2006年6月30日 (金)

Schizophrenia and Spontaneous activity関連

HBMでは色んな人と話ができたが、基本的にみんな自分でやってる。振り返ると、やっぱりショックだったというか、このままではいけないと思った。むこうにいたときはWorld cupにかき消されてしまった感はあるけど、下らない質問をもっとしておけばよかったと思う。

最近読んだ論文をメモ。Le Van Quyenなどの論文をちらほら。やっぱり、数学的なところが理解できない。以下は自発活動あるいはresting state関連。

Fox MD, Corbetta M, Snyder AZ, Vincent JL, Raichle ME.Spontaneous neuronal activity distinguishes human dorsal and ventral attention systems.roc Natl Acad Sci U S A. 2006 Jun 27;103(26):10046-51. Epub 2006 Jun 20.

最近f-MRIやPET studyで、ventral systemとdorsal systemという二つのattention systemが指摘されている。resting stateにおけるspontaneous BOLD fluctuationsのパタンは、task-dependent neuronal activityのパタンと類似しており、さらに上記の二つのattention systemがspontaneous activityでも確認されたという話。

Liang M, Zhou Y, Jiang T, Liu Z, Tian L, Liu H, Hao Y.Widespread functional disconnectivity in schizophrenia with resting-state functional magnetic resonance imaging.Neuroreport. 2006 Feb 6;17(2):209-13.

Schizophrenic patientsのresting stateにおけるf-MRI study。皮質、視床、小脳を116の領域に分割し、各領域の相関を計測したところ、脳の広域でfunctional disconnectivityが確認されたという話。

Sperling W, Martus P, Kober H, Bleich S, Kornhuber J.Spontaneous, slow and fast magnetoencephalographic activity in patients with schizophrenia.Schizophr Res. 2002 Dec 1;58(2-3):189-99.

Schizophrenic patientsのresting stateにおけるMEG study。low frequency band(2-6Hz)のdipole activityと精神症状のプロフィールが相関しているという話だが、あまり複雑なことは言っていなかった。

今日の音楽:DJ CAM"Birds also sing for Anamaria"(12inch)
7〜8年前に"Trip do Brazil"というコンピレーションに収録されたトラック。すばらしい。

最近、突然思い立って、ジャンべという太鼓を購入。コートジボアール製。手のひらでバシンと叩くと、「ドゥオン」という地響きのような音がする。多摩地区で初心者向けのワークショップをやってないかどうか。

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2006年5月31日 (水)

Dehaene S, Changeux JP.Ongoing spontaneous activity controls access to consciousness: a neuronal model for inattentional blindness. 2005

観たい映画が無くて、何気なく手に取った「Prison Break(脱獄)」というアメリカのTVシリーズにはまり、一挙に3巻まとめて観てしまった。「24」はseason 2までしか観ていないけど、雰囲気としてはこっちの方が好きだ。


今日も勉強の続き。脳の自発活動spontaneous activityについて、再びDehaeneとChangeuxの論文。フランス。

外部からの感覚刺激を欠いた状態でも、脳の神経回路網ではongoingな自発活動がみられる。これらの自発活動は必ずしもランダムなノイズではなく、一定の時空間的なパタンをそなえていることが確認されている。先日紹介したGolbergらの論文では、自発活動は単一状態の周辺を揺らいでいるというよりも、複数のintrinsic state(multiple attarctor)を次々と遷移するダイナミックなプロセスであるということが述べられていたし、Tsodyksらは視覚野V1における自発活動の空間的パタンと方位選択制マップなどのfunctional architectureとの相同性similarityを見いだした。

これらは、いずれもsingle or multiple unit recordingやvoltage dye sesitive imagingなどの神経生理学的な実験であったが、Dehaeneらはsimulation studyによってsubliminalに進行する自発活動が意識的なperceptionにとってもcrucialである可能性を示唆した。

Dehaeneらは、(A)神経細胞レベルの発火モデル、(B)Aがfeedback loopで連結されたthalamocortical columnモデルおよびこれらを120個並列的に連結したモデル、(C)Bが競合的、階層的に連結したlong-distance networkネットワークモデル(fig.1Dehaeneらの他の論文でもよく使われているモデル)を考案し、これらで様々にパラメータをいじくりながらsimulationを行った。

