新たなクライテリアとして採用していること。 その「クライテリア」とは、

(1)刺激強度(ここでは概ねSOAのこと)を細かく変化させることによって、ERP componentのamplitudeがnon-linearなカーブを描くこと(ERP componentのamplitudeをSOAの関数としてみると、transition pointまたは閾値が存在する)。さらに、具体的に言うと、SOAがある特定の区間(この実験では、SOAが33-66ms)にあるときのamplitudeの変化が、その他の区間におけるamplitudeの変化のトータルよりも大きなERPのcomponentを探し出すことを、non-linearな変化としてひとまず定義している。

(2)刺激強度を閾値付近(この実験では、50ms)で固定した際に、seen、not-seen trial間で、amplitudeが有意に異なること(divergenceが生じる)

(3)脳内の広域を巻き込む活動であること(補足)

である。

つまり、subjective visiblity(conscious perception)が示すnon-linear、integrativeなプロフィールを、神経活動レベルにおけるconscious processingの"signature"として採用しているのだ。

実際、上記のERPのearly componentとlate componentのどちらが、conscious percetpionに対して真に相関しているのかという未解決の疑問は、単にbehavioral dataとの相関をみているだけでは解決する気配が一向にないのだけれど、このクライテリアを使うことで両者にもっと明確な違いが出てくるかもしれない、というわけだ。

ちなみに、Dehaeneらの意識のモデルは、主にaccess consciousnessを説明しようとする仮説で、簡単に言えば脳内の広域の活動が統合されて意識が成立するために必要な「場」を構成するというものだった。この仮説と上記のクライテリアから、次のような推測が立てられる。

まず、ERPのearly componentは、conscious perceptionと部分的な相関を示すが、それ自体は刺激強度に対してlinearにbuild-upしていくものであり(thresholdが無い)、またoccipito-temporalの比較的限局した領域に限定されるので、上記のクライテリアを満たさない。これに対して、late componentは、刺激強度を大きくしていくと、あるポイントから突然シグモイドカーブを描きながらnon-linearに変化し、また脳内の広い領域をfeed-forward、feed-back式に巻き込んで、上記のクライテリアを満たすだろう、と。

つまり、target刺激の知覚強度を変化させていくと、ある閾値を超えたときに、non-linearな変化を示し、脳内の広い領域にpropagateしていき、これがERPのlate componentに反映されるのであろうと。

実験結果の詳細は省くが、大体以下のような結果だ。

(1)従来の報告通り、SOAを少しずつ変化させていくと、objective data、subjective visiblityの双方ともに、類似したbimodal、non-linearな分布パタンを示すこと

(2)SOAが約50ms( 33-66ms)付近になると、visiblityにnon-linearなtransitionが生じる。

(3)N2のonsetは、targetのonsetと相関しているが、N2のoffsetはmasingのonsetの影響を受けて変化している。これは、N2にのみ確認されており、N2のtime period(212ms以後)でtargetおよびmask stimuliに対するprocessingの競合が起きている可能性を示唆している。

(4)P1bのようなearly componentもbehavioral dataと相関しているが、上記のクライテリアを満たすERP componentは、P3だけである。

(5)seen、not-seen間では、targetを提示して約270ms後からsudden divergenceが生じる

(6)このP3を含む、約270-400msのtime periodでは、EEG活動は、両半球のfrontal〜parietal〜occipito-temporalを含む広域に広がっている

(7)ちなみに、not-seenでも、mask-onlyの条件と比較して有意に大きい活動があり、non-consciousな刺激に対しても脳内ではsubliminalなprocessingが進行している


相関関係は因果関係と同一ではないし、この実験で採用されたクライテリアが厳密にどこまで妥当なのかは追試と検討が必要かもしれないけど、意識のnon linearな特性を考慮した「相関関係」を職人芸的なERP studyにもちこんだのは面白い。それに、これまでERPによる意識関係の実験の意義が今イチ良く理解できなかったのだけれど、このnon-linearなふるまいとattentionとの関係とか、まだやれることはあると思う。

色々と考えることはあるが、それを実験デザインのレベルに落とし込めない自分にちょっとイライラする。

今日の音楽:Kazuya Kotani/Made in love(CD, 2007)
これは、かなり質の良いアルバムだ。思いつくキーワードを挙げてみると、organic、ambient、chill out、太鼓、虫、海、ジャングル、trip、africa、middle-east、琉球などなど沢山出てきて情景豊か。フィールドレコーディングの音素材も散りばめられているけど、わざとらしくなくて、「旅」って感じがよく出ている。多分、この人世界中の土地を歩き回っているんだろうなあ。chari chariほどアーシーではなく、calm程スピリチュアルでもない。このCDの控えめでノスタルジックな雰囲気は、和製blissと言ったら失礼かもしれないが、同じくらい好きだ。竹村延和とか、Up, Bustle and Outとか、色んなところで色んな人と共演してきた人らしい。

一昨日の映画:「ボルベール 帰郷」/ペドロ・アルモドバル監督
ペネロペ・クルーズが何だか神がかってて・・すごい。

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コメント

ボルベールも話の内容はいつものアルモドバルっぽいけれど、クルスの健康美が良いスパイスになっているよね

スペインで思いっきり飲んでみたいけれど、ユーロ高でバブル到来しているからなあ

投稿 piojo | 2008年1月 9日 (水) 09時16分

3部作のうち、2作目はまだ観てないんですが、今のところはずれがないので、観てみようと思います。
ちなみに、僕の初ヨーロッパはスペインだったのですが、楽しい国でした。ジブラルタルからコスタデルソルに沿って、イビザ、バルセロナと抜けたんですが、スペイン人女性は観ていて飽きませんでした(笑)。

投稿 わるねこ | 2008年1月 9日 (水) 16時07分

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