2008年1月23日 (水)

唯識

4月から院生になり、ラボや勤務地の都合上、立川在住ではちょっと距離的に辛いので、家探し。
大学にも近い荻窪に、「忍者屋敷」のような家があって、直感的にそこに決めた。
2部屋を合わせた通常の居住空間よりもロフトの方が1.5倍広いという、お得で風変わりな物件だった。
ちなみに荻窪には1年半くらい住んでたことがあって、おいしいカレー屋と蕎麦屋がそれぞれ少なくとも2件あること、「ひな菊」と「邪宗門」という僕が好きな喫茶店があることなどから、好きな街の一つだ。

最近、唯識関連の本をちょこちょこと読んでいる。

唯識というのは、4世紀頃のインドで現れた瑜伽行唯識学派によって唱えられた認識論的傾向を持つ思想体系のことだ(Wikipedia)。かのナーランダ(いつか行きたい)の古代の仏教大学では、主にこの唯識を研究していたのだそうな。宗派で言えば法相宗ということになって、日本では東大寺などが総本山となっている。

で、何で唯識かというと、それがそのまま「意識」を扱おうとしているから。その射程範囲は知覚、意識から無意識にまで及んでいる。そして、無意識の下に、個を超えた背景的な心的空間である阿頼耶識(あらやしき)を想定したのが、この唯識だ。読む前は、禅やヨガなどの体験を通じて一人称的な視点に基づいた内観的なアプローチかとたかをくくっていたら、実のところ、個々の体験だけを重視しているわけではなくて、おそらくは当時の東洋世界の最新かつ複雑な論理構成を下敷きに、個々の体験と理論の間を何度も行ったり来たりしているのだ。良い意味で予想を裏切られた。しかも、難解。ほとんど分からない。

現代の科学と哲学のタームとは、その作法は大分異なるけど、表層的な意識の本質を「識別」あるいは「差異化」などと指摘していたり、ある種の実体的な現象(読みようによっては物理的な現象とも読み取れる)と心的現象との関係について述べていたり、因果的関係では関係論的存在論(縁起)やネットワーク性なども持ち出していて(これは、仏教思想全般にあてはまること)、EdelmanやVarelaが言っていたような仮説と接続可能な部分もあり(僕がこういう箇所にばかり反応しているのにもよるが)、かなり興奮した。西洋哲学での唯心論とは全く異なる点に要注意。というのも、当初は、表面的には唯心論と同じように、まず「識」はあるけど外界の事物は存在しないという仮の主張から出発するのだが、最後には「識」そのものまで「空」に帰してしまうからだ。残るのは、実在性も中枢も書いた、「帝網」のようなネットワークの関係論的存在だけだという。

現時点では、オルタナティブであって、脳科学と直接的に接続するのは難しいと思うが、Mind and Life instituteのように、哲学の分野ではこういうアプローチも真剣に検討され始めている。

それにしても、このMind and Life instituteのメンバーに日本人が含まれていないのは、一体どういうことだろう?単に、欧米のエキソティシズムとくくってしまうことは出来ないような気もする。

井筒俊彦「東洋哲学覚書 意識の形而上学—『大乗起信論』の哲学」 (中公文庫BIBLIO)
大乗起信論は、唯識そのものでは無いようだが、仏教が「意識」をどう扱おうとしてきたのかという点を、必要な部分は現代思想のコンテクストで読み直すことによって、比較的明瞭かつ詳細に解説していて、意識の東洋思想的なアプローチに関連した本の中では、今のところ最も感じ入るところが大きかったものの一つ。

岡野守也「唯識と論理療法—仏教と心理療法・その統合と実践」(佼成出版社、2004)

横山 紘一 「唯識とは何か—『法相二巻抄』を読む 」(春秋社)

最近、読んだ論文。

Fan J, Byrne J, Worden MS, Guise KG, McCandliss BD, Fossella J, Posner MI.
The relation of brain oscillations to attentional networks.
Neurosci. 2007 Jun 6;27(23):6197-206.

attentionとoscillation関連の研究も、一時のピークを過ぎたかなあ、というのが最近の感想だ。

これは、矢印を使った比較的シンプルな刺激をもとに、alerting、orienting、executive controlという3つの異なるattentional stateを評価するための課題を行わせ、EEGで得られたデータをもとにERPおよびpower-spectrum analysis、source analysisを行ったという研究。source analysisに一工夫をこらしている。

frequencyドメインの解析は、頭皮レベルではなく、dipoleレベルで行っているのが一つ目の特徴だ。筆者らの主張によれば、この方法をとった方が解剖学的構造と機能との相関が強まるとのこと。また、同じグループが行った過去のf-MRI studyで 得られたデータをもとにして、dipole modeling(BESAを使用)にf-MRI basedのconstraintをかけているのが、二つ目の特徴。f-MRI basedでdipole modelingを行っても逆問題は完全には解決されないが、experimenter biasは小さくなり、ERP studyにおけるsource analysisの欠点を小さくするのが目的。

結果としては、、異なるattentitonal networkでは、それぞれ異なる周波数帯域と分布をもったoscillationのmodulationのパタンがみられる。
alertingでは250-400msでθ、α、β帯域のパワーの減少、orientingでは200msまでにγ帯域のパワーの増加、executive controlでは幾分複雑なmodulationのパタンを示している。

51r0wilu3ul_aa240_今日の音楽:Manual & Syntaks/Golden Sun(CD)
どこか知らない国の浜辺の夕暮れ時、辺りが黄金色に染まって、自分もその中に飲み込まれてしまい、時間の流れがただひたすらスローになっていくという、chill outのゼロポイントのような音景。では、どこの浜辺か?イビザでも、パンガンでも、ゴアでも、沖縄でもない。案外、伊豆とか和歌山とかかもしれない。

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2007年9月24日 (月)

Dysfunctional long-range coordinatin of neural activity during Gestal perception in Schizophreenia

Dsc_0068先週末は、1泊2日で槍ヶ岳に登ってきた。上高地インの槍沢ルート。金曜日の夜に沢渡駐車場に着き、ここで深夜まで車内で仮眠をとった。朝5時に安房トンネルのゲートが開き、5時過ぎに上高地に到着。そこから延々と12時間歩き続けた。槍沢ロッジまでは快調にとばし、だいたい5時間くらい。2泊3日のスケジュールだとここで1泊する。僕らは、そのまま歩き続け、その日のうちに槍ヶ岳山荘を目指した。しかし、槍沢ロッジからは延々と上り坂が続き、正直かなりしんどかった。特に、槍ヶ岳山荘が見えてから、4時間くらいかかってしまったかもしれない。標高3000m超に位置する槍ヶ岳山荘でのこの時期の気温は5〜6度で、とても寒い。天気予報のためか、槍ヶ岳山荘は比較的空いていて、一人一畳分のスペースを確保することができた。

Dsc_0113山荘では、登山客が二段ベッドに並んで睡眠をとる。しかし、いびきがうるさくて、僕は2〜3時間しか眠れなかった。翌朝は5時前に起床して、出発の準備を済ませておいた。食堂で軽く朝食をとった後、身軽な装備で頂上を目指す。頂上付近は鎖場(くさりば)でとても危ない。写真のような岩場を鎖やはしごをつたいながら、慎重に登ってゆく。身体を確保するためのはしごや鎖がポイント毎に設置されているので事故はそう多くはないようだ。しかし、標高3000m超ともなると、しばしばかなりの強風と雨にあおられるので、さすがに怖い。山荘からだいたい30分くらいで頂上に到着した。ここで、同行者とがっちりと握手。しかし、頂上は狭く、2、30人もいると、満員になるくらい。風が強くて、とても立っていられない。

Dsc_0091日頃の行いがよかったのか、頂上ではブロッケン現象を初めて体験した。頂上に30分くらいいて、そのまま下山。下山を開始した直後に雨が降り始め、その日は結局ずっと降ったり止んだり。雨の中クタクタの足でひたすら歩き続け、上高地まで9時間くらいかかってしまった。
今まで海外(ネパール、パキスタン)でトレッキングをしたことはあったけど、山荘に宿泊するような形での登山は今回が初めてだった。頂上にたどり着ける可能性は低いと思っていたのだけど、最後の難所を除いて意外にも快調に登ることができ、少し自信を深めた。それに、疲れよりも、山歩きの気持ち良さの方が強かった。


