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2008年6月 3日 (火)

Pascual-Leone

関東地方も、いつもよりちょっと早い梅雨入りを迎えたらしい。

Pascual-Leone A, Walsh V.Fast backprojections from the motion to the primary visual area necessary for visual awareness.Science. 2001 Apr 20;292(5516):510-2.

久しぶりに取り上げるのは、少し古めのvisual awarenessに関する論文。
Pasucual-Leoneという名は、色んなところで耳にするが、この論文を読んで、やっぱり凄いな、と。

これは、TMSを使ってvisual awarenessの神経基盤について調べた実験だ。通常、TMSはある高次機能のlocusを探るために使われることが多いと思うのだが、この実験は巧妙な手法によって、visual awarenessのlocusだけでなく、各脳領域群の活動のタイミングもしくはcausalityまでを射程に入れている、というのが凄い点。

しかし、その手法はいたってシンプルだ。

前提として、visual cortex(V1など)にTMS刺激を与えると、phosphene(flashes of light)が知覚されることが知られている。また、MT/V5にTMS刺激を与えると、被験者はmoving phospheneを知覚することも。そして、この実験は、V1とV5における神経イベントの時間的関係を調べるために行われた実験だ。

まず、Pascual-Leoneらは、TMSを用いてヒト(最初にマカクザルと書いたのは、誤りです。ご指摘、ありがとうございました。)のV1とV5/MTを10msおきに設定した異なる時間間隔で刺激した。そして、各時間間隔での刺激後、被験者に知覚されたphosphene(flashes of light)がどのように変化するかを調べたのだ。

結果として、V5よりも先にV1にTMS刺激が与えられた場合には、phosphenesの知覚パタンに変化はみられなかった。しかし、V1よりも一定時間(5〜45ms)だけ先行してMT/V5にTMS刺激が与えられた場合にだけ、知覚されたphospheneの量と質(動き)に変化がみられたのだ。

これは、awareness of visual motionが成立するためには、MT/V5からV1への逆投射が必要であることを示している。しかも、その逆投射はV1の刺激後5〜45msというかなり早いタイミングで生じているのだ。consciousnessが生じるためのfeedback projectionというのはもっと遅いタイミングで生じるものと考えられていたので、この結果は驚きをもって迎えられた。また、Edelmanの言うreentryという概念は、双方向性の信号が"ほぼ同時に"相互伝達されるようなプロセスであった。したがって、Pasucual-Leoneが示した結果は、従来のfeedbackよりもreentryに近いタイミングだと言えるだろう。visual awarenessが生じるためには、V1とV5間のこのような短い時間的ラグがcriticalなようだ。

院生となり自分で実験デザインを考えるようになったが、これがなかなか難しい。どこから切り込んでいくか、実験パラメータをどのように設定するか、課題として何を選ぶか、などなど。実ところ、最適解はそう多くはないはずなのだが、先が見えないから、そこまでたどり着くのが大変なのだ。こういうシンプルながらも鮮やかな実験デザインをみると、自分も、と鼓舞されるところがある。

今日の音楽:Kettel/ Myam James Part 1(CD,Sending Orbs,2008)
何より、メロディが良い。そして、アレンジも完璧。控えめで抑制の効いたトラックは、梅雨の雨音にも良く合う、侘び寂びの効いた電子音楽だ。

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コメント

おひさしぶり。
大学にもどってどうですか?
いつもこのページのぞいて感心してます。
ヒトと動物では全然レベルがちがうね。
自分の勉強不足を反省します。
僕も、自分の実験テーマ考えないとなあ。

また、おいしいもの食べにいきましょう。


投稿: 高橋 雅 | 2008年6月 8日 (日) 15時01分

>雅くん
おお、お久しぶり!
また、学生に戻りました。大学に戻ってからは、悪戦苦闘の毎日だよ。実験は、まだまだ準備段階で、これからって感じだよ。ヒトだと、非侵襲的な方法でないと実験できないので、色々と条件が厳しい気がするよ。
近々、HT君とSO君なども誘って、ご飯にでも行こう!

投稿: わるねこ | 2008年6月 8日 (日) 15時09分

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