結果として、外的刺激を欠く状況であっても、モデルAにおいてsubthresholdなmembrane potential oscillationが出現することを確認、モデルBではhigh frequency(gamma band) oscillationが出現することを確認した。さらに、Bのcolumnを並列につなげたシステムや、モデルCのsimulationでは、特徴的な二つのstate transitionが生じるうることを確認した。一つめはthalamocoritical systemのlocalなsynchronous oscillationの出現であり、これはsensory processingのfacilitatingに寄与していると考えられている。二つ目は、lon-distance excitory connectionで連結されたシステムにおいて突如出現するnonlinearなstate transitionであり、EEG-likeなwaxing and waning synchronous oscillation(gamma band)が複数のエリアからなるサブセットで数百msec持続することを確認した。

色々とパラメータをいじった結果、ascending neuromodulation system(上行性賦活系)からの入力によって、state transitionの閾値が低下したり上昇したりすることなども示されている。他にも、自発活動のパタンからstate transitionに決定的な影響を及ぼす因子を同定している。

このようなsynchronous oscillationはthalamocortical systemのintrinsic oscillatorを取り除いた設定の下でも出現するため、synchronous oscillationがthalamocortical systemのconnection loopsに内在的にそなわるtemporal filtering propertiesによって生じている可能性も示唆される。

上記のように、自発的にあるいは外部刺激によってシステムにstate transitonが生じ、複数のエリアから成るサブセットでglobalなhigh-frequency oscillationが出現した状態では、競合するsimultaneousな刺激はglobalなstate transitionを引き起こすことができず、結果的に下位のエリアにlocalなeffectしか引き起こすことができない。このようなシステムの「遷移状態」は数百msec持続し、この間は"winner take all"方式で単一の状態が選択されるため、他の刺激はstate transitionを引き起こすことができない。Dehaeneらはこれを"ignited state"(ignite:発火、燃え上がる)と呼んでいる。

"inattentional blindness"とは、あるmental task(計算など)をせっせとこなしている最中は、irrelevantな刺激に対するconscious perceptionが生じないとい現象。心理学では古くから知られており、心理物理の実験が多数報告されている。しかし、知覚が意識には上らなくても、V1などの下位の知覚処理領域では刺激に対応する一定の活動パタンが出現することが知られている。このようなことから、biocular rivalryやchange blindnessと同じく、inattentional blindnessも意識の研究に適したパラダイムとされてきた。

Dehaeneらは,上記のモデルCの振る舞いがinattentional blindnessのsimulationモデルとして適しているのだと提唱している。さらに、DehaeneらはBaarsのglobal work spaceの考え方(僕はこの仮説が余り好きではないが)を引っ張ってきて、conscious access to perceptionが可能となるためには、このようなnon-linearなstate transitionが起きて、thalamocorical systemにglobalなhigh frequency oscillationが生じる必要があるのだと考えているようだ。また、long-distance synchronizationはtemporal codingを担っているのではなく、複数のエリアのreverberating interactionの「結果」であると考えている(Arbibも同じことを言っていた。「脳の情報表現」参照)

この論文はsimulation studyだけど、数学的な下りも含めてぎりぎり理解可能であった。

感想:僕たちはsimulation studyのモデルを現実の神経回路網と同一視すべきではないし、過剰な単純化はむしろ現実と大きく遊離している可能性だってある。これはsimulation studyをやる人たちがいつも言っていること。この意味では、simulation studyをVDS-imagingのような神経生理学的な実験と単純比較することはできないし、エビデンスとしては弱いかもしれない。しかし、実際の神経回路網で確認された回路網の特性をパラメーターとして取り込んだネットワークモデルが、simulationの結果、実際の脳と同じような振る舞いを示すという点が大事なのだろう。現在のimaging手段では、全ての神経活動をモニターすることは不可能であることから(恐ろしく巧妙な実験もあるけど)、むしろ脳の高次機能を考える上ではsimulation studyが極めて現実的な手段と考えられる。特に最近Schizophreniaは神経回路網のabnormal connectivityだとか言われているけど、僕たちはinvasiveな実験は絶対にできないから、このようなsimulation studyこそ威力を発揮するのではないかと考えられる。ちなみに、Dehaeneらはfirst person reportとsimulation studyをつなげるような実験もやっている(以前紹介したと思う)。

次、microstateなどについても調べてみよう。

Dehaene S, Changeux JP.Ongoing spontaneous activity controls access to consciousness: a neuronal model for inattentional blindness. PLoS Biol. 2005 May;3(5):e141. Epub 2005 Apr 12.