来週末から、ウズベキスタン、トルクメニスタンを旅してくる。
うーん、ちょっと遊び過ぎかもしれない。

明日は大学で抄読会。

MaxPlanck instituteのUhlhaasとSingerらが行った実験で、Schizophreniaでneural synchronizationの破綻していることを報告した論文を紹介する予定。

統合失調症では大規模なneural synchronizationが障害されていることについて述べ、近年の統合失調症の認知モデル(Fristonのdisconnection hypothesisとかAndreasenのCCTCCとか)との関連について述べる。最終的には、少しspeculativeに、Kraepelinの"loss of inner unity"とか、Bleulerの""loosening of association"などの精神病理学的モデルとつなげてみようと思う。

以下、そのメモ。

Uhlhaas PJ, Linden DE, Singer W, Haenschel C, Lindner M, Maurer K, Rodriguez E.
Dysfunctional long-range coordination of neural activity during Gestalt perception in schizophrenia.
J Neurosci. 2006 Aug 2;26(31):8168-75

Participants:フランクフルト大学の入院病棟または外来で募集された19人の統合失調症患者と19人の健常被験者

Task:Gestalt face perception

Visual stimuli:Mooney face(Rodiriguezらが使っていたやつ)
face conditionではupright Mooney faceを、no-face conditionでは、inverted versionを提示する。

Experimental procedure:1ブロックあたり88枚のMooney face(44枚はupright、44枚はinverted version)をランダムに提示し、顔を知覚したかどうか被験者にボタンを押して報告させる。計4ブロックを施行する。

Electrophysiological recording:63個の頭皮上の電極から脳波活動を記録した。spectral powerとphase valueを、15-80Hz(β〜γ帯域)、-800から1000msの区間で解析した。neural synchronyについては、phase dataからPhase locking value(PLV、Lachaux)を算出した。

結果:まずbehavioralには、統合失調症患者で顔認知の成績が低下し、反応時間も遅延しているのは従来の知見通りだ。

次にEEG dataであるが、spectral powerについては両群、条件間で有意な差はみられなかった。

両群で顕著な差が出現したのは、phase synchronizationだ。control群では、β帯域(10-30hz)で2つのピーク(1つ目は刺激提示後200ms、2つ目は400-600ms後)が出現しており、いずれもno-face conditionよりface conditionで増強した。
しかし、Schizophrenia群ではβ帯域の2つのピークは、control群よりも遅延していた。1つ目は350-400ms後に出現し、2つ目は600ms後に出現した。また、PLV値もcontrol群より低下していた。γ帯域(30-80Hz)では、control群ではみられなかったdesynchronization(脱同期)が200-280ms後に出現していた。

さらに、neural synchronizatitonのtopographyを解析したところ、control群ではface conditionで刺激提示後200msよりfrontal、temporal、parieto-occipitalに及ぶ広域のsynchronizationが出現しているのに対し、Schizophrenia群ではこのような広域の同期現象はみとめられなかった。

これらSchizophrenia群のPLV値は、PANSS上の症候学的プロフィールともよく相関していた。face conditionでPANSSのfactor positiveとの相関(P=0.04)がみられ、特に幻覚(p=0.01)と妄想(p=0.02)において強い相関が確認された。一方で、spectral powerとPANSSの各スコアとの間に有意な相関はみられなかった。また、PLV値とmedication dosageやonseとの間にも、有意な相関はみられなかった。

以上より、Schizophrenia患者では、Gestalt face perception課題下にEEGで記録されるβ帯域のneural synchronyが遷延かつ減弱しているだけでなく、synchronizationのmaintenanceも障害されていると結論づけられる。

Uhlhaasは、これらの結果を踏まえ、Schizphreniaの中核的な病理は、脳内の神経活動の広域の統合過程が障害されていることだ推測している。


ちなみに、先行研究としては、Harvard大学のSpencerらのグループがあげられる。彼らも同じくvisual Gestalt stimuliとEEGを用いてSchizophrenia患者のneural synchronizationを調べている。しかし、Spencerらの実験では主にγ帯域のsynchronizationが減弱し、これよりも低い周波数帯域のsynchronizationは比較的保たれていたという結果が得られており、Uhlhaasらの結果とは相反するものだ。Spencerらがresponseにlockさせて加算平均しているの対し、Uhlhaasらは従来通りstimuliにlockさせて加算平均していることが、両者の違いの一因かもしれない。

今日の音楽:Odd Nosdam"Burner"(CD)
Odd Nosdamは、Boards of canadaの"Dayvan cowboy"のremixをしていた音響エレクトロニカのアーティスト。

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2007年9月10日 (月)

brain oscillations and declaretive memory

最近は、1日1論文。

Osipova D, Takashima A, Oostenveld R, Fernández G, Maris E, Jensen O.Theta and gamma oscillations predict encoding and retrieval of declarative memory.J Neurosci. 2006 Jul 12;26(28):7523-31.

This study addressed the spatiotemporal pattern of oscillatory activities of the brain underlying the encoding and retrieval declarative memory.

The experimental paradigm consists of two different session. In the encoding session, 13 healthy participants were shown 120 photographs of either a building or a landscape. In retrieval session, participants are shown different set of 240 photographs which includes photographs shown in the former encoding session and newly shown photographs, and subsequently asked to judge whether the shown photograph had been shown previously in the encoding session or not. During the task(-0.5s to 1.0s after stimulus onset), their oscillatory brain activities were measured by a wholehead magnetoencephalography(151ch). All data analysis was performed using the FieldTrip toolbox on Matlab.
In result, successful encoding and retrieval of shown photographs were associated with gamma-band oscillations in bilateral occipital areas corresponding to BA 18/19 and theta-band oscillations in right temporal areas.This result indicates that spatio-temporal pattern of oscillatory activities predict performance of the declaretive memory task.
Interestingly,both gamma-band and theta-band oscillatory activities are suggested to play a role in encoding and maintenance of working memory.

This study also provides useful information about the experimental design of memory study using MEG.

最近観たDVD:「パフューム」 トム・ティクヴァ監督
悪臭に満ちたパリで生まれた天才調香師のものがたり。主人公の鬼才ぶりと狂気が何だかおそろしくて、構成も最後まで緊張感を保っており、けっこう面白かった。サヴァン的な匂いも感じた作品。

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2007年8月15日 (水)

theta/gamma phase coding

最近読んだ論文をメモ。

Lisman J.The theta/gamma discrete phase code occuring during the hippocampal phase precession may be a more general brain coding scheme.Hippocampus. 2005;15(7):913-22.

前置き:脳内には複数のfrequency rangeのoscillationsが走っていて、それぞれoscillationがcognitive processで異なる役割りを担っていると考えられている。しかし、その詳細はまだまだ不明な点が多い。
以前のエントリーで、「theta oscillationによるgamma oscillationのpowerがmodulateされる」というCanoltyの実験を紹介した。
また、ラットを使ったmulti-unit recordingでは、ラットの位置が変化するにつれてplace cellの発火のtheta phaseが、systematicなprogressionを示すことが知られている。これは、phase precessionと呼ばれ、oscillation(theta)のphaseが情報をcodeしているというダイレクトなエビデンスであるとみなされている。

最近、このようなoscillation関連の論文をいくつか読んでいて、oscillationとinformation codingについて少し気になっていたところで見つけたのがこの論文。

John Lismanは、これまでOle Jensenなんかと一緒にhippocampal oscillationとmemory encoding/retrievalの関係を調べた実験を色々とやっていて、この分野ではかなりの大御所のようだ。

Singeraこのreviewで、Lismanは、ラットのplace cellの発火が示すphace precessionのような振る舞いから、「gamma cycleにおけるphase自体は情報を担っておらず、theta cycleにおけるgamma subcycleの時間的関係が情報をcodeしている」と推測している。

つまり、gamma cycle内のexact timing自体は、脳のcoding strategyを考える上で重要ではないということだ。むしろ、gamma oscillationは複数のニューロン群のassembly formationを反映した神経活動のパタンとみなすべきである。その意味で、異なる情報は異なるニューロン群が生み出すgamma cycleによってrepresentされていると考えられる。

このgamma cycleは、いわゆるパケット式にひとまとまりの情報をcodeしていると考えられるが、そのphase自体に、少なくともラットの位置のような情報はcodeされていないということだ。むしろ、gamma oscillationと互いにカップリングしたtheta oscillationのcycleにおけるphaseが、個々のgamma cycleにtemporal orderを与え、sequentialな情報のcodingに寄与しているという。

