唯識
4月から院生になり、ラボや勤務地の都合上、立川在住ではちょっと距離的に辛いので、家探し。
大学にも近い荻窪に、「忍者屋敷」のような家があって、直感的にそこに決めた。
2部屋を合わせた通常の居住空間よりもロフトの方が1.5倍広いという、お得で風変わりな物件だった。
ちなみに荻窪には1年半くらい住んでたことがあって、おいしいカレー屋と蕎麦屋がそれぞれ少なくとも2件あること、「ひな菊」と「邪宗門」という僕が好きな喫茶店があることなどから、好きな街の一つだ。
最近、唯識関連の本をちょこちょこと読んでいる。
唯識というのは、4世紀頃のインドで現れた瑜伽行唯識学派によって唱えられた認識論的傾向を持つ思想体系のことだ(Wikipedia)。かのナーランダ(いつか行きたい)の古代の仏教大学では、主にこの唯識を研究していたのだそうな。宗派で言えば法相宗ということになって、日本では東大寺などが総本山となっている。
で、何で唯識かというと、それがそのまま「意識」を扱おうとしているから。その射程範囲は知覚、意識から無意識にまで及んでいる。そして、無意識の下に、個を超えた背景的な心的空間である阿頼耶識(あらやしき)を想定したのが、この唯識だ。読む前は、禅やヨガなどの体験を通じて一人称的な視点に基づいた内観的なアプローチかとたかをくくっていたら、実のところ、個々の体験だけを重視しているわけではなくて、おそらくは当時の東洋世界の最新かつ複雑な論理構成を下敷きに、個々の体験と理論の間を何度も行ったり来たりしているのだ。良い意味で予想を裏切られた。しかも、難解。ほとんど分からない。
現代の科学と哲学のタームとは、その作法は大分異なるけど、表層的な意識の本質を「識別」あるいは「差異化」などと指摘していたり、ある種の実体的な現象(読みようによっては物理的な現象とも読み取れる)と心的現象との関係について述べていたり、因果的関係では関係論的存在論(縁起)やネットワーク性なども持ち出していて(これは、仏教思想全般にあてはまること)、EdelmanやVarelaが言っていたような仮説と接続可能な部分もあり(僕がこういう箇所にばかり反応しているのにもよるが)、かなり興奮した。西洋哲学での唯心論とは全く異なる点に要注意。というのも、当初は、表面的には唯心論と同じように、まず「識」はあるけど外界の事物は存在しないという仮の主張から出発するのだが、最後には「識」そのものまで「空」に帰してしまうからだ。残るのは、実在性も中枢も書いた、「帝網」のようなネットワークの関係論的存在だけだという。
現時点では、オルタナティブであって、脳科学と直接的に接続するのは難しいと思うが、Mind and Life instituteのように、哲学の分野ではこういうアプローチも真剣に検討され始めている。
それにしても、このMind and Life instituteのメンバーに日本人が含まれていないのは、一体どういうことだろう?単に、欧米のエキソティシズムとくくってしまうことは出来ないような気もする。
井筒俊彦「東洋哲学覚書 意識の形而上学—『大乗起信論』の哲学」 (中公文庫BIBLIO)
大乗起信論は、唯識そのものでは無いようだが、仏教が「意識」をどう扱おうとしてきたのかという点を、必要な部分は現代思想のコンテクストで読み直すことによって、比較的明瞭かつ詳細に解説していて、意識の東洋思想的なアプローチに関連した本の中では、今のところ最も感じ入るところが大きかったものの一つ。
岡野守也「唯識と論理療法—仏教と心理療法・その統合と実践」(佼成出版社、2004)
横山 紘一 「唯識とは何か—『法相二巻抄』を読む 」(春秋社)
最近、読んだ論文。
attentionとoscillation関連の研究も、一時のピークを過ぎたかなあ、というのが最近の感想だ。
これは、矢印を使った比較的シンプルな刺激をもとに、alerting、orienting、executive controlという3つの異なるattentional stateを評価するための課題を行わせ、EEGで得られたデータをもとにERPおよびpower-spectrum analysis、source analysisを行ったという研究。source analysisに一工夫をこらしている。
frequencyドメインの解析は、頭皮レベルではなく、dipoleレベルで行っているのが一つ目の特徴だ。筆者らの主張によれば、この方法をとった方が解剖学的構造と機能との相関が強まるとのこと。また、同じグループが行った過去のf-MRI studyで 得られたデータをもとにして、dipole modeling(BESAを使用)にf-MRI basedのconstraintをかけているのが、二つ目の特徴。f-MRI basedでdipole modelingを行っても逆問題は完全には解決されないが、experimenter biasは小さくなり、ERP studyにおけるsource analysisの欠点を小さくするのが目的。
結果としては、、異なるattentitonal networkでは、それぞれ異なる周波数帯域と分布をもったoscillationのmodulationのパタンがみられる。
alertingでは250-400msでθ、α、β帯域のパワーの減少、orientingでは200msまでにγ帯域のパワーの増加、executive controlでは幾分複雑なmodulationのパタンを示している。
今日の音楽:Manual & Syntaks/Golden Sun(CD)
どこか知らない国の浜辺の夕暮れ時、辺りが黄金色に染まって、自分もその中に飲み込まれてしまい、時間の流れがただひたすらスローになっていくという、chill outのゼロポイントのような音景。では、どこの浜辺か?イビザでも、パンガンでも、ゴアでも、沖縄でもない。案外、伊豆とか和歌山とかかもしれない。
| 固定リンク
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/132728/17791220
この記事へのトラックバック一覧です: 唯識:
コメント