今日の本:アシュラ.K.ルグィン「ゲド戦記」
僕がSF好きだった頃、ルグィンは色々読んだけど、fantasy色の強いゲド戦記は回避していた。NKYM病院の先生にジョゼフ・キャンベルを教えてもらい、さらにとある信頼できる友人が、「ゲド戦記は光と闇の対決の話で、神話なんだよ」と言ってたことを思い出し、映画化される前に読むことにした。

今日の音楽:Bob Holroyd"A different space"(CD)
India〜Mid-Eastern系のambient、chill out。こういう作品を数多く出しているsix degreesから。どっぷり旅気分にさせてくれる。現地で毎朝聴いたアザーンやインドの宗教音楽はもっと凄まじいんだけど。中でも"Adrift in Kerala"というトラックは秀逸で、タイトルも何だか好き。

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2006年5月27日 (土)

もひとつ

脳の自発活動に関するこれまた勉強になる論文。

Grinvald A, Arieli A, Tsodyks M, Kenet T.Neuronal assemblies: single cortical neurons are obedient members of a huge orchestra.Biopolymers. 2003 Mar;68(3):422-36.

ネコの17、18野のスライスでvoltage sensitive dyeで自発活動のspatio-temporal patternとorientation mapとの相関関係を解析した実験のreview。1月14日に紹介した同じIsraelのグループによる論文を参照。

今日の音楽:Bruno Nicolai"Eugenie"
イタリアのサントラ"Marquis de Sade's"から。

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2006年5月23日 (火)

Goldberg JA, Rokni U, Sompolinsky H.Patterns of ongoing activity and the functional architecture of the primary visual cortex.Neuron. 2004

ドリアンが熟して、パカッと割れた。僕は、ドリアンを初めて食べるまでその悪臭に耐え難さを感じていたのに、一度口にしてからはまるで芳香のように感じられるから、不思議だ。こうなると、後戻りできない。

最近目を通した論文。

Goldberg JA, Rokni U, Sompolinsky H.Patterns of ongoing activity and the functional architecture of the primary visual cortex.Neuron. 2004 May 13;42(3):489-500.

刺激を与えた際に誘発されるevoked activity(刺激誘発活動)ではなく、ongoingなspontaneous activity(自発活動)のspatio-temporalな構造の解析に関する論文。Israelのヘブライ大学の研究者。
Synfire chainのAblesもそうだけど、Israelはこのような神経活動の数学的なモデル化に強いという印象を受ける。

evoked activityは刺激誘発時の神経活動の計測を何度も反復し、これを平均化することによって、reproducibleなパタンを得ることができる。一方、spontaneous activityは、in-vivoでの解析は困難であり、現在はin-vitroでvoltage-sensitive dyeを用いて、一回の計測(single image)から得られたデータを解析する。しかし、これらevoked activityとspontaneous activityのダイナミクスには一定の相関が確認されている。

それでは、spontaneous activityはどのようなspatio-temporal patternであるのか?

ここでは、spontaneous activityのnetwork modelとして、以下の二つを提唱。

Single state hypothesis: spontaneous activityは単一のbackground stateを中心として、Gaussian distribution(ガウス分布)をとりながら、ミリセカンドのオーダーで揺らいでいる(fluctuate)。

Multiple state hypothesis: spontaneous activityは、non-Gaussian distributionをとり、ミリセカンドよりも緩やかなオーダーで複数のintrinsic state(attactor state)を遷移(switch)する。さらに、それぞれのattractor stateは、evoked activityと類似しており、spontaneous activity自体はnoiseではなく、何らかの情報処理に関与している可能性が示唆される。

どちらのモデルが実際のspontaneous activityに近いのかという問いに対して、この論文では結論は出ていないのだけれども、spontaneous activityが多数のintrinsic state(内部状態)を次々と遷移しているのではないかという見解があるらしい(Ringach 2003 未読)。

こういう論文を感覚的に読むことは意味の無い行為なんだろうけど、悲しいかな、今の僕には数学的な部分はほとんど理解できず。

それでも、こういった論文を読むと、脳の神経活動にはnoiseなど存在しないという直感は現実味を帯びてくる。

ちなみに、SchizophreniaではP50などの事象関連電位は無数に報告されているが、このようなspontaneous activityを解析した研究は、ほとんど報告されていない。上記の実験方法の問題(invasive、in-vivoな実験が主なものとなるため)もあるからだろう。でも、evoked activityだけでは、Schizophreniaの氷山の一角しか見ていないような気がする。何かうまい方法は無いだろうか?

今日の音楽:Astor Piazzolla"box set CD"(10CDs)
いくつかの偶然が重なり、Piazzollaを思い出した。次にBorgesを思い出した。PiazzollaとBorgesのいたBuenos Airesには、僕もいつか行ってみたいのだけど、当分先のこととなるだろう。国立図書館の館長も務め、後に盲目となったBorgesは、まさしく"bibliophilia"であった。

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