ちなみに、ヒトがshort-term memoryに保持できるチャンクの数は7±2と言われているが、この数はtheta cycle(4-10Hz)内に含まれるgamma cycle(30-100Hz)の数に相当するのは興味深い。

まだまだエビデンスに乏しいけれど、このようなtheta/gamma coding strategyは、ラットの位置情報だけではなくて、海馬によるepisodic memoryのformation/recallにも関与しているのではないかと言われている。過去に、Jensenらは、theta oscillationとmemory encoding/retrievalとの関係をMEGを使って調べた実験を行っている。確かに、 episodic memoryは、個々の記憶の時間的なsequentialな関係の構築、再生と捉えることができそうではある。つまり、theta phaseがgamma cycleのphase refereceとして機能することにより、異なるassemblyによって担われる情報のsequentialなorderの構成に寄与しているのではないか、と推測されるのだ。今のところ、是非の判断はしようがないが、同じような意見は、確かBuzsaki本にもあった。

うーん、それにしても、日本語で書くのはむずかしい。

今日の音楽:HALCALI「サイボーグ俺達」(CD)
最近は、このCDくらいしか救いが無い。

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2007年7月16日 (月)

cross-frequency coupling

最近読んだ論文

Canolty RT, Edwards E, Dalal SS, Soltani M, Nagarajan SS, Kirsch HE, Berger MS, Barbaro NM, Knight RT.High gamma power is phase-locked to theta oscillations in human neocortex.Science. 2006 Sep 15;313(5793):1626-8.

僕たちが住む世界には、FMラジオ(例えば70MHz)、地上波TV(数十〜数百MHz)、Bluetooth(2.4GHz)などの異なる周波数の電磁波が飛び交っているが、脳内でも異なる周波数のoscillationが走っている。
しかし、世の中に飛び交う電磁波と脳内のoscillationが決定的に異なる特性が存在する。それは、脳内のoscillationは互いに相互作用しているということだ。

このようなoscillationのcross-frequencyなinteractionは、脳内の異なる領域の異なる認知的なプロセシングのmatching、couplingに寄与していると考えられている。

epilepsyで脳外科手術を受ける患者で、subdural electrocorticogram下で、theta(4-8Hz)帯域のoscillationとhigh gamma(80-150Hz)帯域のoscillationのcouplingを調べた実験。

詳細はさておき、結果としては

(1)high gammaのpowerは、theta phaseによってmodulateされる

(2)theta powerの増大は、theta-HG couplingの促進する

(3)theta/HG couplingは,task-dependentである

Schizophreniaでは、どうなっているのだろうか?


今日の音楽:Ulrich Schnauss/Good Bye(CD)
Ulrich Schnaussの新譜。前作よりもShoegazerぽさが増していて、聴きやすくなった印象。My Bloody Valentineみたいなトラックもある。

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2007年6月23日 (土)

absolute temporal coding

最近読んだ論文。久々に、neural synchrony関係。

Fries P, Nikolić D, Singer W.The gamma cycle.Trends Neurosci. 2007 Jun 5

neural oscillatory synchronizationとtemporal codingについてのspeculativeなreview。
よく分からない部分もあったが、取り急ぎ記憶用にメモ。

gamma-band synchronous oscillationは、neuronal networkのconnectivityやネットワークを構成するニューロンの細胞レベルでの電気生理学的なプロパティに基づいた、自律的もしくは創発的なイベントであると考えられている。実験室の環境では、薬理学的に孤立化させたinhibitory interneuron networkでは、synaptic inhibitionとgap junctionがintactである限り、gamma-band oscillationが自律的に発生することが知られている。ただし、自律的なのは、interneuron networkの電気的活動そのものではなくて、それが発生する特定のパタン、リズム(gamma帯域など)である。つまり、実際の生態的環境では、interneuronが生み出すgamma-band oscillationは、pyramidal cellの活動や、外界や身体からもたらされる皮質への興奮性入力と無関係ではない。特に、pyramidal cellのexcitatory driveは、gamma-band oscillationを「駆動」する主な動力源であるとみなされている。しかし、繰り返すようだが、ネットワーク内にrhythmicなoscillationを発生させるために、pyramidal cellからの入力が必ずしもrhythmicである必要はない。

gamma-band oscillationについては、このブログでもこれまで色々と書いてきたけど、正直言ってまだまだ分かっていないことが沢山ある。

gamma-band synchnonous oscillationは、これまでworking memoryの保持、attentional selection
、sensory bindingなどの様々な機能との関連が報告されている。しかし、実際のところ、どれが最も根本的な帰納なのか、あるいはその詳しい原理については不明のままだ。

また、皮質のneuronal networkの大部分(約80%)は、excitatory pyramidal cellから構成されている。しかし、pyramidal cellのexcitatory driveとinterneuronのinteractiveなinhibitionとの相互作用が、脳の情報生成過程にどのように関わっているのかについても、はっきりしたことは分かっていない。

さらに、ニューロンのスパイクは、振幅と位相という二つの成分をもつが、ニューロンもしくはネットワークで、これらの異なる成分がどのように処理されているのかについても、はっきりしたことは分かっていない。

多分、ここに挙げた未解明の諸問題は、脳における情報の符号化の問題の中でも中核的な問題だと思う。

最近の神経生理学的実験では、pyramidal cellの活動とinterneuronの活動との関係が少しずつ明らかになってきた。すなわち、interneuronは、pyramidal cellよりもほんの少しだけ(数ミリ秒程度)遅れて発火していることが確認されたのである。何でもないズレのようだが、意外にもこの数ミリ秒のズレがとても重要らしい。

Pascal Friesは、このズレを次のように解釈している。

外界や身体からもたらされる興奮性の入力は、皮質のinterneuron networkにrhythmic inhibitionを発生させ、local networkに抑制をかける。pyramidal cellは、このrhythmic inhibitionが弱まる
ある一定のtime windowの間だけ、興奮性入力に反応することができる。一方で、pyramidal cellは、interneuronを駆動させる主要な源でもあるので、pyramidal neuronが興奮性入力に反応して活動すると、しばらく遅れてinterneuron群も活動すると考えられる。最終的には、network全体にinhibitionがかかり、oscillationは収束する。

このようなプロセスを通して、pyramidal cellとinterneuronとが互いに連携することによって、gamma-band oscillationのcycleを生み出している。

Pascal Friesは、さらに突っ込んで、temporal codingに関する新しい仮説を提唱している。

上で書いたように、interneuron networkは、oscillatory activityを通して、pyramidal cellに対して、rhythmicalなinhibitionをかけ続けている。そうなると、pyramidal cellは、interneuronによるinhibitionの強度が小さくなったときにだけ、発火することができる。このような状況下でも、pyramidal cellへのexcitatory inputの強度が大きいと、oscillatory inhibitionの1サイクルの中で、pyramidal neuronが閾値を超えて発火する確率は高まる。これを時間的にみれば、excitatory inputの強度が大きければ大きい程、interneuronのoscillatory inhibitionの各サイクルの中で、pyramidal cellは「早く」発火する傾向を示すと推定される。
また、pyramidal cellへの興奮性入力が小さい場合には、oscillatory inhibitionにうちかつことができず、結果的にそのサイクルの中では一度も発火できないで終わってしまう。つまり、"winner take all"の法則が成り立つ。

このプロセスが示す重要な点は、「pyramidal cellの興奮性の神経活動の強さ(振幅成分)が、oscillationの各サイクルにおける時間的な情報(位相成分)に転換(converted)される」、ということである。

実際に、このようなtemporal codingを示唆する知見がある。
ラットの海馬では、"theta-phase precession"(シータ帯域の位相の前進現象)というのが知られている。海馬のpyramidal cellは、ほとんどがplace cellとしての特性をそなえているらしく、個々のpyramidal cellは、固有の"place fields"をもつ。ラットが特定の場所に移動し始めると、特定のニューロンはθ帯域のoscillationにphase-lockされる。特定の場所に近づけば近づく程、ニューロンの発火はリズミカルになり、さらにθ帯域のoscillationのサイクルの中で、段々と早く発火するようになる。
つまり、あるニューロンにおいて、入力される刺激の強度と、oscillationのサイクルにおけるニューロンの発火イベントの位相との間に、一定の関係がみとめられるのである。

まとめると、外界や身体からもたらされる興奮性の入力と、これに反応するpyramidal cellの発火がたどる運命は、自身が埋め込まれたネットワークで発生するgamma oscillationとの時間的な関係によって決定づけられる。このような観点からすれば、inhibitory interneuronが発生するgamma osicillationは、pyramidal cellの神経活動にとっての"reference frame"として機能しているのかもしれない。

また、このような原理の導入は、脳内の神経活動の経済性という観点から考えても、リーズナブルであろう。

以下、個人的に考えたこと。

もしも、本当にneuronal networkが、このような原理によって振幅成分を位相成分に変換するという、"absolute"なtemporal codingをやってのけているのであれば、脳内で刻々と生成する情報現象の根本的な構成要素は、ニューロンの発火活動の時間的な成分(phase)ということになる。また、脳内のニューロンの発火活動が、ひとまとまりの情報として成立するためには、ある一定のtime windowが必要ということにもなる。

今日の音楽:Blast Head " Outdoor"(CD)
日本人のクリエーター2人組による新作。これは、またすごい内容。タイトルはアウトドア。でも、実際に音を聴いていると、全然開放的じゃなくて、むしろ内に内に深く潜っていくという、タイトルとは逆説的に内向的な印象を受けた。アウトドアで言えば、キャンプや、登山、海というよりも、もっと精神性の高いバックパッキングのような匂いがする。ちなみに、バックパッキングとは、生活に最低限必要な一式を全て詰め込んだバックパックを担いで、地図を頼りに徒歩だけで山野をめぐり、夜は山の中の適当なところで野営するという、ヒッピー全盛期の1960年代のアメリカで提唱された山歩きのスタイル。僕も、いつかやってみたいのだけど、なかなか時間が無いし、その勇気も無い。でも、夜中に山の中でこれを聴いたら、すごいだろうなあ。

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2007年3月27日 (火)

最近

Dsc_0025先々週に泊まった、萱の家という温泉はこんな感じ。着いたときは、雪が舞っていてまだ寒かったけど、夜は星空がきれいだったなあ。
帰ってきたら思いの外に忙しくて、しばらく頭はフリーズしていた。

とりあえず、研究会での発表は無事に(?)終えた。やりたいことを分かってもらえただろうか?

さっき読んだ論文。

Ward LM, Doesburg SM, Kitajo K, MacLean SE, Roggeveen AB.eural synchrony in stochastic resonance, attention, and consciousness. Can J Exp Psychol. 2006 Dec;60(4):319-26.

synchronous oscillationに関するレビュー。Wardは、カナダの心理学者で、Binocular rivalryなんかでconsciousness関連の実験もやっていてよく名前を目にする。
Stochastice resonanceというのは、外的刺激によって惹起される神経活動そのものよりも、これに一定のノイズを加えた方が、知覚にのぼるための閾値を超える確率が増すという仮説。このノイズは大き過ぎると逆に知覚処理のコントラストを下げてしまうので、適切な範囲になければならない。Wardの言うnoiseは、むしろfluctuationといった方がよいかもしれない。

今日の音楽:Jorge Drexler"12 segundos de oscuridad"(CD)
映画"motorcycle diaries"で主題歌を歌っていたチリ(だったか)のシンガーソングライターの新作。最近の気に入り。

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2007年2月 9日 (金)

attentional modulation of neural synchrony

最近読んだ論文。

Fries P, Reynolds JH, Rorie AE, Desimone R.
Modulation of oscillatory neuronal synchronization by selective visual attention.
Science. 2001 Feb 23;291(5508):1560-3.


僕たちが随意的に何かに視線を向けたとき、それに対応した神経活動パタンの変化が視覚野にみられるように、脳内の神経活動という物理現象も意識あるいは自由意志によって何らかの影響を受けているようにみえる。このような神経活動のtop-down modulationはどのようなメカニズムで実現するのだろうか?

注意は、このようなtop-down modulationの代表的存在だ。注意とは、雑多な刺激群の中からrelevantなものだけを選択し、これを増強することである。注意のネットワークレベルでのメカニズムを解明することは、top-down modulationの解明にも大きく貢献すると考えられる。ひいては、意識や自由意志の問題にも関わるものだ。

この実験は、neural synchronyのattentionによるtop-down modulationの証拠を提示したもの。
マカクザルのV4に電極を埋め込み、spikeとLFPを同時に記録した。受容野内(with attention)と受容野外(without attention)という2つの条件下の視覚刺激を与えた際の神経活動の時間的パタン(firig rate、VEP、synchrony)を解析した。受容野内外の刺激に対する神経活動を比較することで、attentionが神経活動に与える影響を調べることができる。

結果としては、attentionによってsynchronous oscillationsのlow-frequency成分が減少し、high-frequency成分(gamma range)が増加することが分かった。一方で、firing rateはattentionによって一定したパタンのmodulationはみられなかった。

また、neural synchronyのattentional modulationは約100ms以内に出現するのに対して、firing rateのattentional modulationは420ms後になってやっと認められた。

synchronous oscillationのenhancementは、脳幹を電気刺激してawarenessを上げた場合にもみられる。この場合は、おそらくコリン作動性ニューロンによる影響が大きいと考えられている。awarenessと同じように、脳幹が関与するattentionもまたsynchronous oscillationをenhanceするという事実は興味深い。

この実験は、注意のメカニズムがneural synchronyを介していると言っている訳ではない。むしろ重要なことは、注意によるtop-down modulation(あるいはdownward causation)が、firing rateなどの低いオーダーの神経活動においてではなく、それよりもワンオーダー上のneural synchornyのレベルで実現しているということだ。
ちなみに、意識はneural synchronyよりもさらに上のオーダーで実現していると僕は考えている。

今日の音楽:unknown track/Boards of Canada
ネットで色々と探していたら、boards of canadaのライブ音源を発見。早く来日しないかな。

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2006年12月 5日 (火)

メモ

今日は大学の神経心理研究会の忘年会。何だか萎縮してしまった。

最近読んだ論文をメモ。neural oscillation関連。

Tallon-Baudry C, Bertrand O, Henaff MA, Isnard J, Fischer C.Attention modulates gamma-band oscillations differently in the human lateral occipital cortex and fusiform gyrus.Cereb Cortex. 2005 May;15(5):654-62. Epub 2004 Sep 15.

ヒト(てんかん患者)のintracranial recodingで、主にventral visual pathwayのlateral occipital(LO)、fusiform gyrus(FG)に電極を挿入し、視覚刺激を用いた課題下におけるgamma-bandのoscillationを測定した実験。注意によって、gamma oscillatory responseがmodulateされることを示している。しかし、これまでに予想されているよりも複雑なパタンであり、また同じventral visual pathwayを構成するLOとFGとでは、modulationのdirectionが異なっていた。Tallon-Baudryは、oscillationによるstimulus encodingは、現在考えているような複数の領域にまたがるdistributedなassembly codingというよりも、localでfunctionaly segregatedなのではないか、という推測を立てている。neural oscillatory communicationによる異なるprocessingのintegrationも大事だが、こういうlocalizationの話も把握しておかないと駄目だろう。面白いのは、この実験のintracranial recordingではscalp EEGなどで計測されている30-50Hzというlower-gamma responseだけでなく、より速い100Hzくらいまでのfast-gamma oscillationも記録されているということ。scalp EEGでは頭皮を介するためにfast gammaが拾えないのか、それともより広範囲のinteractionを反映しており、lower-gammaだけが測定されるのか。


Canolty RT, Edwards E, Dalal SS, Soltani M, Nagarajan SS, Kirsch HE, Berger MS, Barbaro NM, Knight RT.High gamma power is phase-locked to theta oscillations in human neocortex.Science. 2006 Sep 15;313(5793):1626-8.

昨日メモした論文とも関連する内容だが、こちらは未読で一応メモ。θ(4-8Hz)とfast-gamma(80-150Hz)とのtransientなcross frequency couplingがあり、taskによってmodulateされるとのこと。Pubmedのrelated articleの機能はときに意外な論文が出してきて、結構役立っている。

雑念。EEGやMEG、あるいはcell recordingなどのスパイク記録の解析のためには、cross-correlationとかunitary eventなどのmethodをしっかり把握しておかなければいけないらしいのだが、この辺りを全く無視して論文を読むのはちょっと厳しいのでは、と感じるようになってきた。この辺りは独学では厳しく、うーん・・誰かに道標だけでも与えてもらいたいのが正直なところ。統計解析や確率の知識もほぼゼロだし。Lachauxらのphase synchronyの解析モデルも前提からしてよく分かんない。また、MATLABなどの計算ソフトをある程度まで使いこなせる必要があるらしいのだが、とりあえずゆっくりと勉強してみよう。

今日の音楽:Fishmans"Long Season"(CD)
僕の数少ない音楽体験と言えば、Fishmansの"Long Season"を何年か前の最後のライブで聴いた(体験した)ときくらいなもの。既に記憶は美化されているかもしれないが、噂に違わず余りに心地よくて寝て(意識障害)しまった。

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2006年12月 3日 (日)

最近読んだ論文。neural synchrony関連。

Langheim FJ, Leuthold AC, Georgopoulos AP.Synchronous dynamic brain networks revealed by magnetoencephalography. Proc Natl Acad Sci U S A. 2006 Jan 10;103(2):455-9. Epub 2005 Dec 30.

MEGで脳のnetworkのsynchrous couplingを調べた研究。248個のgradiometerから一対のgradiometerを選択し、これら全ての組み合わせでpartial cross-correlation(PCC)をとり、synchronous couplingの強度を計算したというシンプルな研究。248x247/2通り、つまり30628通りの組み合わせのgradiometer対でPCCを計算しているので、力技といった印象だ。しかし、結果的には脳のダイナミックなconnectivityが見事に視覚化されており、とても興味深い。PNAS論文でfree accessなので、暇なときにざっと眺めてみるとよく分かると思う。positiveなcorrelationは近傍のgradiometer間で顕著であり、これとは逆にnegativeなcorrelation(これは、必ずしもinhibitory connectionとイコールではないことに注意)は、よりlong-rangeに渡って分布する傾向。

Palva JM, Palva S, Kaila K.Phase synchrony among neuronal oscillations in the human cortex. J Neurosci. 2005 Apr 13;25(15):3962-72.

oscillationのsynchronizationは、同一の周波数帯域(例えばα-α synchronization)だけではなく、周波数帯域をまたいだsynchronizationも理論的には可能である。例えば、α帯域の(10Hz)oscillationとγ帯域(30Hz)のoscillationは、1:3のサイクルで同期することが可能であるといったように。limit-cycle型のoscillatorでは、いくつかのパラメーターがとる値次第でoscillationの周波数比は決定される。これは、n:m synchronizationあるいは、cross-frequency sychronizationと呼ばれる。これまで、ヒトの脳のoscillationでもn:m synchronizationが存在すると予想されてはいたものの(例えばSingerらによって)、ダイレクトなエビデンスは存在しなかった。この論文は、これまたMEGを用いてヒトの脳でもn:m synchronizationが存在することと、その機能的な重要性を初めて示した研究であり、重要だと思われる。実験では、当然ながら同一の周波数帯域のsynchronizationもみられたが、1:2(α-β)および1:3(α-γ)のcross-frequency synchronizationも確認された。特に右半球に顕著であったα-γ synchronizationではarithmetric taskによるtask effect(taskによるenhancement、taskの難易度が上がるとenhancementも強まる)もみられ、attentionやworking memoryに関与していると推測されるが、神経心理学的な知見との一致も興味深い。

もう一つメモ。
最近は、僕のルーツの少なくとも半分を占めている徳島県木屋平村(こやだいらむら)の資料を取り寄せ、色々と調べている。木屋平村は四国山地の奥深くのコアに位置し、修験道も盛んな剣山(つるぎさん)がある村で、近くには日本三大秘境の一つに数えられた祖谷のかずら橋などもある。山の中に住居が埋もれるように点在しており、集落を形成しているところもいくつかある。動物が多く、僕のおじいちゃんの家の屋根裏には「ももんが」が住んでいて、地元の人は「もも」と呼んでいた。 近年は挙家離村が相次ぎ、廃墟が多い過疎村となってしまった。村の盟主であり阿波忌部氏直径の流れをくむ三木家(この家から三木首相が出た)が1000年以上も前から代々の天皇に献上している「あら衣」や、平家の落人伝説などが有名で、これらを村の誇りとしていんだと思う。そういえば僕のおじいちゃんの家の近くにも、平家の馬場や首塚などがあった。残念ながら、僕のルーツにまつわるであろう資料は明治時代の火災で全て消失してしまったという記載があり、想像をふくらませるしかない。

今日の音楽:Medeline Bell"That's what friends are for"(LP)
昔、買ったオリジナル盤。タイトル曲がよい。

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2006年11月24日 (金)

Network Memory

最近うれしかったのは、なかなか行くことができず、いつの間にか休業していた武蔵小金井のカレー屋「プーさん」が復活したこと。これから、ちょくちょくと訪れることになりそう。

最近読んだ論文。

Joaquin M. Fuster.Network Memory:TINS Vol.20,No10;451-459,1997

以前紹介したBasarの論文でも引用されていた1997年の論文。
Fusterは、脳の局在化された構造による表象ではなく、ネットワークの特性として記憶を捉えようとしている。また、記憶は階層性hyerarchyをもっており、単純な運動や知覚のカテゴリーなども"phyletic memory"として捉え、neural oscillationsやsynchronizationなどのコーディングで一元化しようとする試みである。面白いし、極めて「まっとう」なことを言っていると思う。
ある記憶のretrievalに動員される皮質のニューロン群は、類似した刺激の知覚に動員されるニューロン群と一定程度までは重複している可能性が高い。この意味では、記憶のretrievalとconscious perceptionとの間でattentional blinkのようなネットワークの競合現象が起きるのかどうかが気になる。ただし、対応する神経活動のoriginとしては、前者はprefrontalが主導的で、後者はどちらかというとoccipitalやparietalなどのposteriorが主導的だと思われ、それぞれの伝播方向は逆向きに近いのかもしれない。それならばむしろ、retrievalがconscious perceptionをfacilitateするのかどうか。short-term memoryのretentionがconscious perceptionにバイアスをかける、という現象はいかにもありそうだけど。その辺り、single unit studyやEEG/MEGなどで、firing rateやoscillationとの関連を調べた研究はありそうだ、などとブツブツ考えていたら、次のような論文が。

Nacher V, Ojeda S, Cadarso-Suarez C, Roca-Pardinas J, Acuna C.Neural correlates of memory retrieval in the prefrontal cortex.Eur J Neurosci. 2006 Aug;24(3):925-36.

Naghavi HR, Nyberg L.Common fronto-parietal activity in attention, memory, and consciousness: shared demands on integration? Conscious Cogn. 2005 Jun;14(2):390-425. Epub 2004 Dec 8.

あと、僕自身としては、最後まで機能局在的な観点は残るという意味で今後も神経心理学的な手法は一定の有効性を持ち続けると思っているし、神経生理学的なsingle unit studyなども有用だと思う。しかし、脳の何処そこに記憶が刻まれているということではなく、異なる構造特性をもつサブネットワークからなる脳のネットワーク全体をoscillationがどのように伝播・反響していくかという時空間的パタンとして捉えられるのではないかと思う。意識や注意との関連が深いshort-term memoryについては、このような理論化もときどきみかけるようになった。この辺りはもっと計算論的に表現したいのだけど、もっと勉強が必要だ。

今日の音楽:Flaming Lips"Yoshimi Battles The Pink Robots"(CD)
10年前に心底好きだったアメリカのロックバンド。"Clounds taste metallic"というアルバムの数曲は、頭の中だけで全部再現できるようになるくらい何度も聴いた。ソフトサイケな音で、子供の声のようなボーカルと相まって、ちょっとはかない。ふわふわと漂うな印象は、他のバンドには絶対に出せない。ギターの音自体はとんでもない轟音だったりするのに、何故か幸せな気分になる。久しぶりに最近の作品を聴いてみたら、今でもやっぱり好きだった。彼らの音も自分の好みも変わらないんだな、と何だか安心した次第。

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2006年11月19日 (日)

oscillation and synchronization

Buzsakiのoscillationに関する良いレビュー(Buzsaki、Science 2003)を読んだので、oscillationとsynchronizationについて徒然に書きとめておこう。
ただし、オリジナルな考察でも何でもなく、以下全ては既に誰かが言っていることなのであしからず。

個々のニューロンあるいはneuronal assembliesは、それぞれ固有のpreferred frequency rangeをもっている。つまり、band-pass filteringの機能を特性としてそなえているということで、これがinforamtionのfilteringに一役かっているのではないか(Buzsaki)。また、oscillationのphase-relationshipもfilteringに寄与しているだろう。たとえば、pyramidal cellのmembrane potentalは閾値以下でfluctuateしているので、刺激が到達した時点でのmembrane potentialの値によって発火する確率は変化する。また、海馬ではθ帯域のoscillationのピークに一致させて連続刺激を与えると、LTPがもたらされるが、out-of-phaseの連続刺激では逆にsynaptic strengthが弱められてしまうという(Huerta、1995)。ニューロンのpreferred frequency rangeは、membrane conductanceや、voltage-gated currentsなどの様々なパラメータによって調節されていると考えられる。また、ネットワークレベルでは、広範囲のinhibitory interneuronによってチューニングされている可能性が高い。
ちなみに、最近少しだけ読んだ"Synchronization"という成書によると、transientでreflexibleなsynchronizationが起こるためには個々のoscillatorの連結couplingの強度が強過ぎても弱過ぎても駄目で、「適度」な強さの連結が必要であるという。このように互いに「適度」な強さで連結したシステムでは、frequencyがそれぞれ異なっていても複数のサイクルを経て引き込みが生じることにより、結果的にsynchronizationが生じるのである。振動子間の連結が強過ぎると、synchronizationは生じるものの、完全にphase-lockedされてしまい、そこから逸脱することが無く、柔軟性を欠く。弱過ぎると、synchronization自体が起こらない。この意味で、synchronizationは、attractorというよりは"quasi-attractor"であって、ニューロンのネットワークは"metastable"な状態を保っているのだと考えられる。この辺りの微妙な事情を、BresslerやKelsoは"relative coordination"(相対的な共調性)と表現し、Basarらとともに数理モデルを考案している。
しかし、ネットワークレベルのoscillationが生じるためには必ずしも個々のニューロンがoscillatorである必要はない可能性もある。たとえば、個々はnon-oscillatingである類似のタイプのpyramidal cellを複数個つなげてみると、oscillationが不可避的に生じるという報告(Reys AD 2003)がある。このような点から考えると、マクロなoscillationやsynchronizationもネットワーク特性として、ある意味では決定論的に生じているのかもしれない。これらは上記のパラメータによって調節されているのだろうが、この辺りの詳細はまだまだ明らかにされていない。いずれにせよ、synchronizationは、分散したニューロンのダイナミックなclusteringをもたらし、機能的にはcoincidence detectionやfeature bindingに関与しているのだろう。

今日の音楽:Manual"Bajamar"(CD)
また、いい音みつけた。

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2006年11月14日 (火)

Modulation of long-range neural synchrony reflects temporal limitations of visual attention in humans.

大分寒くなってきた。
年末年始の予定がほぼ決まる。
年末は元旦まで仕事、年始は徳島に帰省する予定。猫に会うのが楽しみ。
また、1月の3連休には高野山と熊野詣でに行くことも決定。

Gross J, Schmitz F, Schnitzler I, Kessler K, Shapiro K, Hommel B,Schnitzler A.
Modulation of long-range neural synchrony reflects temporal limitations of visual attention in humans.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2004 Aug 31;101(35):13050-5. Epub 2004 Aug 24

前回紹介した論文とも関連する内容なので、メモ。

この論文は、attentional blink(AB)を引き起こす連続刺激下でneural synchronyのspatio-temporal patternをMEGで測定することにより、attentionとlong-range β-band neural synchronyとの関連を示した実験。

この実験では、7Hzの頻度で5つのdistractorと2つのtarget(文字刺激)が与えられ、2つのtargetを知覚したかどうか被験者に報告させた(RSVP)。

結果的には、
(1)targetが知覚された場合のみ、13〜18HZ(β帯域)のtarget-related activityが約400ms後に出現した。

(2)no-AB condition(ABを生じず、二つのtargetがともに知覚された場合)で得られたデータから、28パターンのconnectionにおいて、synchronization index(SI:異なるregionのpahse couplingを定量化する指標。値は0〜1の間をとり、0のときはno phase locking、1のときはperfect pahse locking)を解析したところ、以下の二つの異なるconnectionのタイプに分けれれた。

type A;stimulus-related connection:146ms毎の類似した波形のピークがみられるパターン。この時間間隔は7Hzの頻度でstimulusを与えたことに対応している。それぞれの波形はstimulusあるいはtargetの種類によらず、ほぼ同じパターンを示しており、targetとstimulusが類似したprocessingを受けていることをs示唆している。
type B;target-related connection:292msのずれをもつ2つのピークがみられるパターンで、この時間間隔は2つのtargetの間隔に相当する。stimulusによるSIのmodulationはみられず、targetによるSIのmodulationのみみられた。これは、2つのtargetのprocessingを反映しているものと考えられる。

さらに、type Aとtype Bはそれぞれ異なる空間的分布パターンを示していた。type A(stimulus-related network)ではoccipital corexとleft hemisphreとで強い結合がみられ、type B(target-related network)ではright posterior parietalと、cingulum、left temporal、left frotal regionとの間で強い結合がみられた。

(3)AB conditionとno-AB conditionで、target-related networkのtemporal dynamicsをトライアル毎に加算平均して解析したところ、総じてno-AB conditionではAB conditionよりも強いSI値を記録した。また、targetの前後に特徴的なdesynchronizationがみられ、その程度はdual-target(no-AB)>dual-target(AB)>only distractorの順に顕著であった。ABでもno-ABでも、first targetの前に強いdesynchronizationが出現し、distractor processingのsupressionを反映しているものと予想された。no-AB conditionでは second targetの意識的な知覚に対応して強いsynchronizationが再出現したのに対して、AB-conditionのsecond targetに対してはno-AB conditionに比べて弱いdesynchronizationが記録された。
このような結果から、synchronizationおよびdesynchronizationのパターンは、ABとno-ABという異なるattentional states(second targetに対するattention)とbehavioral outputs(second targetを知覚したかどうか)を反映しているものと予想された。

以上のような結果から、β帯域のsynchronizationおよびdesynchronizationの異なる時空間的パターンが、AB課題におけるsecond taregetの知覚、非知覚という二つのbehavioral outputを決定しているものと考えられる。target processingのenhancementとsupressionに寄与するという意味で、β帯域のneural synchronyは、我々がattention(この実験ではattentional blink課題下のvisual attention)と呼ぶ認知機能に重要な役割りを担っていることが示唆された。

ちなみに、Whittingtonらが行ったシミュレーションでも、γ帯域のneural synchronyはどちらかというとlocal processingに適しており、widely distributed networkのinteractionにはβ帯域のneural synchronyの方が効率的であることが示されているようだ。複数の周波数帯域のsynchronous oscillationが脳の異なる領域のcommunicatioの方略であるかもしれない、ということは最近よく言及されていること。pathologicなoscillationが、意識や認知、運動のabnormal stateに関連しているという論文は無数にある。僕の興味のあるところでは、HarvardのSpencerらの研究でSchizophreniaの症状プロフィールとの相関が確認されていたり、Parkinson病でもtremorとか、dystoniaなどの不随意運動とoscillation周波数とのダイレクトな相関が確認されている。

最近の映画「猫に裁かれる人たち」
そのタイトル通り、人間が猫に裁かれるという内容。チェコのとある村にサーカス団とともに不思議な能力をもった猫が現れ、この猫に睨まれると、赤(真の恋人)、灰色(泥棒)、紫(差別主義者)、黄色(浮気者)と色分けされてしまうというエキセントリックな映画だった。ちなみに、子供たちだけはこの「色分け」を免れるのだけれども、猫が色分けされた大人たちに殺されかけてしまうことから、大人たちに反乱を起こす。
猫映画では、1970年代の「スペースキャット」という映画もあり、これも観てみたい。

今日の音楽:竹村延和/Child's View(LP)
大学時代によく聴いた。Childiscになってから余り追わなくなったけど、竹村のストイックなスタンスには憧れるところがあったなあ。

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2006年8月 3日 (木)

Intersubject synchronization of cortical activity during natural vision

最近読んだ論文をメモ。

Hasson U, Nir Y, Levy I, Fuhrmann G, Malach R.I:1634-40.Intersubject synchronization of cortical activity during natural vision.Science. 2004 Mar 12;303(5664)

Pooneilさんのところで見つけたイスラエル人のf-MRI-studyのなかなか面白いscience論文。"intersubject synchronization"という言葉が凄い。

5人の被験者のそれぞれに同一の映画("The good,the bad, and the ugly"という1966年の古い映画。どうやら西部劇らしいらしいが、僕は観たことはない。)を見せたとき、同一個体の脳内の複数の領域の活動に相関関係(inter-region synchronization)が認められた。さらに、5任の被験者の皮質活動のspatio-temporal patternの間にも、高度な相関関係(intersubject synchronization)が認められ、そのような相関関係は視覚野のみならず聴覚野や連合野などにも広く認められた。
また、ある被験者のvoxel-baseの活動パタンのタイムコースが、別の被験者の皮質の活動パタンを有意なpredictorとなること(intersubject correlation)が確認された。さらに、面白いのは被験者の皮質の活動パタンから、映画のシーンの特定の属性を逆推測することが可能であった(reverse correlation)。このreverse correlationで得られたマッピングは、conventionalな皮質のマッピング構造と類似していたという。例えば、mid-central sulcusで得られた活動パタンのタイムコースの一区間から16個のsaliencyを選び出し、それらに時間的に対応した映画のシーンを調べてみると、16個中15個までがデリケートな手の運動を伴うシーンであったというような・・。また、fujiform gyrusは「顔」がクローズアップされるシーン、collateral sulcusは「建物」が出てくるシーンなどに選択的であった。

所見。この論文が単純でpre-determinedな課題や刺激を用いていたらそれほど面白い結果にはならなかっただろう。しかし、ダイナミックで複雑なnatural visionに曝されたときにも複数の脳の少なくともある一定の領域が同様の活動パタンを示す(intersubject synchronization)という結果は、よくよく考えてみると当然予想されることながら、こういうデータとして示されると新鮮だった。僕たちが同じ映画を観ているとき、少なくとも「脳」は同じものを「みている」ということになる。Hassonの考えたreverse correlationで言えば、脳の活動パタンから世界のある部分を再構築することがすることがあながち不可能ではないのかもしれないなどと考えてしまう。今後spontaneous activityとか、resting stateとか、こういうfree viewingのデータは増えてくるだろう。

今日からしばらく、KelsoとBresslerの論文を読み込む予定。最近読んでいたBasarとか、Hakenの論文の流れで。

今日の音楽:手嶌葵「テルーの唄」
外伝以外は全部読んだ。主題歌はいい。ただし、映画は原作とは全くの別もの。

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2006年5月 4日 (木)

GW

GWは3日〜6日朝まで勤務。
去年は新島に行ってひたすら海辺で音楽を聴いてたのだが、今年はほとんど病院で過ごすことになりそうだ。

そんな中、最近読んだ論文をメモ。
John ER.From synchronous neuronal discharges to subjective awareness?Prog Brain Res. 2005;150:143-71.

主観的体験(特に意識)と相関する神経活動のパタン(特にneural synchronous activity)についての概説。生理学や解剖学、機能画像のデータなどと合わせて紹介されている。色んなことがゴタゴタと書かれていて、内容が濃いのか、それともまとまらないだけなのか分かりにくいreview。

その中でも興味深いのは、"microstate"または"perceptual frame"という概念。いくつかの実験結果から単一の知覚シーンが神経活動のパタン上では75〜100msという特定の時間の厚みの中で不連続に構成されており、これはthalamo-cortical systemにおけるsequentialでepisodicなsynchronous oscillatIonに対応すると考えられている。著者も引用しているが、この辺りはEdelmanの"Remembered present"に非常に近い。このような同期した神経活動のパタンがsensory bindingに関与していることはSingerらによって既に示されている。同期した神経活動のパタンの形成には何らかの同期検出(coincidence detection)の機序が必要となるが、これには皮質のlayer Iのpyramidal cellなどが関与していることが示唆されており、コンピュータを用いたシュミレーションの報告も多い。さらに、著者はcoincidence detectionが脳内のspontaneous activityや異なる知覚刺激から同一の刺激を検出するフィルターの機能を果たしていると考えているようだ。thalamo-cortical systemの神経活動のパタンは80msのオーダーで次々と別のmicrostateを遷移していくと考えられるわけだが、chronic Schizophrenic patientでEEGを測定したところ、このmicrostateが短縮していたというような報告(Streletz,2003)もあって、興味深い。また、Schizophreniaでは、しばしば知覚刺激が断片化しているというような訴えや知覚の過剰に氾濫しているという訴えがみられ、極端になるとあたかも思考プロセスが混線停止したかのような精神運動制止を示すのだが、このようなsendory gating deficitの病理と考え合わせてみても興味深い内容。

今日の音楽:DJ Marky &XRS"Butterfly/The Wizard EP"(i tunes music storeでダウンロード)
秀逸なブラジリアンDrumn'Bass。過激。

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2006年5月 2日 (火)

Dynamics of thalamo-cortical network oscillations

僕が住む官舎は以前沼地だったため、蚊が大量に発生する。今年は早くも蚊が発生し、蚊取り線香が欠かせなくなった。何とはなく懐かしい匂いで、嫌いじゃない。


最近読んだ論文。thalamo-cortical oscillationの総説。僕は実際に実験をやっているわけではないので、こういうreviewばかり読んでしまう。実験をやっている人が読むともっと面白いんだろう。

Ribary U.Dynamics of thalamo-cortical network oscillations and human perception. Prog Brain Res. 2005;150:127-42.

この論文では、thalamo-cortical systemにおけるgamma band oscillationの生成機構と、いくつかの認知プロセス(特にsensory binding)との相関について解説。single cell levelではgamma band oscillationは皮質のinhibitory neuronと視床のspecificおよびnon-specific neuronがもつ、intrinsicなpropertyと考えられている。thalamo-cotical systemでgamma band oscillationの生成させる回路として以下の二つ"反響回路resonant loops"を提唱。

(1)Specific thalamo-cortical circuit:まず視床のspecific nucleiからlayer IVのGABAergic inhibitory interneuronへの投射。このinterneuronは40Hz帯域のintrinsicなmembrane oscillationをもっており、pyramidal neuronに40Hzのoscilltionを惹起させる。さらに、このpyramidal cellは視床のspescific nucleiとreticularis nucleiの樹状突起に再帰的にシナプス結合する。このような経路で、視床と皮質の間でresonantなoscillationが生じる。

(2)Non-Specific thalamo-cortical circuit:まず、視床のnon-specific intralaminar nucleiから皮質のlayer Iへ投射。さらに、layerIからlayer VおよびVIのpyramidal cellを介して直接あるいは間接的にnon-specific intralaminar nucleiに再帰的にシナプス結合し、40Hz帯域のoscillationを発生させる。

ちなみに、time resolutionに優れた聴覚刺激とgamma oscillationとの相関をMEGを使って調べた研究では、刺激間隔が12〜15ms以下になると、二つの刺激は単音として知覚され、最初の刺激だけがgamma responseを誘発する。また、12〜15ms以上の間隔を空けると複音として知覚され、それぞれの刺激に対応した異なるgamma responseが誘発される。つまり、gamma oscillationが聴覚刺激のsensory bindingあるいは知覚刺激のcoincidence detectionに関与していると考えられる。このようなgamma responseの生成に必要な数ms〜10数msのprecise timingは他の体性感覚や視覚でも確認されており、モダリティを超えた神経活動パタンのpropertyだと考えられる。さらに、ここではsensory bindingによる知覚シーンの形成が12〜15msというtime windowで不連続、あるいは階段状に進行することも示唆されている。

というような、内容。

この論文を読むと、意識が連続的(continuous)なのか、あるいは不連続(uncontinuous)なのかという議論があるけど、この結果は少なくとも神経活動の上では、意識がuncontinuousという見解を支持しているわけだ。
thalamo-cortical systemのResonant loopsは、Edelmanの言うRe-entrant loopsに相当するのだろう。このようなreccurentあるいはreentrantな回路が、比較的大規模の機能単位を構成する。それは、固定された解剖学的単位というよりも、それは常に揺らぐダイナミックな機能的構成単位である。thalamo-cortical systemの回路群は刺激の無い状況下でも内在的かつ自発的な活動が持続している(定常状態)ことが知られており、このような自発的な活動によって境界を自己決定しているかもしれない。
このresonant loopsのconnectivityは、脳損傷などのマクロな構造上のダメージや、昏睡状態における代謝能の低下でマクロに障害される(Laureys et al)。また、シナプスでの信号伝達機構の異常などによって、spatialなconnectivityがほぼintactであっても、いくつかの精神疾患で示唆されているようにtemporalなconnectivityが優位に障害されることもあり得る。ただし、temporal connectivityがシナプスレベルで内在的に障害されている場合には正常なsynchronous oscillationが生じず、結果的に回路形成のプロセスにも何らかの異常をきたす可能性が大きいと思われる。そういえば、cortical oscillationが経験による正常な神経回路の組織化に寄与しているという報告もあり(確かあったと思う)、この辺りはSchizophreniaの病理にも密接に関わっている可能性がある。


Symond MP, Harris AW, Gordon E, Williams LM."Gamma synchrony" in first-episode schizophrenia: a disorder of temporal connectivity?Am J Psychiatry. 2005 Mar;162(3):459-65.

RibaryのReviewでは脳損傷や、AD、LDなどの認知機能障害との関連も述べられているが、Schizophreniaなどの精神疾患との関連については触れられていなかった。この報告では、初発エピソードのSchizophrenic patientsで、Gamma synchronous oscillationのlatencyの延長が報告されており、Schizophreniaをdisorder of abnormal temporal connectivityと位置づけている。Schizophreniaにおけるsensory bindingの時間閾値の延長も示唆され、興味深い。


Clementz BA, Blumenfeld LD, Cobb S.The gamma band response may account for poor P50 suppression in schizophrenia. Neuroreport. 1997 Dec 22;8(18):3889-93.

Gamma responseの異常で、SchizophreniaのP50 supressionも説明され得るという話。

今日の音楽:V.A"The Big Chill Classics"(CD)
UKの老舗的なChill Out系のイベントのコンピレーション。いくつかの新鮮な発見があった。僕が思うに、Chill Outとは特定のスタイルではなく、あらゆる音楽にしばしば見いだされる「心地よさ」のabstractなproperty。その意味で、このコンピレーションでは"Chill度"が高いトラックがセレクトされていて、僕たちは安心して身を委ねることができる。

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2006年2月 1日 (水)

Wolf.Singer.Consciousness and the binding problem.Annasl New York Academy of Science

今晩は当直。雨のせいか、ネコの夜鳴きは聴こえない。

Wolf.Singer.Consciousness and the binding problem.Ann N Y Acad Sci. 2001 Apr;929:123-46.

Wolf Singerによる意識とbinding problemに関する総説。彼のこれまでの実験データを基にしているにはせよ、とてもspeculativeな内容。binding problemは、単なるニューロンの機能的な結合に関する問題ではなく、ニューロンによる情報のコーディングに関する問題なのだと思う。

結構、量の多いreviewだったので、細部は省略してメモ。

意識のある側面はawarenessとして現象学的に体験される。このawarenessも一次の感覚処理を担うプロセスと同様の機構によって遂行されていると考えられる。この意味で、explanetory gapは「脳はどのようにして認知的な機能を遂行するのか?」という問いに帰納的に置き換えることができるだろう。この問いに対する解答が、仮に感覚情報処理プロセスにおいて得られたならば、発見されたストラテジーはより多様で高次な認知プロセスにも当てはめることができるだろう、というのが問題設定とその前提。

以下、SIngerの論旨。

1.Phenomenal awareness emerged from iterations of cognitive operation.
phenomenal awarenessは一定の共通特性を有するcognitive operationの反復処理(イテレーション)によって創発される現象である

2.Such iteration is achieved in the cortical network.
これらの処理は皮質のネットワークにおいて行われる。下位のエリアが感覚入力を受ける際と同様のメカニズムが、下位から高次のエリアへの出力の際にも作動することにより、cognitive operationイテレーションが行われる。

3.Dynamic and self-organizing assciation of neuron into functional cell asssemblies.
cognitive operationが協同的で相互関係的な柔軟性を有するためには、個々のニューロンが独自にcontent-specificに反応するだけでは不十分で、分散したニューロンのdynamicかつself-organizingに連合し、機能的にコヒーレントなassembliesを形成する必要がある(binding)

4.Neural synchronization as a signature of the dyamic and self-organizing processes.
複数のニューロンをcell assembliesへと機能的にグループ化し、さらに機能的な関連性(relatedness)を有するために必要なbinding mechanismは、ニューロンの発火がミリセカンドレンジの精度で一定時間、同期することが必要であると考えられる。したがって、このような一定時間の同期現象は、空間的に分散されたニューロンが機能的にコヒーレントなassembliesを形成するのに必要なdynamicかつself-organizeingなプロセスの痕跡signature(指標と訳した方がよいかもしれない)とみなすことができる

5.Requirement of the activated brain states and modulation by attentional mechanisms.
このようにダイナミックに連合し、同期したassembliesが形成されるためには"desynchronized"EEG patternによって特徴づけられるようなアクティブなbrain stateが必要であり、これらはattentionによってモデュレートされる

これは、2001年のreviewだから、少し古い内容かもしれないが、決定的に重要な問題について述べられており、色々と考えさせられる内容。
考察は明日書こう。

ちなみに、今日Ablesの"Corticonics"が医局に届いていた。これは出版が1980年代で、かなり古いのだけど、今でもよく引用されているので、前から気になっていた。数式だらけで嫌な予感がするが、この本は避けて通ることができない本だ。

Singer W. Consciousness and the binding problem. Ann N Y Acad Sci. 2001 Apr;929:123-46.

Neural Synchrony | | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年1月 3日 (火)

メモ

今日でお正月も終わり。明日からまた怒濤の生活が始まる。

「脳の情報表現 ニューロン・ネットワーク・数理モデル」(朝倉書店)
難かしい。途中の数理モデルはほとんど理解できなかったが、Ad Aertsenによって書かれた最終章は興味深い内容だった。脳内のいかなる物理的現象が情報をコードしているのか?彼は情報はニューロンの発火のタイミングには存在せず、最終的にはニューロンの組み合わせにしか無いのだと述べる。ニューロンの活動の時間的パターンが興味深いのは観察者にとってであり、ニューロンそれ自体は前のニューロンのグループの活動を受けて発火しているだけにすぎないのである(そうなると同期は付随現象epiphenomenonでしかない可能性もある)。我々はこのようなプロセスを観察して同期検出(coincidence detect)していると言っているのだと。しかし、ニューロンの発火の中で同期した一斉射撃(Synchronous volley)に至ったものだけがニューロン空間で生き延びることができる。生き延びて次のグループのニューロンへ活動を伝播したものだけが、意味をもつことになる。
安易な解釈に陥りやすい僕にとっては何度も読む価値があった。

Neuenschwander S, Castelo-Branco M, Baron J, Singer W.Feed-forward synchronization: propagation of temporal patterns along the retinothalamocortical pathway.Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 2002 Dec 29;357(1428):1869-76.
神経活動のシグナルの時間的パターン(同期活動)がfeed-forward型にReina-LGN-Visual Cortexという経路で伝搬されるという話。しかし、このよう神経活動の時空間的パターンと情報のコーディングの問題はまだほとんど分かっていないという。

Lamme VA, Spekreijse H. Neuronal synchrony does not represent texture segregation.Nature. 1998 Nov 26;396(6709):362-6.
実はV1の神経活動の同期がfeature binding、特にtexture segragation(図と地の分離)を担っていないのだという話。このような情報処理プロセスはretinaのレベルで行われている可能性だってあるという。

以下、気になった引用文献をメモ。暇ができたら読もう。

Shadlen,M.N. & Movshon,J.A.Synchrony unbound: a critical evaluation of the temporal binding hypothesis. Neuron. 1999 Sep;24(1):67-77, 111-25.
同期というパターンが情報をencodeするのか?それとも、単なるepiphenomenonなのか?という議論があるらしい。

Singer W. Neuronal synchrony: a versatile code for the definition of relations?
Neuron. 1999 Sep;24(1):49-65, 111-25

Rickert J, Oliveira SC, Vaadia E, Aertsen A, Rotter S, Mehring C. Encoding of movement direction in different frequency ranges of motor cortical local field potentials.
J Neurosci. 2005 Sep 28;25(39):8815-24.

脳の情報表現では、神経回路網の複数の時間スケールにまたがったダイナミミクスが同時に走っている可能性がある。

Gewaltig MO, Diesmann M, Aertsen A.Propagation of cortical synfire activity: survival probability in single trials and stability in the mean.
Neural Netw. 2001 Jul-Sep;14(6-7):657-73.

今日の音楽:Sonic Youth"Schizophrenia"(From CD"Sister")
i-tunes music storeにてDL。昔はよく聴いていたSonic Youthだが、こんなタイトルをもった曲があったとは気づかなかった。でも、歌詞がよく聞き取れず、どんなことを歌っているのか分からないのが残念。

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2005年10月13日 (木)